第63話 黒いマントの敵

この世界には銃という圧倒的な殺傷能力のある武器は存在しない。


弓矢が一般的で金属類はほとんどが剣や槍、鎧に使われている。


これは葉留や真矢、桜がプレイしていたゲーム、ルーンオブアリスにも存在しない。


そんな聞いた事のない村人達は怯えた。


「な、なんだ今の音は!すごい音がしたぞ……」


村人が怯える中桜はすぐ銃声だと気づいた。前の世界では銃の音は小学生でもわかる。


そしてその音は森の方角、桜は森に向かい走り出した。悪い予感が当たらなければ良いと信じ。


銃を撃った者は黒いマントで全身を覆いまるで誰にも姿を見せないようにしているかのようだった。


その者は銃弾で撃ち抜かれたフェンリルに近づき片手で持ち上げ肩に乗せた。


「仕事完了」


そう言いゆっくり歩き出した。


そこに桜が追いついた。


「お前……!何してる!」


一目見ただけで状況を理解したすぐさま戦闘態勢に入った。


「冒険者……君では私には勝てない、逃げた方が懸命だぞ」


「だまれ!あんたこそリルを置いて逃げた方がいいんじゃない?」


桜は怒りの表情で言った。


「口で言ってわからないならかかってこい」


桜は言葉通り一気に決める気でいた。


「スキル、インビジブル!迅速!」


桜の必殺技が繰り出された。スキル、インビジブルキリング。


敵のほぼ全ての方向から飛ぶ斬撃が襲ってくる桜のオリジナル技である。


だが黒いマントの敵は来る方向が分かるかのようにその場で身体を傾けるだけで桜の攻撃を回避した。


1歩も動かず回避した事に驚き、動きの止まった桜に躊躇なく拳銃を桜に向けて撃った。


銃弾は腹部に当たった。それ以上黒いマントの敵は撃たずフェンリルを抱えたままどこかに行ってしまった。


桜は膝から崩れ落ち、そのまま前に倒れた。意識が朦朧とする中抱えられたフェンリルに言った。


「ごめんね……リル……ご、ごめん……ね」


桜は意識を失った。

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