伝説‥61話〜旧異世界の勇者とその子孫達

 ここはオパール城の謁見の間。ロウディはクロノアに聞かれ、シェルズ城の事とシェルズ城の者の事について話し出した。


「うむ、何から話したら良いか。まずは、あの城の事について話すとするか。」


 ロウディは少し間をおき、


「あの城の事についてだが。遥か昔、数百年?数千年かは分からないが。かつてこの世界には国と呼べるものはなかった。その為か、各種族同士の争いが絶えなかった。そんなある日この争いを止める為、異世界の者を召喚しようという事になった。そして、召喚をするには、もっともマナが満ちている場所でなくてはならない。その為、3か所に召喚の神殿を作った。……。」


(ん?マナが満ちている場所って。俺とクロノアとミクはちゃんとした神殿で召喚された。でも、さっきシュウから聞いた話だと、シュウとクレイ・ディオンとマリリンは、そことは別の場所で召喚された。それも同じ場所で……ん?それってどういう事なんだ?あー、分からねぇ〜!はぁ、考えてても仕方ないよな。)


(なるほどな。リュウキ達は、正規ルートで召喚された。そして、俺とクレイ・ディオンとマリリンは、あの城の特別に作られた祭壇で召喚された。それと、あのジルベイムが言っていた事がどこまでが本当の事だか分からないが。俺達3人を召喚した理由が奴らの野望の為なのは間違いないと思うんだが。今一つ何かしっくりこない。」


「……3人の異世界の者達が、その後どうなったのか、その事については、他の者達にはタブーとされ、王家のみ代々聞かされ書物も残されてきた。」


「あの、聞いていいですか?」


「クロノア。うむ、発言を認めよう。それと、今から皆の発言も認める。何か気になる事や、話したい事があれば、話の途中でも発言をして欲しい。」


「分かりました。ありがとうございます。それで、その異世界の3人ってどうなったんですか?それと、何故王家以外に知られてはいけなかったのかな?」


「クロノア。その3人の勇者達の事なのだがな。うむ、あの城の事を知られてしまった今となっては、話さなければならないだろうな。今から話す事は、我王家の者だけが知り、この内容の一部の事を王直属の配下の者等が知る。」


 ロウディは少し間をおくと話し出した。


「その時代では、力のある者が世の中を支配していた。力なき者はその日その日を生き延びる事で精一杯だった。それをどうにかしたいと思った者達により、3人の勇者は召喚された。そして、この世界を救って欲しいと言われ、先に話した通り、この世界を救った。そして、役目を果たし神の導きで、1人は元の世界に帰った。だが、2人の勇者達は、何故か元の世界に戻ろうとしなかった。」


「ん?それってどういう事なんや?せっかく元に戻れるっちゅうのに。何でこの世界に残ったんや?」


「クレイだったか。残った2人の勇者達が、何故この世界に残ったのか。書物に書かれていた事なのだが。その2人の勇者達は、この世界を救い神と崇められいい気になっていた。この世界ならば、自分達の思い通りになる。元の世界に戻るよりもこの世界にとどまり世界を自分達のものにと。そして、世界はその2人の勇者達により支配された。それだけならまだよかった。」


「それだけならよかったって、どういう事なんですか?」


 シュウが不思議に思い聞くと、


「うむ。その2人の勇者達はこの世界を制圧し自分達の為だけの独裁国家を作り重税を設け、ある者は家族を人質に強制労働を強要されたり、ある者は財産を没収され、ある者は、闘技場にて娯楽の為に命を賭けて戦わされたりもした。歯向かうものは、全て処刑していたという事だ。そして、この世界に残った2人の異世界の者達は、この世界の者達から、その見た目と振る舞いから『漆黒しっこく龍邪神ドラゴンイーヴィルゴット』と『深紅しんく龍邪神ドラゴンイーヴィルゴット』と名付けられ、人々は2人を忌み嫌い、そして恐れ『紅黒こうこく龍邪神ドラゴンイーヴィルゴット』と呼んだ。」


「ちょっと待て!処刑って……信じられねぇ。そんなまさか、あり得ねぇ!何でそんな残酷な事ができる。」


 リュウキはそう言うと、下を向き口を震わせ一点を見つめ睨み付けていた。


「リュウキ。お前が言うように心ある者であればそのような事をするわけもない。だが、その2人の異世界の勇者達……いや、勇者とは呼べぬな。」


 ロウディは下を向き一点を見つめていた。


「それでその異世界の2人は、その後どうなったんですか?」


「ディアス。その後、立ち上がった者達がいた。それは我が祖先ラクティス・オパールとその仲間達だった。ラクティス達は、その非道なまでの行いを阻止するにはどうしたらいいかと考え、自分達の浅はかな考えから招いた事態に頭を悩ませた。そして、話し合った結果、3人の異世界の者を召喚する事にした。」


「なるほど。でも何で3人しか召喚しなかったんですか?そんなに強大な相手なら、もっと召喚する人数を増やしてもよかったではないですか?」


「ダルナド。理屈から言えば、お前のいう通りなのだが、当時はまだ力のある召喚魔導師の数が少なく召喚する為の場所も祭壇も多くは存在しなかった。それでも、ラクティス王は、この世界に生きる人々を守る為、3人の異世界の者達に未来を賭けたのだ。しかし、召喚を試みたが1ヶ所の祭壇を除き、ほかの2ヶ所の祭壇の召喚は失敗に終わった。」


「召喚に失敗したってどういう事なんですか?」


 シュウは不思議に思い聞いた。


「うむ、その理由自体、今の知識で考えれば簡単な事だった。本来、同じ祭壇で2人召喚する事は、不可能なのだからな。」


「ほな、1人しか召喚出来へんかったって事なんか?」


「クレイ。いやその後、マナが満ちている所を探しそこに新たに祭壇を作り召喚したらしい。」


「そうなると、今も3ヶ所の祭壇以外にもあるって事なのかな?」


 クロノアがそう聞くと、


「いや、その祭壇は今は壊されていてないはずだ。」


「そうなると、俺とクレイとマリリンを召喚した祭壇ってその祭壇とは別の物って事なんですか?」


「うむ。シュウ、そうなるだろうな。」


「新たに異世界の人達を召喚したあとって、どうにゃったのかにゃ?」


「その後、3人の異世界の者達は、紅黒の龍邪神達に挑み、遺跡の城(現在のシェルズ城)に追い込んだ。そして、地下に追い詰め死闘を繰り広げたが、紅黒の龍邪神達が強く、動けなくするだけで精一杯だった。紅黒の龍邪神達が動けなくなったのを確認すると、自分達も力を使い過ぎこれ以上は戦えないと判断し2人が出てこれないよう、城に封印を施した。そして、3人の異世界の者達は元の世界に帰っていった。それがシュウ達が召喚された城なのだ。」


「城を封印したって事は、そいつらはその城から一生出れないって事なんだよな?」


「リュウキの言う通り、本来ならそうなのだろうが。あの城の封印は何故か数百年に一度効力が弱まり、封印が解ける。そして約1年前その封印が解けた。その為あの城を監視していた。」


「なるほどねぇ。でも、城が封印されてたんなら、とっくにその2人は死んでるはずだよねぇ。じゃ、シュウ達を召喚した人達っていったい誰なのかなぁ?」


「確証はないが、恐らく奴らの子孫だと思うのだが。」


「でも、良く考えると変じゃないか?」


「リュウキ、何が変なのだ?」


「もし、その2人の子孫だとして、どうやってその封印された城の中で子孫を残せたんだ?」


「そこまでは詳しくはないが、今から話す事は書物の中に書かれていた事なんだがな。3人の異世界の者達が城の封印をしてから数十年後、城の封印が解け紅黒の龍邪神達は、今いる城にシェルズ城と名付け拠点にし動き出した。そして、自分達の意のままに忠実に動く者だけを城に招き入れ復讐を果たす機会を伺いながら準備を着々と進めた。」


「……って事はつまり、その時に子孫を残した可能性が高いって事になるよな。」


「ああ、そうなるだろうな。それに話はこれで終わりではない。……。」


 そう言うとロウディは続きを話し出した。

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