第59話 桜とフェンリル

辺りがだんだん薄暗くなってきた頃フェオラル村の近くの森から何匹もの足音がこちらに向かって来るのが聞こえる。


「やっと来た!村人に被害が出ないよう村の外で戦闘した方がいいよね」


桜は村の外に出て魔物が来るのを待った。


足音がだんだん近づいてくる。


魔物達は人の気配に気づき足を止めた。


桜はその魔物を目視で確認できた。


魔物の名前はフェンリル。群れで行動する生き物でクマ程の体格がある狼のような形をしている。


「フェンリルか、私って狼系と戦うの多すぎない?まあいいけど」


桜は笑みを浮かべながら愚痴をこぼした。


フェンリルが動くのを待つ桜、するとなんとフェンリルの1匹が話し始めたのである。


「おい子供!我らの邪魔をするなら容赦はしないぞ!それでもいいのか?」


話すフェンリルを見て桜は唖然とした。


「え、ええ!魔物って人の言葉を話せるの?」


「それくらい普通だろ!まあ理由はあるがお前に話す筋合いなどない!」


そしてフェンリルが一斉に襲ってきた。


「その理由すごく聞きたいかも!」


桜はニヤリと笑い言った。


フェンリルは鋭い爪と牙で攻撃してきた。


だが桜はスキル迅速で何匹ものフェンリルの攻撃を避ける。


そして見えない速さでフェンリルの背後に周りスキル真空斬波で次々とフェンリルを倒していく。


桜に圧倒されるフェンリル達に話せるフェンリルが実力を解放する。


「子供のくせに中々やるな!ならお前のスピード超えてやろう!」


話すフェンリルの目が青色から赤色に変わった。そしてフェンリルの姿がきえた。


桜はフェンリルを見失い辺りを見回すと背後から爪で攻撃を受けた。


「いった!……この世界に来て初めて思いっきり攻撃された……血、出てる」


桜の背中から血が流れ出した。


背中に手を回し自分の血を確認する。


「ああ、これが私の血か、んふふふ……やっぱ戦闘楽しい」


不敵に笑いながら自分の血が着いた手を見つめる桜。


「まだ戦闘するなら次は殺す!死にたくなかったら失せろ!」


フェンリルが警告をする。


「なんで?こんな楽しいのに逃げるわけないじゃん!もっと殺ろうよ!」


不敵な笑みでフェンリルを見つめる桜。


「なら後悔するなよ」


またフェンリルは消えるように移動し桜の背後に現れた。


「2度も同じ手にはのらないし!スキルインビジブル」


インビジブルにより桜は姿を消しフェンリルの攻撃は空振りした。


フェンリルの周りから斬撃が飛んできた。


たがフェンリルは超スピードで回避する。


飛ぶ斬撃ばかり気にしていたため桜本人の警戒を怠ったってしまった時フェンリルの背中が刃物で切られた。


それは桜の武器の短刀だった。


「あれ?私を殺すんじゃなかったのかな?」


スキルの効果が切れ桜が姿を表した。


「おのれ卑怯者め!」


桜はもう1度スキル迅速を使う。


両者が構え、そして周りには見えない動きで攻撃が繰り広げられた。


剣と爪が当たる音を最後にお互いに距離を離した。


「なぜそこまでする?村人に頼まれたのか?」


「はあはあ、そうだよ!だからここは通さない!そして2度と村に来ないよう私がお前達魔物を倒す!」


息が切れているが桜はまだまだ動ける。そう悟ったフェンリルは降参をしてきた。


「分かったよ、この村には手を出さない……だから俺達を殺すのはやめてほしい」


「ま、まあそこまで言うなら見逃して上げてもいいよ?」


桜は強がりながら言った。


「後、すまんがお前はあの村について何か聞いているか?」


「詳しくは何も聞いてないけど……この村何かあるの?見逃してあげる代わりに言いなさい!」


桜は短刀の先をフェンリルに向けた。


「分かった、話そう……この村の事を」

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