第62話 共存
「ん。ふああ……あ、私フェンリルのフカフカな毛に癒されて寝ちゃったのか」
桜は目を覚ましたと同時にフェンリルも目を覚ました。
「ゆっくり寝れたか?」
「うん!バッチリ快眠だよ!」
「そうか、では俺は森に帰る」
桜は疑問に思った。
「なんで?フェオラル村でまた暮らせばいいじゃん」
「お前昨日の話を聞いてなかったのか!俺達は今や村の住民に嫌われているんだぞ!今更帰れるか!」
フェンリルが怒った口調で言った。
「だって君達は村の長を殺してないんでしょ?」
「ああ、たぶんあれは偽装工作だろう……殺ったのはたぶん科学者のいた国だろう」
「じゃあ私からも言ってあげるから一緒に村に行こ!」
「くっ、どうなっても知らんぞ!」
フェンリルは不安しかなかったが桜は楽しそうだった。
桜とフェンリルは村に向かった。
桜が村人に声をかける。
「依頼終わったよ!」
村人は桜の言葉にホッとしたがよく見ると桜の後ろに魔物がいる事に気づき腰を抜かした。
「ぼ、冒険者様!後ろに魔物が!」
「大丈夫だよ!何もしないから--あのさ、ここの村長に合わせてほしいんだけど、居る?」
村人は怯えながら村長のいる家を指さした。
「なるほど!ありがとう、行くよリル!」
フェンリルは疑問に思ったので聞いてみた。
「ちょっと待て!リルってなんだ?」
「フェンリルって名前長いんだもん!リルって可愛いじゃん!」
桜はドヤ顔で答えた。桜の性格について行くのは疲れるとフェンリルは思った。
少し歩き村長の家に着いた。桜はドアを開けた。
「すみません、昨日依頼を受けた桜です」
桜はなるべく丁寧に挨拶をした。
「おお!よく来てくれた!魔物は倒してくれましたか?」
村長がそう言うと桜が。
「倒してません!逆に仲良くなりました」
またもやドヤ顔をする桜に魔物を倒してほしいと依頼したのにどうして仲良くなったのか疑問に思った。だがその疑問はすぐに判明した。
桜の後ろに魔物の姿があった。村長は一目でフェンリルだとわかった。
「そこにいるのはフェンリルか?」
フェンリルは桜の後ろから顔を出した。
「おお!やはりか!懐かしいな……魔物とはお前達だったか」
桜は不思議そうに聞いた。
「フェンリルを嫌ってるんじゃないの?」
「先代の村長が殺されたのはフェンリルの仕業だとみんなは思った--だがやはり有り得ない、今まで仲良く暮らしてきた友が友人を殺すなど……これは国に仕業だと村の皆は考え、もう1度フェンリル達に帰ってきて欲しいと散々森を探したのだが見つからなかった」
「良かったじゃんリル!村の人達は嫌ってなかったんだよ!」
桜が笑顔で言った。
「そうだったのか」
フェンリルは俯いた。
「そしてフェンリルと共存していた事を知っているのは私だけになってしまった--私は今の村人には共存していた事を話していないのだ、恐がられるかもしれないからな」
村長はフェンリルに提案をした。
それはフェンリル達ともう1度共存したいとの事。
フェンリルは悩んだが村長が言うのならもう1度共存したいと思った。そうすればフェンリル達の食糧危機がなくなるためである。
村長は涙を流し喜んだ。
さっそく村人を集めフェンリル達との昔話を交えた共存の提案を話した。
中には怖いと言うものもいたが村長の話を聞き興味が湧いてきた者がとても多かった。
それを横で聴いてたリルは表情には出さなかったがとても嬉しかった。
「よかったねリル」
リルの耳元で小さい声で言った。
村長はリルに仲間達を連れて来てほしいと言った。
リルは頷き桜に感謝の言葉を言う。
「ありがとう桜、全部お前のおかげだ!これでまた俺達は村の人と共存の道を歩める--ほんとにありがとう」
「それほどでも……あるかな?」
桜は笑いながら言った。
それにつられてリルも笑った。
リルは村人達にも感謝をし森にいる仲間の元へ向かった。
「ほんとうにありがとう冒険者様!」
村長も桜に感謝をした。
桜は嬉しかった。こんなに誰かに感謝をされた事がないからである。
依頼を受けてほんとに良かったと思った。
その時……。
「パーン」
と森の方角から1発の銃声が響いた。
桜は嫌な予感がした。
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