第50話 女対女

「ルナ副騎士長!カタルシア軍のあのアサシン、まだ子供のような身なりをしたあいつが1人で何人もの我らの兵士達に致命傷を与えた奴です!」


「あんな子供が!」


ルナは桜を凝視した。こんな戦場に葉留と同じくらいの子供が参加してるなんて……しかもうちの兵士達に傷を負わせる程の実力者とルナは桜を葉留と重ねて見てしまっていた。


「怖気づくな!たかが子供に!数はうちの方が勝ってる、全員突撃だ!」


グライスト軍は再び突撃を仕掛けてきた。


カタルシア軍も優勢の勢いのままグライスト軍を迎え撃つ。


ルナも攻撃に参加しようとした時、横から殺気を感じとっさに腕でガードした。


金属同士がぶつかり合う甲高い音が響いた。


「私の攻撃に反応できるなんて!やるねお姉さん」


スキル迅速からのルナに向けて奇襲を仕掛けてきた桜。


「あなたもね!私に1人で仕掛けて来るなんて……これは少しお仕置きが必要みたいね」


それを聞いた桜が冗談半分で。


「やれるものならやってみな……よく見たらお姉さんじゃなくておばさんだったかな?」


ルナに向かって軽口をたたく桜。


「おばさ……私まだ29歳なんだけど……葉留と同じくらいの子供だから最初は手加減してやろうと思ったけどやっぱりここは戦場だものね!潔く殺してあげるわ!」


ぼそっと言った葉留という言葉に桜が反応した。


「えっ?葉留!」


桜は葉留の事をルナに聞こうと思ったがもはやルナは怒りで桜の話しを聞こうとしなかった。


ルナは剣を抜き全力で桜を攻撃してきた。


桜は剣を回避するので精一杯で中々攻撃を仕掛けることが出来ない。


「やばっ!この人強すぎる、迅速はあと1回しか使えないし--ならあの闘技場でやった連続スキルで倒す!」


桜はスキルインビジブルを使い消えた。


「なに?逃げたの?つまらない」


そうルナが言った瞬間あらゆる方向から斬撃が飛んできた。


「くらえ!インビジブルキリング!」


斬撃がルナを襲う。斬撃が終わり辺りが砂煙で覆われて倒したかどうかの確認が出来ない。


「やった!これ絶対倒したよ!」


他のグライスト軍の兵士も戦いながらルナがやられてしまったのかと見ていた。


砂煙が晴れてきた。


「もしかして今の必殺技かなんかだった?あまりにも貧弱な斬撃だったから風でも吹いたのかと思ったわ」


砂煙が完全に晴れルナが姿を表した。傷1つなく鎧に付いた砂をほろこっている。


「インビジブルキリングが通用しない……」


今の持てる最大の技を見切られてしまった桜はさっきまで全然なかった恐怖が出てきていた。


「自信喪失ってところかしら?あなたもまだまだ訓練が足りないわね--とりあえず今はきついお灸を据えておきましょうね」


ルナは不敵な笑みで桜を見た。と同時にスキルを発動した。


スキル、クイックスタンス。


桜はクイックスタンスを知っているため急ぎインビジブルで姿を消そうとしたが。


一瞬で桜の目の前にルナが現れお腹に直接、重いパンチを入れた。


その攻撃に桜は吹き飛び、地面に落ちた。立ち上がろうとするがお腹にパンチをもらった衝撃で嘔吐してしまった。


「うっ……い、痛い」


痛みに苦しむ姿を見てルナが言った。


「伊達に副騎士長をやってないのよ、どお?まだ向かってくる勇気はある?」


桜もさすがにルナには勝てる気がしていなかった。だがここで逃げたら後衛にいる真矢が危ないと思い短刀を握って立ち上がった。


「あらら、意外とタフなのね!」


「ここで逃げたら私の大事な親友が危険な目に会うかもしれない!だから私は逃げない!今真矢を守れるのは私だけなんだ!」


桜の言葉の真矢と言う名前に聞き覚えがあったルナが葉留との会話を思い出していた。


桜は痛むお腹を手で押さえ再びルナに向かっていった。


「待ちなさいアサシンの子供!あなたもしかして桜って名前かしら?」


桜は足を止めた。


「え?なんで私の名前を……」


「やっぱりあなたが桜、そして後衛にいるのが真矢って子かしら、なるほど」


「あんたやっぱり葉留の事を知っているの!!教えてよ!葉留は今どこにいるの!もしかしてこの戦場に!」


桜はルナに問いただした。困った顔をしたルナが桜の問いに答えようとした、その時。


カタルシア軍が見えない敵に次々と切られていく。


これにはカタルシア軍騎士団長も焦った。


「な、何事だ!もしやグライスト軍にもアサシンがいるのか?」


すると見えない敵が姿を表した。


それを見た桜とルナは驚きを隠せずにいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る