第70話 矛と盾の対決
葉留は泣きながら桜を抱きしめた。
「桜、ごめん、ごめん……守ってやれなくてごめん」
何度も何度も葉留は謝った。謝っても戻って来ないのは分かっているがどうすればいいか分からない。
代われるなら代わってやりたい。色んな想いが頭の中を駆け巡る。
葉留は桜を地面に寝かせようと思い優しく抱き抱え仰向けにして寝かせた。
すると一瞬だが微かに右手の人さが動いた事に気がついた。
桜はまだ死んでない!と確信し今何か出来ないかを必死で考えた。
「待てよ、もしかしたら……」
葉留は薬を取り出した。これは葉留が現在使っているドーピング薬だが破壊衝動が抑えられなくなるデメリットがある。
葉留はここ連日使用しているためこの薬はもう1つしかない。
これは身体能力を限界まで引き上げる効果がある。これを桜に飲ませれば生き返り、カタルシアまでの時間を稼げるのではないかと考えた。
「もう他に桜を助けられる方法がない、頼む桜!生き返ってくれ!」
手持ちに水がない為仕方なく降っている雨を手の中に溜め、薬と雨水を自分の口に含み桜に口移しで飲ませた。
初めてのキスだったがこんな時に恥ずかしいとかの感情はなくただただ必死だった。
桜は無意識に雨水と薬を飲み込んだ。
そしてみるみるうちに桜の身体の半分が黒く染まっていく。
葉留は心の中で何度も目を開けてくれと願った。
すると桜は目を開いた。そして身体を起こした。
「桜!良かった、目を覚ましてくれて」
だが桜は何も言わず立ち上がり短刀を抜いた。
これは完全に薬のデメリット破壊衝動に侵されている。
葉留はこうなる事は覚悟のうえだった。
「やっぱりこうなるよな……大丈夫!俺がなんとかしてやるからな桜!」
葉留も剣を抜いた。
ダーク葉留対ダーク桜の戦いが始まる。
だが決して平等な戦いではない。
桜は薬の力でなんとか死を回避してるに過ぎない。
薬の効果が切れる前に桜を何とかし、お互いダークの状態でカタルシアに到着しないといけないのである。
桜は攻撃に特化しているアサシン。
葉留は防御に特化している戦士。
まさに矛と盾の対決である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます