第4話 闇に嘯くもの
これを始めてから、そろそろ一か月になるだろうか。私の力も当初に比べて格段に増してきた。作業自体の効率も随分と上がってきたし、この調子ならばもう一年も続ければ……あるいは人外に比する事も出来るのではないか。
そして、何れは神へ手を伸ばす事も。
「しかし。流石にこの辺りを狩場にするのは限界かな」
夜道を歩いていると、一台のパトカーが横を通り過ぎていった。時刻は20時になろうかという所。まだ問題は無い。しかし最近は随分と増えた。ここ一週間なんて外を出歩けば一台は出くわす。
まあ、今更あんな奴らに追われたところで消すのは容易いが、奴らを消したとなると事が大きくなってしまう。そうなると集まってくる者も、普通の人間ばかりではなくなるだろう。
こちらとしてはまだ目立ちたくはない。魔術師、ないしこういったモノへ精通した人間と出会うには、まだ力も知識も足りない事は自覚している。
せめて手駒をもう少し増やさなくては……それにはもっと、供物が必要だ。
「そろそろ、街を移さなくちゃいけないかな」
新しい狩場を見つけるまで、自分で供物を集めるのはしばらく自重しておこう。
しばらくは要所に落とし子を置いて、それで力を付ける事にして。
「……なんだ」
ふと向いの道路を見ると、この辺りでは見かけない大きな男が歩いていた。
街灯に照らされた顔を見る限り三十代前後といったところだろうか。
周囲を訝しむ様に歩く様は、どうにも一般人という雰囲気ではない。
「……」
私は一瞥してその場を離れ、そして道の角を曲がったところで転身する。
男はまだ視界に入る。何かを探しているのだろうか。歩みは遅く、視線はせわしなく動いている。
私の事を調べているのか?
ならば確かめなくてはならないだろう。脅威になるのであれば、排除しなくては。
彼の意識外を歩くよう心がけて後をつける。男は何かを見ながら、どこかを目指して歩いているようだ。
『どこか』とは。ああ。やはり。『私の狩場』のようだ。彼は私が獲物を狩った辺りで周囲を見渡し始めた。
一度なら偶然とも言えたが、その後に移動した先もやはり獲物を狩った周辺。
間違いない。アイツは私の事を嗅ぎまわっている。
……問題はあの男が『どの程度』の人間かだ。
詳しい程度の人間で、知識以外は一般人と変わらないのか。
知識も実力も兼ね備えた、こちらに精通した人間なのか。
或いは私の様な人間を排除する、戦闘に特化した人間なのか。
……まあ、友好的な存在という可能性も考えられるが……私には必要のないものだ。そんなものは目的のリスクを上げるだけ。目撃者には死を。勘繰る者にも死を。私の邪魔をする者は何であろうと許しはしない。
あの男も観察を終え次第、始末してやる。
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