第13話 ショートストーリー 「祭りの後」

 眠い、とても眠い。会社のデスクに座っていても眠気が容赦なく襲ってくる。


「ふぁ~、ネム・・・」


 思わず軽くあくびをしてしまった。それを見た会社の先輩が、


「おう、川中くん、ずいぶん眠そうだな。どうした。徹夜でゲームでもやってたか?」


 などと、聞いてくる。


「いえ、すみません。昨日ちょっと『参議院選挙』見てたら、うっかり寝るのが遅くなってしまって・・・」


 そう、この眠さの原因は『参議院選挙』のせいだ。選挙後に気になって、所謂『選挙速報』をテレビで見ていたのだが、これがなかなかにして面白かったのだ。ついうっかり日付が変わってもテレビを見続けてしまった。


「ふ~ん、そうなんだ。若いのにそういうのに興味持つのってえらいな。おれ、政治とか全く興味ないから、昨日は見るテレビが無くて早く寝ちゃったよ。」


 などと言っている。まあ、それが日本の現状なのだろう。投票率も50%を切って国政選挙としては史上二番目の投票率の低さだそうだ。


 しかし、そのおかげで、今日は仕事に集中できない。月末のこの時期、結構な数の納品書が上がってきているため、各取引先への請求書作成に忙しいのに。


 そうそう、選挙特番、選挙期間中の各候補の活動報告などは、正直『ふ~ん』という感じだった。何が面白かったかというと、開票中に各番組が候補者や党幹部に様々な質問をするのに対し、それぞれの対応、言動や態度だ。もっとも、これが面白くなるかどうかは、質問する番組コメンテーターの質問力にかかっている。中には全然面白くない人もいれば、この人が政治家になればいいのにと思わせる人など、様々だった。


 しかし、番組を見ていて思ったのだが、なぜ、この内容の番組を投票前に報道しないのであろうか。確かに政見放送などもそれなりに面白くはあったのだが、それは事前に各政党が用意した内容を、収録のために事前に十分練習を行ったうえで作るものであり、一方的なメッセージのみで、特に外部からの質問も行われない。


 それに比べて、こういう速報番組でやるような、訂正ができないものこそ、その人の本音や人柄がはっきりと表れるので、より身近な問題として話を聞くことができる。正直、『事前にこのやり取りを見ていれば投票先が変わったかもしれない』とすら思った。


 そこで思うのは、せめて、次の国政選挙の際には選挙の前に、前回の選挙の際に収録したこれらのやり取りを基に番組を作成したり、編集して再放送したりできないものか。各候補者や政党が、前回言っていたことを実行できたのか、前言撤回して全然違うことをしていないか等のチェック機能も働きやすいと思う。番組制作側がそういう風に編集してくれればだが。一例では議員定数の削減はどうなったのか、とかね。今回増えてるし。


 ふ~あぁ~~、それにしても本当に眠い。


「ちょっと眠気覚ましに珈琲でも買ってきます。」


 そう言って俺は会社の外にある自動販売機へと向かった。そして今夜は早めに寝ようと心に誓った。


 今日のひとこと:選挙特番は選挙の前に放送してほしい内容ばかりだ。

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