第3話 落とし子
更に翌日。俺はリュックに松明の準備をして、再び夜の公園を訪れていた。
出かける間際にオカマたちからオカマを見なかったかと尋ねられたが、知った事ではない。そもそも顔など覚えていないのだ。
アレに知能があるかは怪しいが、失踪事件の犯人(人ではないが)だとしたら、その姿を目撃した俺を、放置はしないだろう。姿を隠す可能性もあったが、失踪事件の起きた場所、頻度を考えるに、同じ場所で遭遇出来る可能性の方が高い様に思えた。
昨夜の反応からして、奴は火もしくは熱に弱いのだろう事は想像がついた。追って来なかったのは、恐らく街灯の明かりもしくはその熱を避けての事だろう。最初は強力な懐中電灯を持とうと思ったが、あまりダメージを与えられる気はしなかった。熱と光、どちらも併せ持つ炎がより良いだろう。
アレをどうにかしなくては、今後も行方不明者が出続ける。
知ってしまった俺が、どうにかしなくては。
正義感?
いや、ただの恐怖だ。
脅威を取り除かなくては。
安寧が欲しい。
覚悟を決めて、火の点いていない松明と、愛用のジッポライターを取り出した。
植え込みを見詰める。
がさり。
小さく揺れる。
ライターで松明に火を点けた。
黒い塊が飛び出してくる。
カウンターを取る様に、松明を突き出した。
悲鳴が上がる。俺は何度も、何度も、松明を黒い不定形に押し付けた。
最初は触腕を伸ばし、噛み付き、抵抗してきたソレは、次第に動かなくなっていった。
「はあ……はあ……っ」
無我夢中だった。気付けば黒い塊は姿を消しており、俺は満身創痍だった。膝を付いた状態で辺りを見回す。
アレはもう存在しない。その筈だ。安寧が返って来る。
「は、はは……」
思わず笑い声が漏れた。やった。俺はやったのだ。やり遂げたのだ。
「……帰ろう」
呟いて、松明を消そうとした。瞬間、
「……?」
腰の辺りに灼熱を感じた。手に力が入らない。松明を握っていられず、手放してしまう。その手で灼熱に触れれば、何か硬い物がにょきりと生えていた。
手だけでなく、全身から力が抜ける。その場に倒れ込んだ。影が差す。見上げれば男が立っていた。顔は闇と街灯の逆光で分からない。
「余計な事を……嗅ぎ回って……貴重な落とし子を……また召喚しなければ……」
何やらぶつぶつと呟いている。
それを最後に、俺の意識は永遠に途絶えた。
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