第160話 子供パンツ祭

 二回目となる盗賊たちを王宮へ運んだ後、ちょうど昼飯時という事もあり、一旦街で食事をして仕切り直す事にした。


「という訳で、多めに昼食を買ってきたから皆で食べよう」

「にーに! ごはんー!」

「ハー君! おかえりー!」


 せっかく街に居るので、ユーリヤが暴れていないか心配だった事もあって、エリーの家へ。


「ちょっと、お兄ちゃん。どうして四人でご飯なの? ルミと二人っきりで食事じゃないのー!?」

「ん? ご飯を食べるなら、大勢の方が楽しいだろ?」

「……せっかく、既成事実を作るチャンスだったのに……」


 ルミが何か残念そうにしているが、沢山ご飯を食べたかったのだろうか。

 以前、一緒に洞窟へ行った時は小食だと思っていたのだが、意外だな。

 一先ず、エリーの家へ来る前に露店で買ってきた料理をテーブルに並べ、自分が食べたい物を好きに取るスタイルにしてみた。


「ハー君。はい、どうぞ」

「お、ありがとう。エリー」

「そ、それはルミがやるつもりだったのにぃ」


 俺の正面に座るエリーが取り皿に料理をよそって渡してくれたかと思うと、


「むーむ! むむむー!」

「ユーリヤは、食べるか喋るかどっちかにしような」

「あぁー! ナチュラルにお兄ちゃんの膝の上へ座ったー!」


 口いっぱいにご飯を詰め込んだユーリヤが、幸せそうに笑みを浮かべながら話しかけてくる。

 何を言おうとしているのかは、全く分からないが。


「ハー君! 聞いて聞いてー! ユーリヤちゃん、すっごく可愛いんだよー!」

「にーに! おねーちゃんが、かみのけをかわいくしてくれたのー!」

「くっ……幼女らしさを全面に押し出したサイドテール! しかも可愛いリボン付きっ!」


 言われてみれば、俺の膝に座るユーリヤの髪型がいつもと違う。

 ユーリヤも喜んで居るみたいだし、良かったなとポンポンと頭を撫でてやると、何故かエリーまで嬉しそうにしていた。


「……で、ルミはさっきから、どうしたんだ? 何だか、悲しんだり、怒ったり、悔しがったり」

「だ、だって……」

「また午後も一緒に行動するし、朝は魔法も使っていたし、しっかりご飯を食べて、回復に務めた方が良いぞ。またルミに魔法を使って貰わなければならないかもしれないしな」


 そう言うと、俺の言葉に反応したエリーが、目を輝かせてルミを見る。


「ルミちゃんは、まだ小さいのに魔法が使えるんだー! 凄いねー!」

「あぁ、凄かったぞ。さっきも植物を操って盗賊を捕まえてくれたんだけど、あんな魔法初めて見たし」

「へぇー! 流石だねー! 凄ーい!」


 エリーがルミを凄い凄いと暫く褒めちぎるので、ルミが無い胸を逸らしながら、ちょっと照れている。


「ま、まぁね。あ、あれくらいルミからすれば、大した事ないし」

「ルミちゃんはエルフなんだよね? やっぱり精霊魔法を使うの?」

「そうだよー。土の精霊魔法を介在して、植物を操る事が出来るんだー」

「凄いねー! 精霊魔法で植物を操るなんて、聞いた事がないよー!」

「えへへー。実は、お兄ちゃんと行った洞窟の冒険から帰った後、いろいろと魔法の勉強をしなおしたんだー。勇者の仲間の子孫だしね。もっと強くならなきゃって思って」

「え? ルミちゃんのご先祖様って、勇者様の仲間だったのー? 凄ーい!」


 ……エリーが褒めすぎたからだろうか。ルミが照れを通り越して、若干調子に乗り始めている気がする。

 そろそろ止めておこうかと思った所で隣に座るルミが俺に絡んできた。


「という訳で、お兄ちゃん。こんなに勉強熱心なルミちゃんに、時空魔法を教えてよー」

「却下」

「じゃあ、無詠唱魔法の使い方」

「ダメだ」

「だったら、せめて詠唱短縮方法だけでも。ほらほら、サービスしてあげるからー」


 何をだよ!

 ……って、チラチラスカートを捲るなっ!

 そういうのは、リリヤさんみたく成長してからやってくれよ。

 細く短い手足に平らな胸のルミは、流石にイラストが描かれたお子様パンツではないものの、子供パンツを見せつけて、一体俺に何を求めているのだろうか。

 机でエリーに見えていないのが幸いだが、俺が変態扱いされてしまいそうだ。


「……はぁー」

「ちょっと、お兄ちゃん!? その溜息は何!? どういう意味っ!?」

「いや、別に……」


 とりあえず、ユーリヤも問題無さそうだというのが判ったし、早く食事を終えて黒の森へ行こう。

 そう思って、残りの食事を一気に口に含んだ所で、


「にーに、にーに! みてー!」

「――ッ! ……ゆ、ユーリヤ。変な事は真似し無くて良いからな」


 危うく口に入れた物を噴き出しかけてしまった。

 というのも、俺の膝の上に座るユーリヤが、ルミの真似をして自らのスカートを捲りあげ、見て見てと言ってくる。

 幸い、深い意味はわからずに真似をしているだけだとは思うのが、無言のままジト目でルミを見つめると、


「あ、あはは……ご、ごめんなさい」


 俺の言いたい事がわかったようで、ルミが素直に謝ってきた。

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