第百二十一話 蒸留用魔導具
「よし! 直ったぞ!」
「何、もうか!?」
蒸留用魔導具の修理が終わった。もっとも既に原型はないに近いがな。なのでナポレールを読んだのだが随分と驚かれたな。
「これが新しい蒸留用魔導具だ!」
「お、おぉ? うん?」
そして私がそう伝え披露するとナポレールが首を傾げた。
「おいおいこりゃ駄目だ失敗品だぜ。パイプがないし器もないじゃないか。それに妙な四角いのだけついてるし子どもの玩具じゃないんだぜ?」
「誰が子どもだ! そしてこれのどこが玩具だ! 全く。そもそもあんなパイプ必要ない。折角火の魔石が使えるのにあんなわけのわからんものつけてどうする。魔石は直接この箱にセットしてある。材料は見ろこの開口部から入れるのだ。出来上がった酒はこっちのスイッチを押せば蛇口から出てくる。実に合理的だ」
「は? いやいや、こんな小さな箱に材料も入って酒が出てくると言われてもなぁ」
ナポレールが困った顔で頭を擦った。はぁ、仕方ない論より証拠というしな。
「これは見た目よりずっと容量が大きいから問題ない。とにかくやってみせよう。先ず材料だが、これか?」
「そうだが気をつけてくれよ。コーン麦で作ったエールは扱いが難しいんだ」
「ならメイに任せよう」
「お任せください」
メイドロイドのメイは技術面でも相当に優秀だ。酒造りも完璧にこなせる。
「お、おお、あんたすげーな。それに手付きもエロい」
「恐れ入ります」
「いや、恐れ入りますじゃないだろう……」
エロいってこの男も何を考えているんだよ。
「入れました」
「うむ。よく見ておけよ。先ずこのパネルに触れる。すると見ろ入れた材料から大体どれぐらいの量の酒が出来るかと現在のアルコール度数が表示される。そしてこの部分で温度調整も可能だ作動してからどれぐらい時間が過ぎたかもわかるし、タイマーのセットも可能だ」
「は?」
私がそう説明するとナポレールが目を白黒させた。何だ? 何か不満なのか?
「問題でもあったか?」
「いやいや! 問題どころか、意味がわからねぇよ。何だよそれ? は? 温度がわかるアルコール度数がわかる?」
「そうだ。温度は細かい調整も可能だぞ。ここに触れれば0.001単位で調整可能だ。完全自動だと職人の感覚がいかせないだろうからな。勿論冷やすこともこれ一つで可能だ。それとこっちは熟成用のパネルだこれでどれぐらい熟成させるかも設定出来る。どうだ? これですぐに酒が出来るだろう?」
「………………」
あれ? 何か黙ってしまったな。むぅ。とにかく一つ作って見るか。
「メイ一つ作ってみてくれるか?」
「承知しました」
そしてメイが蒸留用魔導具を使って手早く酒を作ってくれた。
「出来ました。ナポレール様どうぞお試しを」
「も、もう出来たのか!?」
ナポレールは随分と驚いていた。まぁ確かに普通はそれ相応の時間がかかるからな。
「ふ、ふん。なるほど確かに見た目はそれっぽいな。だがな、こういうものは早ければいいってもんじゃないんだよ。時間を掛けるにはそれだけの理由が、うおおぉおおおお! なんじゃこりゃぁああぁあ! うっめええぇえええぇええええ!」
ブツブツ言いながらも酒に口をつけたナポレールだったが、一口含んだ瞬間に叫び声を上げてひっくり返ってしまった。
「そんなに旨いのか?」
問いかけるがナポレールは恍惚とした表情を浮かべっぱなしだ。
「わ、私も一口いいでしょうか?」
「あ、う、の、のんでみろ、やっべぇぞ」
「で、では――む、むぅこれは! う、旨いぞぉおぉおおおおぉおおおお!」
フレンズも許可をもらってから口にし叫んだ。何故か今巨大化したような? 気のせいか?
「満足してくれたか?」
「くっ、て、てめぇ!」
試飲が終わったところでナポレールに聞いてみる。ちなみに私は酒は呑まないから味はわからない。別に味覚がお子様とかではないぞ! 魔導具の作成に支障をきたすから呑まんのだ!
しかし、何かキッ、と険しい顔を見せてるな。な、何か不満でもあったのか?
「あ、ありがとうよおおおおおお! お前はすげー子どもだぁあああ! さっきは馬鹿にして悪かったーーーー!」
と心配していたが杞憂だったようだ。何か抱きつかれてやたらと感謝された。それはいいのだが、結局子供扱いは変わらないのか……
「それで酒は購入出来るか?」
「購入? ばかいえ。こんなすげーもの作って貰ったんだ。出来た酒は好きなだけやるよ。よしそうと決まれば早速作ってやる! 待っててくれ!」
そして私達は酒の完成をまった。と言っても新しい魔導具のおかげでそれほど待たずに出来たがな。
「目的の物が手に入ってよかったですね。でも、私も頂いてよかったのですか?」
「問題ないだろう。あの男も喜んでいたし私は必要な分は確保したからな」
旨い酒が手に入ってフレンズも随分と嬉しそうにしているな。
「しかし、このお酒があれば宝石の件は何とかなるものなのですか?」
「まぁ任せておけ。大船に乗ったつもりでな」
「……なるほど。そこまで言われるからにはいい手があるのですね。わかりました。では私は自分に出来ることを、そうですねデニーロ男爵と取り引きが始まった時のための草案を作っておきましょう」
「それは助かる」
そして私達は宿に戻った。フレンズは早速作業に入ってくれたみたいだ。
そして私はというと。
「よし、
「はい御主人様。ですが、やはりお酒を手にれた理由はこれだったのですね」
「うむ、今後のこともあるからな。さて会いに行くかベンツとロールスに――」
◇◆◇
sideデニーロ
全くあのエドソンという小僧。よりによってこの私に向かって、秘蔵のコレクションより良い装飾具を見せるなど、ふん。生意気な奴め。
大体、この町にいる宝石職人の腕は超一流なのだ。それ以上のものなど……だが、それがもし本当なら、見てみたいものだが、ありえん絶対にな。
「デニーロ様少し宜しいでしょうか?」
「うん? 何だタコーズか何かあったか?」
タコーズはうちに仕えてくれている優秀な執事だ。しかし、妙に真剣な顔だな。
「実は鉱山で少々問題が」
「問題?」
「はい。理由は不明ですが鉱山内部の温度がかなり上昇していまして、働いている鉱夫も相当参っているそうなのです」
「温度が急上昇だと……ふむ、水はシッカリ取らせているか?」
「はい。ただその影響かはわかりませんが確保できる水量も減ってきておりまして」
「そうか。ならばうちの井戸から水を汲み鉱夫に分けてやれ。それでも厳しいようなら人数を調整し無理のない範囲で作業させるのだ」
「宜しいのですか? それをしてしまうと屋敷で使える水の量が減りますし、採掘量も減少しますが?」
「問題ない。屋敷のことは私達が我慢すればいいことだ。それにここで無理して命に危険があっては大変だ。人の命より重たいものはないのだからな」
私がそう話すと承知いたしましたとタコーズが早速動いてくれた。しかし、鉱山の温度か……気になるところだ。冒険者に調査依頼を出しておくか……
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