第52話 闇堕ち

「では行きます副騎士長、クイックスタンス」


葉留はクイックスタンスで一気に距離を詰めようとしたがそこはルナにバレている。


「甘いわね!ガードスタンス」


葉留一瞬でルナの間合いに入り剣で攻撃を仕掛けたがガードスタンスのルナには攻撃が通らない。


「ならこれならどうです?アタックスタンス」


クイックスタンスとアタックスタンスの合わせ技で素早く、重い攻撃をする。


だがそれでもガードスタンスのルナはビクともせずにいた。


「葉留、あなたとは鍛え方も経験も違うの!そんな軽い攻撃じゃいつまで経っても私に傷一つ負わせるのは無理よ」


ルナの言葉は聞こえているがそれでも葉留のラッシュは止まらずに攻撃を続ける。


ルナは傷一つ付かないがルナの纏っている鎧は徐々に消耗してきていた。


このままではやばいと感じたルナはスキルグランドショックを放つ。


この攻撃により葉留はよろけ動きが止まった。


「ちょっと眠ってて葉留」


先程の桜との戦いで桜のお腹に放ったパンチ以上の威力で葉留にも放った。


葉留はその攻撃で遠くまで飛ばされた。


「けっこう本気で殴っちゃったから気絶すると思うんだけど」


だが、葉留は起き上がり何も痛みを感じてないようだった。


「さすがに副騎士長はお強いですね……この力は危うい時に使えと私を治療した人が言っていたのですが、今がその時かもしれませんね」


ルナは葉留の言った治療した人の言葉で全てを理解した。


「まさか葉留……グライスト王国の治験部隊に……答えなさい葉留!あいつらに何をされたの!」


ルナの質問にいちよう答える葉留。


「あの部隊は俺を強くする為の治療をしてくれました!数時間目を瞑ってるだけで強くなるなんてこんな簡単な事はないですよ!」


薄気味笑いをしながら徐々に声が大きくなり最後にはルナにも治療を勧める葉留。


「副騎士長も治療をしてみてはどうですか?すごく気持ちいいですよ!まるで生まれ変わったようです!」


このおかしい葉留の状況を桜はルナに聞いた。


「治療って、葉留は何をされたの副騎士長!」


それにルナは噛み砕いて話した。


「副騎士長はやめて!私の名前はルナでいい--葉留は多分グライスト王国の謎の多い部隊、治験部隊に治療と称した人体実験を受けた可能性がある!何度か聞いた話によると毎回失敗し何人もの死人が出ているらしい」


桜は不安そうな表情でルナに聞く。


「じゃあ葉留は死んじゃうの?」


「いや、今までは実験途中で死んでいたらしい、だが葉留は無事という事は実験は成功しているということだ……どういう実験をしたのかは皆目検討もつかない」


葉留が口を開く。


「そろそろお喋りはいいでしょう、では始めますね」


そう言うと葉留は服から小さいカプセルを取り出した。それは中に緑色の液体が入っている。服用の仕方は口に含みカプセルをかじり中の液体を体内に入れると言ったシンプルな方法だ。


葉留とルナは多少離れてはいたがルナにはカプセルと言う事がわかった。


「やめろ葉留!それは飲むな!」


「嫌ですよ副騎士長、ここであなたを撃ちカタルシア軍を全滅させるこれが私の受けた命令」


葉留は続けてルナに大事な事を話す。


「あっ!そうそう王様の命令でルナ副騎士長は犯罪者を匿った罪で今日をもって軍をクビ、そのまま牢獄行きだそうです--なのであなたはもう副騎士長ではなくただの犯罪者です」


それを聞いた周りのグライスト軍兵士は驚き、困惑していた。


「ふ、副騎士長……それは本当なのですか!まさか副騎士長が犯罪者を匿っていたなんて!」


兵士のその言葉にルナは何も言えずにいた。


グライスト軍の士気は一気に低下した。


そこにグライスト軍騎士団長とその後ろになんとグライスト・ヴァン・フール国王がやってきた。


「皆の者聞け!今そこの少年、青木葉留が言った事は全てほんとだ!そしてこの少年も元犯罪者だったが王様に許しを乞いこの国に尽くすと誓ってくれた!この寛大な心の持ち主である国王と共にこの戦!必ず勝利を誓うと約束してほしい!国王は兵士1人1人の安寧を願っている!そんな国王のために必ず勝つぞ!」


騎士団長の熱弁にグライスト王国の士気が急上昇し守りから攻めへと転じた。


この勢いにカタルシア軍は押されつつあるが負けじと攻めの姿勢を貫く。


国王が葉留に命令を下した。


「さあ葉留よ!そこの犯罪者を切れ!」


「了解しました国王様」


葉留は先程出したカプセルを口に含み、噛んで液体を体内に流し込んだ。


すると苦しみ始めたがものの1分で苦しみは快楽へと変換され葉留の姿が変わり始める。


それはまるで身体の半分が悪魔にでも乗っ取られたかのように黒く変わっていった。


その禍々しい状態に桜とルナは言葉が出てこなかった。


世界はもうじき夜を迎えようとしていた。

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