第6話
「ほぉ。 実物に対面させてもらえるのか」
「私が何か言うより手っ取り早いでしょ」
「ライラ、 あんたを信用してないって訳じゃあないんだぜ。だけどよ、やっぱりこの目で見たものが1番信用できるってもんだろ 」
「はいはい。 私は貴方のことを全く信用していないけどね」
「それで、どこに行ったら勇者様を拝めるんだ?」
「明日勇者様がモンスター討伐のクエストを受注する予定よ。 私達はそれをサポートする」
「それが俺たちの初仕事ってわけか」
モンスター討伐ってことは、勇者とやらの実力を間近で見れる良い機会ってわけだ。俺としては、サポートする必要がないくらいの実力を見せつけて欲しいもんだな。
「明日の予定は決まったな。 それで今日はこれからどうする?」
「私は街に用事があるの。貴方も関係あるから今日中に済ませてしまいましょう」
まだ指輪付近が痛むが、ライラと一緒に教会を出て街に繰り出すとしますか。
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「そんで、ライラ。あんたの用事ってのはなんだ?」
「大した事じゃないわ。 貴方の失効した冒険者証をまた使えるようにする為に、冒険者ギルドに行くのよ」
「おいおい! そりゃあ朗報だな。 二度とギルドには戻れないと思っていたんだがな。 じゃあ、さっさと済ませちまおう!」
教会から馬車で20分程走らせ冒険者ギルドに到着した。
久々のギルドだが、特に何も変わってないな。デカイ扉を開けて中に入って、受付まで歩いていく。
「こんにちは。 本日はどのような用事で…貴方は! 服役してる筈では? ともかく、貴方のギルド証は失効しています。 お引き取りしてください」
「そんなつんけんしないでよキャシーちゃん。 このお嬢さんがギルドに用事なんだってさ」
「キャシーさんといったかしら? 私はライラ。 ティラ教会所属のプリーストで
「…ライラ様ですか。 はい承りました。 ……し、しばらくお待ちを!」
ライラが20枚程の書類をキャシーに渡す。 キャシーは書類を読み進めていくとどんどん顔が青ざめていき、裏に走って行ってしまった。
キャシーが中々戻らないので、受付で待っていると突然後ろから肩に腕を回される。
「おーいトルス。 ムショにぶち込まれたって聞いて心配してたんだぜ。 だが心配の必要は無かったらしいな。 別嬪さん連れて戻ってくるなんてな」
「そうかそうか俺も早く会いたかったぜドルビス。 たが、その汚い手をどかせ」
この小太りのネズミみたいな男は
ドルビスの腹を肘で突いて体を離す。
「お前の助力のお陰で、俺の刑期がちぃとばかし長くなりそうだったんだか、何か言うことはあるか?」
「そ、それは! 違うんだよ〜! 言葉の綾っていうか何というか。 それより面白ぇ話があるんだよ!」
「面白ぇ話だ? お前がついた嘘よりは、どんな話でも愉快だろうな。 まぁいい、話してみろ」
「2日ほど前、男と女の2人組が冒険者登録しに来たんだ。どっちもかなりの美男美女でよ、俺入ってきた瞬間驚いちまったぜ」
「それのどこが面白い話なんだ」
「面白いのはこっからよ。二人とも紋章付きの装備してやがるんだ。 それも、よーく見てみるとその紋章ってのは王家のもんなんだ! そしてよ、一番驚きなのが、男が黒髪黒目ってとこなんだぜ! 俺は初めて見たぜ。 お前の薄汚い黒髪なんかじゃないんだ。 艶のある、夜の暗闇より深い黒だぜ」
「ほぉ…そりゃあ興味深い。 女の方はどんなだった?」
「女はとんでもねぇ美人だったぜ。 お前の連れみたいな金髪碧眼でよ、歳は20はいってない感じだったな。腰くらいまでの髪の毛巻いてたな。 ありゃあ間違いなく貴族の出だ。 本当に美人でよ、アホな新人がちょっかい出そうとして男の方にぶっ飛ばされてたぜ。 俺は親切にも忠告してやったのによ」
男の方は確実に勇者だな。 もうギルドで噂になってるなんて中々ヤンチャなもんだ。女の方はよく分からんな。
「中々面白い情報をありがとよ」
「そうだろう! それじゃああんたの刑期の件はこれで…」
「許してやるよ。 これからの情報代無料ってことでな。 じゃあ、どっか行ってな」
ドルビスとの会話を終わらせると、ちょうどキャシーが戻ってきたようだ。
「ライラ様お待たせしました。 ギルド長の確認が取れました。トルスの
「ありがとうキャシーさん」
「ありがとうよキャシー。 これで元どおりってことだな。また、よろしく頼むぜ」
キャシーは心底嫌そうな顔をしているが、俺は最高の気分だ。
冒険者証は身分証になってるからな。 これがなきゃ宿借りるのも、怪我の治療も一苦労なんだ。
「じゃあなキャシー! また来るぜ。」
俺はそう言ってライラとギルドを後にした。
「感謝するぜライラ! これで宿が借りれる。 じゃあまた明日集合しよう。 何時にする?」
もう頭の中は飯と酒のことで一杯だ。 どこにしたもんか。 決めたぜ! 今日は満腹亭で腹一杯食って飲むぞ! あぁ、早く行きたいぜ。
「何言ってるの。 貴方を一人で行動させる訳ないじゃない。 貴方はこの街にいる間は教会で生活してもらうわ」
「へ?」
有頂天から一転、気分は最悪だ。 ライラから俺は逃げられないのか?
「いや、でもよ…ライラも俺といたくないだろう?」
「貴方みたいな犯罪者と一緒に居たくはないけれど、貴方を監視するのも私の仕事なの」
結局俺はライラに腕を掴まれ、行きに使った馬車で教会まで連れていかれた。
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