第294話 嫁入り道具!?

 ロレッタちゃんの家を出ると、瞬間移動ですぐさまエリーの家へ行き、お母さんへ事情を説明すると、


「……ついにこの時が来たのね。いつかは、この日が来るって覚悟はしていたけれど、少し早かったわね」

「お母さん? 何の話なのー?」

「エリー。これを持って行きなさい」

「お母さん? これはー?」

「お母さんがおばあちゃんから貰ったネックレスなの。エリーに嫁入り道具として持たせるから、大事にしてね」


 何だか話が大きく捻じ曲がっている気がする。

 エリーは、うちの村で学校の先生……というか、保母さん? みたいな事をしてもらおうと思っているんだけど、お母さんの解釈が変じゃ無いか?


「エリー。お母さんは大丈夫だから、行ってきなさい。けど、そうね。年に二回くらいは帰ってきて欲しいかな」

「あの、エリーのお母さん。もっと頻繁に帰ってもらっても大丈夫なんですが」

「ヘンリー君。気を使わなくても大丈夫よ。ただ、子供が産まれたら、顔を見せに来て欲しいかな。でも、私ももうすぐ、おばあちゃんになるのねー」

「いや、お母さん? 何か色々と誤解してますよね!?」


 お母さんの誤解を解いてもらおうと、エリーに目配せをすると、


「そうだよー。お母さんったらー。ハー君とエリーの子供なら、もう居るじゃない」

「あら……そういう事なのね。大変! じゃあ、色々と準備が必要ね。とりあえず、お父さんに連絡して帰って来てもらって……」


 何故か悪い方向に加速されてしまった。


「エリー!? な、何を言っているんだ……って、あれか。エリーが言っているのはジェーンたちの事か」

「そうだよー。だって、ハー君とエリーの魔力を混ぜて産まれたんだもん。ハー君とエリーの二人の子供だよー」

「あ、ジェーンちゃんの事ね。じゃあ、未だエリーの中に子供が居る訳じゃないのね」


 毎度の事ながら、物凄く誤解をまねくエリーの言い方なんだけど、そこから説明を繰り返し、何とか正確に伝わった……と思う。

 それから了承を得たので、翌朝に学校へ行き、ポピー、ロレッタちゃん、エリーの三人と共に村へ行く事になったと学長に伝えた後、


「じゃあ、今から三人には俺が領主をしている村へ移動してもらう」

「あの、ヘンリー君。村へ移動してもうって言いながら、どうして魔法訓練室に来たの?」

「あー、ロレッタちゃんとポピーは、実際に体験した方が早いかな」


 魔法訓練室でワープ・ドアの魔法を使おうとした所で、エリーが抱きついてきた。

 これはテレポートを使えって事か?


「え!? エリーちゃん!? わ、私たちの前で、そんな事始めちゃうの!?」

「ん? よく分かんないけど、ロレッタちゃんも、ポピーちゃんも、ハー君に抱きついてー」

「い、いいの!? だって、ヘンリー君とエリーちゃんはそういう関係だけど……」


 ほら、エリーがちゃんと説明しないから、ロレッタちゃんが変な勘違いをしているじゃないか。


「ロレッタちゃん。私たちは既にヘンリー様のものだから、遅いか早いかの違いだけ。ほら、私たちもエリーちゃんみたいに……ね」

「ポピーちゃん!? 順応が早過ぎませんかっ!?」


 エリーの言葉でポピーが俺に抱きつき、仕方ないと言った様子でロレッタちゃんも抱きつこうとしている。

 しかし、そもそもエリーの暴走って感じが否めないんだが、俺の右側からエリーが抱きつき、左側にポピーが。俺の背中にはユーリアが居るから、正面しか空いて居ない。


「お、遅いか、早いかの違い……そ、それで、これから何をするの!?」


 ロレッタちゃんはエリーよりも小柄なので、俺の胸に顔を埋める形で抱きついている。


「いや、別に抱きつく必要は……いや、何でもない。……テレポート」


 そのため、既に俺の屋敷に着き、エリーとポピーは離れているのだが、


「ヘンリー君? するなら早く……私の覚悟が揺らがないうちに、お願いします」


 ぎゅっと俺に抱きつき、顔を埋めたままなのでロレッタちゃんだけ気付いていない。


「いや、もう終わったんだけど」

「え? でも、まだ抱き締められる事すら未だ……って、え!? ここは、どこなの!?」

「あー、ここが、俺の今の家なんだ。……ようこそ、マックート村へ」

「え? えぇ!? 一体何が起こったの!?」

「まぁ、そのうち説明するよ」


 マックート村に、新たな住人が三人増える事となった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る