第16話

ステーキ屋の前につくと肉を焼くいい匂いがしてきた。


なるべく隣の席と離れたところを見つけて、僕達は一息着いた。


「まずはビール頼もう。彩乃はジュースだな。」


「私はジンジャーエールお願いします。」


僕達はそれぞれオーダーしてから料理が来るまで、小声で話しはじめた。


「武瑠はいつごろその透視能力に気づいたんだ?」

 

「ものごころついた時から気づいていました。最初は誰でも見えてると思ってました。でも日常生活の中で、俺だけが見えてるいることに気づき便利に使ったり、めんどくさかっりでしたよ。」


「どんな風に使ったんですか?」と彩乃が尋ねた。


「例えば母親が出かける前に、財布がないと大騒ぎすると

見つけたらお小遣いちょうだいといい、探すふりして実はベッドと壁の間に落ちてるのは先に知ってたり。


まあ小学生のころはそんなかわいいお小遣い稼ぎでした。


中学生の時はたち悪いやつがいて、ズボンのポケットにナイフ忍び込ませていて、その頃自転車通学していたクラスメイトの自転車のタイヤがのきなみ切られていたので、やつが犯人とわかり。」


「先生にいうと何故わかったんだとか、なにかとめんどくさいな。

僕も知らないふりするのに演技するのめんどくさかった。」


「そうなんです。それで理科の実験の時間に強力な磁石持ち込んで先生が来たら彼のズボン近くに磁石近づけて、ポケットから落としてやりました。先生が気づいてあとからこっぴどく叱られてましたよ。」


「なるほどな。ところでサムリーにはなんと声かけられたんだ?」


「実はなんか人と違うのに疲れてきて、見えすぎると見たくないものも見ることもあるし、人間不信にもなるので、明治神宮にこの能力はいりませんのでお返ししますと祈ろうとでかけたんです。そして参拝前に手を清めていた時に、サムリーから声かけられました。君の仲間が待っていると。」


「なるほどな。それぞれ能力は違っても悩みを打ち明けられずにいたのは同じだな。

まわりを見てみろよ。家族で平和な会話しておいしそうに肉食ってるぜ。自分達もこないだまではあの家族と似たり寄っただったものな。」


3人が見たのは両親と小学生4年位の男の子とその妹だった。 


するとステーキをおいしそうに食べていた男の子のほうが僕達を見てにこやかに笑った。


そんな気がしたが、僕達のテーブルにも料理が運ばれてきたので、肉にかぶりついた。


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