第295話 開校準備

「あの、ご主人様……そちらの女性たちは?」

「ん? あ、そうか。エリザベスにしか話してなかったな。俺のクラスメイトで、子供たちに勉強を教えてもらう先生だよ」

「……女の子ばっかり……」


 恐る恐る声を掛けてきたノーマに説明し、部屋の準備をお願いすると、何かを呟いて屋敷の奥へと駆けて行った。

 きっと、三人分も部屋の準備をしないといけないから忙しいとか、そういう感じの事だろう。

 ……幼女たちがも増えて、人数がかなり多くなったから、そろそろノーマを補佐するメイドさんや、メリッサを補佐する料理人も必要かもしれないな。


「あ、あのヘンリー君。今のメイドさんみたいな女の子は……」

「ん? ノーマはこの屋敷で働いてくれているメイドさんだが?」

「め、メイドさんが居る家……流石、領主だね」

「他にもいろんな人が居るから、三人とも後で紹介するよ」


 驚くロレッタちゃんと、屋敷の中をキョロキョロと見渡すエリーとポピー。

 まぁ最初はそうなるよな。俺だって、学校の寮からこの家に移った時は、差が凄すぎて驚いたしな。


「あれ? エリーはこの家に来るのは初めてだっけ?」

「そうだよー。ハー君のお家に、やっと招待してもらったんだよー」

「そうか。エリーは割と俺の家に来ているイメージを勝手に持ってしまっていたよ」

「あはは。ハー君がよくエリーの家にお泊りしに来てくれていたからじゃないかな?」


 けど、最近はあんまり来てくれなかったけどねー……と、頬を膨らませるエリーの頭を撫でていると、


「……やっぱりヘンリー君は、エリーちゃんのお家にお泊りしてたんだ……」

「……ロレッタちゃん。これからはエリーちゃんだけじゃなくて、私たちもそういう関係になるんだよ?」

「……ど、ドキドキとワクワクが混ざってて、変な感情になっちゃうね。ポピーちゃんはそういう経験ってあるの?」

「……ある訳ないよ。けど、もう覚悟は出来てるからね。じゃあ、ロレッタちゃんより私が先かな?」


 何やらロレッタちゃんとポピーがコソコソと話をしている。

 何を話しているかは分からないが、顔を赤らめながらチラチラ俺とエリーに目をやるのは何だろうか。


「ヘンリーさん、おかえりなさい。そちらの女性たちが、仰っていた魔法学校の生徒さんですか?」

「あぁ。昼食の時にでも三人を皆に紹介するけど、エリーにロレッタちゃんに、ポピーだ」

「エリザベスと申します。皆さん、よろしくお願いいたしますね」


 エリザベスの優雅な会釈に、三人が――いや、エリーはいつも通りで、ロレッタちゃんとポピーが焦りながら深々と頭を下げる。


「エリザベスは、この村の財務関係とか、内政全般を担ってくれている、ある意味一番大変な役を担ってくれているんだ」

「す、凄いね。何ていうか、オーラがあるっていうか、気品が溢れ出ている気がする」

「そうだね。お城に居たら、王女様だって思っちゃうかも」


 ロレッタちゃんもポピーも凄いな。正解だ……というか、これはエリザベスの持つオーラが凄いのか?


「では早速ですが、お三方にはお仕事について、お話させてください。後で、パメラ先生にも入っていただきましょう」

「えっ!? パメラ先生!? ……あ、いえ、何でも無いです」

「パメラ先生……モテないからって、生徒であるヘンリー様を狙って……!?」


 エリザベスからパメラの名前が出た途端に、ロレッタちゃんとポピーが顔を見合わせる。

 エリーはいつも通りニコニコしているけれど、多分生徒たちの中で有名だったんだろうな。悪い意味で。


「じゃあ、エリーたちはエリザベスの指示に従ってくれ」

「え!? ハー君はどこへ行くの?」

「俺はちょっとやる事があってさ。とはいえ、すぐ近くには居るから」


 若干不安そうな表情を浮かべるエリーを宥め、三人をエリザベスに任せる。

 それから俺は、イロナとワンダを呼び、


「これから、ここに学校の仮校舎を作る。素材は石なんだが、二人の意見を聞きながら作るから、アドバイスをくれないか?」


 植物のプロ――というか、ワンダは樹の妖精なんだが――の二人に意見を求め、石で出来ているけど、重苦しくなり過ぎない学舎を作る事にした。

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