第128話 おっぱいは正義

 教会に俺の騎士としての能力を示さなくてはならないのだが、戦闘能力だけではなく、心構えや礼儀、知識なども示さなければならない。

 戦闘能力はともかく、騎士の礼儀や知識を今から超短期間で詰め込もうとしたって、そんなのすぐにボロが出るに決まっている。

 という訳で、それらを全て兼ね備えているジェーンを俺の代わりすれば全てが解決するという訳だ。

 ちなみに騎士という点ではニーナでも良いのだが、正規の騎士であるニーナは顔が割れている可能性があるからな。

 教会にはヘンリー=フォーサイスという名前しか伝わっておらず、俺もジェーンも、どちらの顔も知らないはずだ。


「主様。主様をお助け出来るというのであれば、私が代役となるのも構いませんが、その……私が女に見えないという事でしょうか?」

「いやいや、何を言い出すんだ。ジェーン以上に女の子らしい女の子は、中々居ないだろ。顔は可愛いし、胸も大きい。声だって綺麗で、どこからどう見ても美少女だろ」

「あ、ありがとうございます。そ、その……面と向かって、そこまで言われると恥ずかしいです」


 そう言って、ジェーンが顔を赤らめ、身体をモジモジ動かす。

 しかし、ジェーンは変な心配をするんだな。本当に女の子として見て居なければ、俺がお尻を触る訳が無いだろう。

 流石にこれは、シャロンがすぐ傍に居るので口には出さないが。


「だけど問題は、そのジェーンの女の子らしさの象徴とも言える大きな胸なんだよな」

「す、すみません」

「どうして、そこでジェーンが謝るんだよ。むしろ、胸が大きい事は誇って良い事だろ。おっぱいは正義だ! だから、もちろんシャロンも正義だ!」


 巨乳三銃士の内、ジェーンばかり褒めるのもどうかと思ったので、シャロンの胸も褒めたのだが、何故か微妙な表情を浮かべられてしまった。

 何故だ? おっぱいは正義のはずなのに。


「にーに。ユーリヤはー? せーぎ?」

「も、もちろん。ユーリヤも正義だ」

「わーい! せーぎ、せーぎ」


 その、なんだ。今は何もないけれど、きっとそのうちユーリヤも胸が膨らんでくるだろう。

 まだ可能性があるし、嘘ではない!

 これがソフィアやコートニーだったら、もうあれ以上育たないだろうし、正義とは言えないが。

 しかし、代役にするなら本当はコートニーが適材なんだよな。

 騎士として見られるポイントを全て抑えているだろうし、何よりジェーンと違って胸が無い。

 髪の毛が長いけど、そういう男だって居るし、兜や帽子を被る事も出来るし、対策はいくらでもある。

 だけど、コートニーは確実に先方へ顔バレしているしな。

 胸が無いって点では、ソフィアを連れて来るのも有効なんだけど、そうすると今度は肝心の騎士としての強さで問題が出てしまう。

 やはり、ジェーンの胸をどうするか考えるべきか。


「ジェーンってさ、革鎧を着ているのは見た事があるんだけど、金属の鎧を着ている所を見た覚えがないんだけど、これってニーナと同じ理由なのか?」

「は、はい。恥ずかしながら、胸が入らないです」

「なるほど。だけど革鎧だと、どうしても胸の部分が大きく膨らんでしまう。女性だとバレないようにするには、金属の鎧で胸を隠すしかないんだけど、市販の鎧では大きな胸が入らない……か」


 確か、ニーナとも同じようなやり取りをした気がするな。

 オーダーメイドで金属の鎧を作ろうにも、費用も期間も掛かり過ぎるって。

 ……ん? オーダーメイドか。複雑な物は作れないが、シンプルな物ならオーダーメイドで作れるじゃないか。しかも、今すぐに。


「マテリアライズ」


 具現化魔法を使って、何の装飾もない無骨な金属の鎧を作りだす。


「ジェーン。この鎧は……って、ぶかぶかだな」

「そうですね。ですが、胸は少し引っ掛かりますね」


 適当なサイズで鎧を作りだしたら、男物の服を着て、胸の部分だけがピチピチになっている女性……みたいな事になってしまった。

 というか、この鎧のサイズでも、胸が引っ掛かるのか。


「マテリアライズ」

「マテリアライズ」

「マテリアライズ」


 何度か試行錯誤をして、徐々にサイズは合っていくものの、どうしても違和感が残る。

 代役というのがバレる訳にはいかないのだが、鎧のサイズが微妙に合っていない……という小さな綻びから、何かの気付きになっても困るので、ここはきっちりやっておいた方が良いだろう。


「ジェーン。そこで、俺に背を向けて立ってくれ」

「はい。主様、これで宜しいですか?」

「あぁ……で、今からジェーンの身体のサイズを測るから、動かないでくれ」

「畏まりました。ですが、メジャーなどを使われるのでしたら、前から測った方が宜しくないですか?」

「いや、メジャーなんて無いから、別の方法で測ろうと思うんだ。で、それには後ろ向きの方が良くてさ」


 俺に背を向けたまま、ジェーンが小首を傾げる。

 だが、俺に全てを任せると言わんばかりに、すぐに真っ直ぐ前を向く。

 うん。ジェーンなら、これから俺がする事についても、きっと分かってくれるだろう。


「じゃあ、ジェーン。両手を左右に開いて、肩の高さまで上げたら、そのまま待機」

「はい。出来ました」

「分かった。じゃあ測るからな? 動かないでくれよ?」


 ジェーンに念押した後、頷いたのを確認したので、俺は背後からジェーンの脇の下へ両手を入れる。


「え? 主様!? ……ひゃぅっ!」

「今、測ってるから! あくまで採寸だから!」

「あ、主様ぁ……」


 ジェーンの胸を服の上から鷲掴みにしているけど……超柔らかい。

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