第2章 ルーンとアリス
第56話 アリスの願い
「ん……んん、ここはどこだ?」
葉留は夢を見ている。
「確か俺真矢に会えて、嬉しくて……寝ちゃったんだっけ?」
夢なのは理解しているがここまではっきりとした意識を持ちながら夢を見るのは初めての体験で多少戸惑っている。
「というかここ真っ暗で何も見えない--ほんとに夢なのか?」
すると葉留の前に突如として少女が現れた。
「うわ!びっくりした!女の子?」
葉留のびっくりした事に少女の口元が緩み笑いそうになる。
「ふふ、笑わせないで」
「いや、笑わせる気は無かったんだけど……君は誰?」
「私の名前はアリス!ルーンを司る者!」
アリスはドヤ顔で答えた。
「へ、へえ……そうなんだ」
そしてアリスから衝撃の事実を告げられる。
「葉留!あなたとその仲間をこの世界に呼んだのは私よ!」
「君が呼んだの!!なんで!?」
「なんででしょうか?」
アリスはにやにやしながら質問を返した。
(なんだろう、すげえむかつく)
「まあ冗談はさておき!私はあなたと真矢のゲーム時代を知ってるの--そこでは毎日楽しそうに、時には話し合いが決裂して喧嘩したり、攻略するために頑張ってる姿を見て私は葉留と真矢が良いなって思ったの!」
「そうなんだ……桜も良いと思って呼んだの?」
アリスは首を横に振った。
「あの子ゲームの時のあだ名知ってる?バーサーカーアサシンだよ?なんか面白そうだしこっちでも活躍してくれるんじゃないかなって思って呼んだの!」
「ただの色物枠だったのかよ!桜、可哀想に」
葉留はアリスに呼んだ理由を聞いた。
「この世界に葉留、真矢、桜以外に異世界人がいる!何人なのか分からないけどその人達はどこかの国により異世界召喚された可能性が高いの!」
「その人達がなにかやばいの?」
葉留は疑問に思った。
「あなた達と違うのはその異世界人はあなたの世界とは異なる世界だと言うこと!言わばパラレルワールドって所ね」
「なんかそれ聞いたことあるけど、それと俺達が呼ばれた事がよく分かんないんだけど」
「ずばり言うとその異世界人はこの世界を乗っ取ろうとしているの!理由は分からない」
「なんでそんな事が分かるんだ?」
「私は異世界人がこの世界に侵入した時その異世界人の未来が少し見えるの!でも私が呼んだわけじゃないからその異世界人にコンタクトはとれないしどこにいるかも分からない--だからあなた達を呼んで……この世界の人々を救って欲しいの!みんなが笑って楽しく生きていく未来を私は見ていたいの!だからお願い!」
アリスは葉留に深々と頭を下げお願いした。
葉留は自分勝手なアリスに少し怒りを覚えたが一言言った。
「……なら俺達がその異世界人の野望を止めたら元の世界に必ず戻すって約束してくれ」
「もちろん約束する!」
アリスは頭を上げ言った。葉留はこの言葉に少しほっとした。
よく異世界から帰れない、何をしたら戻れるか分からないようなアニメや漫画をたくさん見てきたためそこが不安だった。だがそれと同時に戻るにはかなり難解なクエストをアリスから受けた気がした。
「この世界に来てからずっと3人を見てきた!どう動くのか、どういう性格なのか、私の希望になれる存在か!まあチュートリアルみたいなもんだね」
真剣な話に水をさすような冗談に葉留は1度アリスを殴ろうかと本気で思った。アリスは話を続ける。
「これからの旅はもっと大変になる、だけどあなた達に武器よりも強い物がある!それは……この世界を熟知してる事だ!分かるかな?」
「俺達はこの世界をずっとプレイしてきた!多少違う所もあるかもしれないけど、どこに何があるのか位は分かってるって事か!」
葉留はアリスの言う事を何となく理解した。
「ご名答!どかのどんな武器や防具があるか位分かるよね?ボスのドロップアイテムだってゲームとほぼ変わらないよ!」
「そうか!今まで色んなことがありすぎてそこまで頭が回ってなかった気がする!」
「その意気だよ!--葉留!あなた達には期待してる!私はいつでもあなた達と会話出来る訳じゃないけど危険な時には助けるから!」
「分かった!頑張って役目を果たすよアリス!」
アリスの希望を叶えると決めた葉留。今以上に過酷な旅になるのは分かっているが世界を救いたいアリスの願いを叶えるため頑張ろうと思った。
「あと葉留、ルーンの文字の持つ力を解き明かして!こればかりは私からは教えられない、自分の力で知って欲しいの……ルーンの力を知った時はあなた達は今よりも強くなれるわ!必ず」
「えっ!それってどういう……」
アリスは食い気味に言う。
「さあそろそろ時間よ!仲間の元に行ってあげなさい--あなた達が無事悲願を達成する事を願っているわ」
そうアリスが言うと目の前が急に明るくなり葉留の意識が飛んだ。
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