第46話「キマイラ」⑦
まるで品定めでもしているかのように、上空を旋回しているアンカの群れ。どうやらこのまま黙って通してはくれないようです。
「ギェェェ!!」
なんて考えていると、一匹が奇声を上げながら足の鋭いかぎ爪を突き出し、ご主人様目掛けて急降下してきました!
「よく見ると、顔は醜いな!」
それを避けつつ、剣で斬りつけるご主人様。ですが深手とはならなかったようで、素早い身のこなしですかさずまた上空へと飛び立っていきました。
「くそっ!これじゃあ埒が明かん!」
ご主人様が剣を持って手強いと見るや、上空から急降下し、すぐに飛び立つという攻撃の繰り返しで、反撃する隙がありません。このアンカと言う怪物、醜悪な顔をしていますが、なかなか頭は回るようです。
それでも攻防の末、手練れのご主人様により数匹は斬り裂かれ地に落ちましたが、上空を飛ぶアンカの群れは減るどころか増える一方、諦める気はさらさら無いようです。
「ハァッ……くそっ」
流石のご主人様もアンカに翻弄され、体力を消耗しているようです。慌てて駆け寄り、水筒を差し出します。
「フゥッ……すまんなコーディス。なんにしてもこのままじゃなぁ」
「ご主人様、ここはバグラス城で頂いた食料やワインを囮にして逃げましょう!」
「ワインを捨てるだと!?そんな事出来る訳ないだろう!」
「しかしこのままでは……!」
「ダメだダメだ!」
なんて事でしょう!ご主人様の呑んだくれは自分の命よりもワインの方が大事なようです。そうこうしている間に空を埋めつくさんばかりのアンカが集まり、発せられる奇声は耳をつんざくばかりです。そして一斉に私達に向かって急降下、もはや逃げ場なんてありません。
「ご主人様の分からず屋ぁあ!」
咄嗟に身を伏せ頭を手で覆います。もうダメだと思った瞬間、どこからか声が聞こえてきました。その声は、まるで世に宣言するような、威厳と力強さに満ちていました。
「"私は、火を地上に投じるためにきたのだ。火がすでに燃えていたならと、私はどんなに願っていることか!"」
その瞬間、目の前はパッと明るくなり、アンカの奇声が耐え難い苦痛を受けたような叫び声へと変わっていったのを感じました。
「立てコーディス。どうやら天の助けが来たようだぞ」
ご主人様の声を聞き恐る恐る目を開けると、空から燃え盛るアンカが悲鳴を上げながら次々と落ちてくるという驚きの光景が飛び込んできました。そしてその中央には、黒衣に白十時のサーコートを着た1人の女性が立っており……と言うかあの方は……!
「危ない所だったわね。剣の腕は上々でも、怪物退治は私の方が一枚上手って事かしら」
「なっ……シャルロット様!」
まさかの方と、まさかの場所での再会となりました。
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