第百四十七話 妨害行為?

  ドイルとドルベルのおかげで気分は最悪だった。

 しかし、 こうなると こちらも少し急がなければいけないかもしれない。

 目下の目標は森の鉱山から鉱石を手に入れることだろう。


 連中の妨害行為も日に日に露骨になっていっている気がする。


 とにかく一旦魔導ギルドに戻ることにした。


「あ、おかえりエドソンくん」

「ただいま。何か変わったことはあったかな?」

「依頼が一杯来てて大忙しだよ1」

「よし、平常通りだな」

「えぇえぇええぇえええ!?」


 アレクトが仰天していたが嬉しい悲鳴じゃないか。暇よりずっといい。最初に来た時は本当閑古鳥がないていたからな。


「あ、エドソンくんだ! あのね! 凄く忙しくてびっくりしちゃったんだけど、給金高いからそれも仕方ないかなって。それにおやつとか出るし美味しい紅茶も飲み放題だし環境は冒険者ギルドと段違いというか比較するのが失礼というか、ところで聞いてなかったんだけど肝心の給金はいつでるの? 催促じゃなくて家賃とかもあるからちゃんと知って」

「だぁああぁあああ! うるさい!」


 クイックがやってきて怒涛の勢いでしゃべくりだした。しかもいつもどおりの早口でだ。それと給金の支払日は契約書にしっかり書いてあるだろうに! しっかり読んでおくように伝える。


「あ~エドソンくんだ~え~とね~」


 今度はスロウがやってきた。相変わらず喋りのテンポが遅い。


「え~とね、ん、とね、えっと、あ、そうそう、えっと、あのね、だから~魔導具の~え~と」

「お前はもっとしゃきしゃき話せ!」

「え~~~~?」


 スロウは首をコテンっと倒して?顔だ。いや、もうだからなんでこの二人はこんなに両極端なんだよ!


「魔導具で二人を一時的に合体させてみれば丁度よくなるんだろうか」

「エドソンくんが何か怖いこと言ってる!」

「御主人様であれば可能かと思いますが、おすすめはしかねます」


 アレクトが焦った顔を見せた。一方でメイからは冷静な指摘をされる。


 勿論私とて本意ではない。基本的に私は生き物の肉体を直接弄る・・・・ような研究は好まないからな。


「エドソンさんおかえりなさい」


 ブラも顔を見せてくれた。何か少しホッと出来る。


「ただいま。しかし何かさんづけて呼ばれるだけで新鮮味を感じてしまうな」


 クイックもスロウもくん付けで子供扱いだしな。ブラとジャニスの派遣員ぐらいださん付けしてくれるのは。


「それで、スロウがいいたかったのは素材不足についてだと思います。魔石は何とかなってますけど、外注先で鉱石や繊維となる素材が圧倒的に不足しているみたいで……」


 ブラが眉を落として伝えてきた。そうか……


「その原因はやっぱり……」

「全て冒険者ギルド絡みみたいです。冒険者ギルドがこれまで手を付けてなかった素材にまで手を出しはじめて。しかも領主様のお済み付きでその殆どはドイル商会やその関係者に流れてるみたいです」


 本当に露骨だな。これまでも酷かったがそれに輪をかけて増長しだしている。


「それと、そのアレクトさんは忙しいと言ってますが、実は既にいくつかキャンセルが……」

「え! 嘘! そうなの!?」

「いや、何度も言うが今ここでの責任者はアレクト、お前なんだぞ?」


 凄く驚いているが、寧ろ何を見ていたんだお前は……


「キャンセルはどれぐらいなのですか?」


 メイが尋ねる。流石はメイ冷静だ。


「全体の二割ぐらいです。それでもまだ仕事量は多いですが……」

「だとしても二割減は大きいな。キャンセル理由は、なんとなくわかるが一応聞いておこうか」

「それが、はっきり言われる方は少なくて……ただ一部はドイル商会との取り引きを理由に上げてる方が……」


 やはりそうか。キャンセルした客はドイル商会か後は冒険者ギルド絡みか。目をつけられることを恐れたと考えるのが妥当だろう。


「あうぅ、仕事が減ったのはやっぱり困りますよねぇ?」

「へぇ。意外だな。逆に喜ぶかと思った」


 アレクトが焦っているから若干意地悪い返しを見せた。


「そんなこと! 確かにもう頭がハチャメチャになるぐらい忙しいですけどぉ、折角協力してくれた皆のためにも中途半端な真似は出来ません!」


 うん。いい答えだ。ここで仕事が減ったラッキーなんて考えるようじゃ先がない。そういう意味ではアレクトはちゃらんぽらんに見えて何が大事かはしっかり理解している。


「しかし御主人様。このままこれから更にキャンセルが相次ぐ可能性は否定できません」

「そうだな。だからこちらも急がないと。アレクト。私達はこのままベンツのいる鉱山に向かう。ここは大丈夫だな?」

「うぅ、大変ですが何とか頑張ります!」


 アレクトが張り切る。とりあえず任せて大丈夫そうか。冒険者ギルドもそこまで手荒な真似をするとは思えないが、ま、何かあったとしても大丈夫なようにはしてあるしな。


「じゃあ行くとしようか」

「はい、御主人様」

 

 そして私はメイと一緒に鉱山に向かった。出来ればそろそろ出荷できる状態まで出来上がってるといいんだが――






◇◆◇

sideドルベル


「それでどうだった?」

「あぁ、どうも奴ら、ドラムスについて色々と嗅ぎ回っているようだぜ」

「……やはりか」


 奴らはフレンズ商会や奴隷商のジャニスともつながりがあるようだしな。それに最近は商業ギルドもあの小僧に肩入れし始めている。


 しかし、あの孤児院に関してはドラムスだけの問題ではない。あれを手に入れることは厳命でもある。


 何故そこまであの孤児院に拘るかはわからないが、下手に邪魔されては面倒だ。手荒いことはあまりしたくはなかったがな。


「仕方ない。裏ギルドを動かせ」

「それはつまり?」

「……見せしめとして潰せ。ただしあの小僧とメイドは厄介だ。居ないときを狙え」

「承知しました」


 これで手はずは整った。幾ら奴らでも仲間に被害が出れば自分達がどれだけ愚かな真似をしているか思い知るだろうさ――

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