第76話 黒いマントの男
黒いマントの敵は内心焦っていた。
人間相手なら負けない自信はあるがオーガだと話しは別だ。
低級、中級クラスの魔物なら余裕だがオーガはドラゴンの次に強い上級クラスの魔物、それでも拳銃で撃たれればそれなりに致命傷を与えられるだろと思い迷わず撃った。
オーガは撃たれた胸を手で押え俯いた。
「オーガ!!大丈夫!?」
真矢はオーガに問いかけた。
オーガの様子を見た黒いマントは初めて口を開いた。
「オーガだろうがなんだろうが銃で撃たれれば終わりなんだよ!」
黒いマントは笑いながら言った。
真矢が心配そうにオーガを見ていた。ようやくオーガが動き出す。
「……びっくりした!物凄く早い虫が我の胸に飛び込んできた」
胸を押さえていた手には銃弾があり、命中した箇所は一滴の血も出ず、銃弾の先端が潰れていた。
真矢はその光景を見てクスッと笑ってしまった。
黒いマントは唖然としている。
「嘘だ……拳銃だぞ!最強の飛び道具だぞ!」
黒いマントは拳銃の効かなかった事に焦り始めた。
「良い物を見せてもらった!では今度はこちらから行くぞ!」
オーガはファイティングポーズをとり深呼吸をし精神を集中し始めた。
やばいと感じた黒いマントは担いでいたフェンリルを地面に放り投げオーガから逃げた。
真矢は追おうと走り出そうとした時横にいたオーガがいなかった。
黒いマントの方を見るとオーガは黒いマントの正面に立っていた。
桜のスキル迅速程ではないがかなりの速さで移動した。
そしてオーガは速いパンチと蹴りの連打を繰り出す。
慌てて剣をだしオーガの攻撃を剣で受ける黒いマント。
「いつまでそんな剣で受けていられるかな?」
オーガの攻撃のスピードがどんどん上がってきている。
だが全て受けきる黒いマントはやはりこの程度の攻撃では倒すことは出来ない。
真矢は黒いマントの背後からレイピアで攻撃を仕掛けた。
だがそれにも反応し剣でレイピアを弾く。
黒いマントは少しオーガから離れる。
「なんなんだよてめぇらは!邪魔すんな!」
今まで黒いマントで姿や顔が見えなかったがそのマントを取り自分の姿を晒した。
そこには20代後半くらいの男が立っていた。
「あんたは私の仲間を傷つけた!絶対許さない!」
真矢は叫んだ。
「俺の邪魔をするそいつが悪いんだよ!だまって狼野郎を渡してれば何もしなかったのにな」
やれやれと言った言動の黒いマントの男に真矢は怒りを込めた魔法を放つ。
「あんたも同じ苦しみを知りなさい!炎魔法ファイアディザスター!」
敵の周りに複数の炎の刃が出現し目標に向かって行った。
「そんな魔法で俺が倒せるかよ!」
炎の刃を全て剣で受け切った。
だがファイアディザスターに気を取られていたのか後ろにいたオーガがその隙をつき背後にまわりこんだ。
「我を忘れるでない!」
腰の入った重いパンチが黒いマントの男の背中を直撃した。
かと思ったが瞬時に身体を回転させお腹でオーガのパンチを受け、男は吹っ飛ばされた。
「ぐふ、くそ、なんてパンチだよ……さすがにこの軽装じゃ勝てねーかもな」
男は立ち上がり魔法の詠唱を始めた。
「我の願いを聞き入れろ、ヒール」
男は回復魔法ヒールで自分の身体を回復させた。
その魔法に真矢は少し疑問に思った。
「ねぇ、なによその魔法!この世界にそんな回復魔法なんてないはず!」
この世界に存在する回復魔法の種類は真矢のやっていたゲームと同じ3種類しかない。
リカバー、リカバリー、フルリカバリー。
だが黒いマントの男が使ったのは変わった詠唱からのヒールと言う魔法だった。
「はあ?回復魔法つったら普通ヒールだろうが!」
真矢は葉留の言っていた別世界の異世界人と言う話を思い出した。
そして直接聞いた。
「あんたもしかして……異世界から来たの?」
その言葉に黒いマントの男の氷上は曇った。
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