第7話
ふぁ〜まだ寝足りないな。 久々にベットでねれたのはいいんだが、日差しが登りきる前に教会の鐘の音で叩き起こされた。 その後はしたくもないお祈りをさせられるし。
部屋で飯を掻き込んでいると、部屋のドアがノックされる。
「入ってくれ」
返事をするとライラが部屋に入ってくる。
「おはようさん。 それで、こんな朝早くから何の用だ?」
「おはよう。 勿論仕事の話よ。 勇者様はお昼過ぎにクエストに向かうと連絡が来たわ。 私達も行くんだから準備しておくことね」
昼過ぎに行くってことは、あんまり遠くには行かないみたいだな。そっちの方が準備が少なくてこっちとしては助かる。
「そのことなんだが、ライラ。 今日は街の外に出るんだろ? 俺は牢からでたばかりで装備が無いんだ。 昼前に調達したいと思ってる」
「そうだったわね。それなら心配いらないわ。 貴方が捕まった時に取り上げられた装備の一部はこちらで保管しているの」
「本当か!?」
「全てではないけれど、ダガーとペンダントの二つは教会の倉庫に保管してあるわ。後で貴方に渡すわね」
「そりゃあ、ありがたい」
いやぁ、俺の装備があるなんて驚きだ。 俺みたいに家族が居ない罪人だと装備なんかは勝手に売られちまうことが殆どだ。 やけに根回しが良くて怪しいが、ラッキーだったと思うことにしよう。しかし、まだ装備が不安だな。
「ダガーとペンダントが残ってたのは嬉しいんだが、まだ装備を整えたいんだ。 やはり昼前に調達しに行きたいんだ。」
「そういう理由ならしょうがないわね。いいわ街に買いに行きましょう。」
飯を食べ終えた俺は、ライラと一緒に街へ向かった。
「それで装備を整えるって、何を買うのかしら?」
「何を買うかって…。 決まってんだろ! 服だよ、服! 教会来てからずっとこの修道服きてるんだ! 似合ってない自覚はあるが、すれ違う奴全員に不審な目で見られるのは限界なんだよ……」
「ぷふっ…。 わ、私は似合ってると思うわよ。 ぶふっ!」
吹き出してるライラは置いて店の中にはいる。
ここの店長のコスタスは鍛治も裁縫も器用にこなす人間だ。そのため日用的な服から冒険者が装備する防具まで揃ってる珍しい店ってことで、この辺りじゃ人気の店だ。
「さてさて、どれにしたもんかな」
服は出来るだけ目立たないように普通の服を選ぶ。装備は、俺は動き易さ重視で装備を選ぶので、取り敢えず胸当てだけ選んでおくか。 このロックリザードの胸当てなんか良さそうだ。 ロックリザードが材料なら、この辺りじゃ充分な防御力があるだろう。
「あと必要な物は何だっけ。 外套だな」
「外套ならこれがいいんじゃないかしら。目立たなそうだし、沢山収納出来そうよ」
いつのまにか店に入っていたライラが話しかけてきた。
ポイズンバットの外套か。 ポイズンバットの皮は水を弾くし、毒や酸なんかにも耐性がある優れものだ。
「ライラがおすすめするならそうしよう」
「私は目利きは確かだから安心しなさい」
品物を会計の所まで持っていく。さて幾らになるかな。
「え〜お会計金貨5枚銀貨7枚になります」
「意外とするもんだな。 まあいい。 えっと財布は……」
「どうしたのよ? はやくお会計済ませなさいよ」
「……すまないがライラ、装備ってのは必要経費ってことで何とかならないか」
「はぁ?」
すっかり忘れていたぜ。 捕まった時に金も押収されていたんだ。 今の俺は無一文だ。
「ライラ、やはり装備は今度買いに来よう。 無駄な時間に付き合わせちまってすまねぇ……」
「もうしょうがないわね。 牢から出たばかりの貴方がお金あるはずないものね。 ここは私が払うわ」
「いや、でもよ」
「いいから! 装備は仕事に必要でしよ。 それに返してくれればいいわ」
「……助かる」
その場の会計はライラが済ませてくれた。
おい、店員さんな目で俺を見るな! 確かに傍目から見れば30手前の男が、若い女に色々買ってもらってる図になるよな。 だが、ヒソヒソ声でヒモ男よ、とか貢がせてるとか言うのやめろよおおお!
俺はライラの腕を引き、足早に店を出た。
「他の物も揃えようと思ったんだが、金がないとなると別の日にしなきゃらなねぇな。ライラ本当にすまねぇ」
「さっきも言ったけど、返してくれればいいの。 あと、また買いに来るの面倒だから今日で全部揃えるわよ。 仕事は万全の体制で挑むべきが私のモットーなの」
「ありがとよライラ。 金は絶対に返す 」
な、なんて優しいんだ! 久々に人の優しさに触れて感動しちまう。 あぁ頭のイカれたカルト女なんて思ってすまない。 俺の服を見て笑ったのも水に流そう。なんて、一人で思っているといつのまにか店に着いていた。
「ここだライラ。 後必要な物はここで揃える」
バスカルっていうハーフドワーフのおっさんがやってる武器屋だ。 愛想はそんなに良くないが、並べてある品はハズレがない。愛想のせいで大体の奴はこの店は選ばないがな。
「おーい、バスカルのおっさん! いるか〜?」
大声で呼んだが反応がない。 しばらくすると奥から酒瓶持った髭をモッサリ蓄えた中年が出てくる。
「久々だなバスカルのおっさん」
「こ、こんにちは」
「テメェ、トルスか? 生きてやがったのか。 どこかで野垂れ死んでくれるのを願ってたんだがな。 それで隣の嬢ちゃんは誰だ? お前の女って可能性はないだろうが」
「はじめまして。 私はライラ。 ティラ教のプリーストをやっております」
「教会所属のプリーストか。そんな人間がこんなクソ野郎と一緒に居るのはおすすめしないぞ。 儂は見ての通り、ここで武器屋をやってるバスカルだ。 それで、教会のプリースト連れて何の用だ?」
「ここに来る理由なんて一つしかないだろう。 おっさんと世間話したい物好きがいりゃあ別だが。 武器を買いに来たんだよ。 スローイングダガー10本と前作らせた靴の予備をくれ。」
「いいだろう。 倉庫を見てくるから少し待っとけ。」
バスカルのおっさんが品物を取りに行っているのを待っていると道の向かい側から声が聞こえてきた。
「なんだこりゃあ! 凄い武器ですね!」
「私も初めて見ました! とてつもない武器に違いありませんわね。」
声は向かいの武器屋かららしい。 この辺りにそんな凄い武器を扱ってる店なんてあったか?
「あっ、あれは!」
ライラが向かいの店を見て何か驚いている。
「おいおいそんな凄い武器なのかよ? 俺も見てこようかな。」
「馬鹿! 行くんじゃないわよ!」
ライラに、いきなり口を押さえられて店の影に引っ張られる。 痛い!痛い! ライラの馬鹿力で口を押さえられて顎の骨が軋んでる! ライラの腕をタップして何とか生還した。
「おい! いきなり何すんだ! 死ぬかと思ったぞ。」
「大きい声出すんじゃないわよ。 あの店に居るのよ。」
「居るって? 何が居るんだよ?」
「居るのよ。……勇者様が。」
銅貨=10円
大銅貨=100円
銀貨=1000円
金貨=10000円
大金貨=100000円
金のレートは基本的にこれくらい。 鉄資源がかなり豊富な感じです。
ロックリザードー火山地帯や鉱山、砂漠などに広く生息する。 岩石や鉱石を好んで食べるが、肉なども食べる。 外皮に食べた鉱石の成分を貯めるため非常に硬い。
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