第71話 可愛いパンツ

 昨日と同様に静かに眠り、学校へ行くため少しだけ早めに起床する。

 三人へ今日やっておいて欲しい事を紙に記し、一人で洞窟の出入り口を目指す。


「はぁ。少し進んでは戻って、また進んで戻って……って、面倒臭いな」

『まぁ仕方ありませんよ。それに、万が一街や学院で何かあった場合、すぐ異変に気付けるかもしれないじゃないですか』

「洞窟に入っている時に異変があったら最悪だけどな」


 しかし、早く聖銀を手に入れ、今度はこっちから魔族を探しだして倒すくらいの攻めに転じたいのだが、中々思う通りに進まない。

 暫し歩いて洞窟の入口まで戻ってきたので、早速テレポートの魔法で移動する。


『あれ? ヘンリーさん。学校へ行くんじゃないんですか?』

(いや、その前に例の花について調べようと思って)


 移動した先は寮の自室ではなく、木々に囲まれた小さな家――ルミの家だ。

 コンコンと軽くノックすると、


「はぁーい。どなたー?」


 扉が開き、中から胸の大きな半裸の女性、リリヤさんが現れた。


「あ! 魔術師さん!」

「お久しぶりです。リリヤさん」


 金髪に雪の様に白い肌で、以前来た時は胸の一部しか隠れて居ない、服としての機能を有しているのかどうかも怪しい小さな布を巻いただけの姿だったのだが、今日はエプロン姿だ。

 といっても、普段の服装の上からエプロンを付けているのか、それとも伝説の裸エプロンなのか、普段の格好の露出が多過ぎて判断が付かない。

 このエロエルフさんは、裸エプロンよりも普段着の方が肌を出しているからね。


「もしかして……遊びに来てくれたの?」

「はい……と言いたい所なんですが、今日は違うんです。ちょっとリリヤさんに見て貰いたい物があって」

「うんうん。朝だもんね。じゃあ、ちょっと失礼するね」

「……って、どうして急にしゃがんだんですか!?」

「え? だって魔術士さんが見て欲しいって言ったから。上から見るよりも、目線を合わせて正面から見た方が良いのかなって」


 何を? ナニを見る気だったの?

 というか、朝から人の家の前――野外で何を見せると思ったんだ? エロエルフさーんっ!


「えっと、見て欲しいのはこの赤い花なんです」

「あら、クリムゾンオーキッド……もう、そんな物を持って来なくても、私はいつでもオッケーなのに」

「いやいやいや、ちょっと待ってください。今、何をしようとしました?」

「え? 何って、魔術士さんの……」

「ストップ! そうじゃなくて、クリムゾンオーキッドって言うんですか? この花を見ただけで、エッチな事をしようとしましたよね?」

「だって、そういう花ですもの。だから、わざわざそんな物を用意しなくても、魔術士さんなら私の事を好きにして良いんですよ?」


 そう言いながら、リリヤさんがチラッとエプロンの胸元をはだけて見せる。

 エロエルフさん……中に何も着てなくて、本当に裸エプロンだよ。


「違うんです。今、俺やルミちゃんはこの花が沢山咲いている場所で……」

「えぇっ!? 魔術士さん。ルミにこの花を!? まだ性知識が殆ど無いから、あまり効かないような気がしますけど……うちのルミはどうでした?」

「どうでした? ……じゃないですよっ! 俺はルミちゃんにそんな事はしませんよっ! そうじゃなくて、知りたいのはこの花、クリムゾンオーキッドの効果から身を守りたいんです」

「花粉に、惚れ薬のような効果があると聞いた事があるので、風魔法で防げば良いんじゃないですか? そんな事より、早くしちゃいませんか? あんまり焦らされると、私も切なくなっちゃいます」


 何をだよっ!

 というか、魔法で防ぐって言っても、風魔法が使えない場所だから困っているんだよっ!


「……って、あれ? 何だか、焦げ臭くないですか?」

「あぁっ! 朝食のスープを作っている途中だったのー!」


 慌てた様子のリリヤさんが俺に背を向け、家の中へと戻って行くのだが……お尻が、小さなお尻が丸見えでしたっ! ありがとうございますっ!

 感謝の気持ちはあるけれど、今は学校に行かないといけないので、泣く泣くテレポートで寮へ飛び、着替えを済ませる。

 しかし、スリムでお尻も小さいのに、出る所はしっかり出ていて、更にいろいろと躊躇が無い……流石は人妻エロエルフと言った所だろうか。

 もしも俺が止めなければ、あの後リリヤさんと一体どうなっていたのか。そんな事を考えながら、再びテレポートを使っていつもの魔法訓練室へ。

 そこには、いつもの様にソフィアが居たが、幸い今日は着替えが済んでいるらしい。

 一先ず、理不尽に怒られる事は無さそうだと安堵していると、制服姿のソフィアが突然スカートに手を掛け、


「ほ、ほら……アンタはこれが見たかったんでしょ」


 顔を真っ赤にしながらパンツを見せてきた。


「おぉ、いいね! やっぱりパンツは王道の白だよね! ソフィアに似合っているし、そのワンポイントの小さなリボンも可愛いし」

「こ、この状況で可愛いとか言うなーっ! ……もっと普通に言ってくれたら……」


 何故だ。後半は小声で聞き取れなかったが、パンツが可愛いと褒めたらソフィアに怒られたんだが。


「と、とにかくっ! これで、ウチはちゃんと約束を果たしたんだからねっ!」

「お、おい、ソフィア……」


 顔を真っ赤に染めたソフィアが、スカートを戻して脱兎のごとく教室から逃げて行った。

 ソフィア。約束って、魔法大会で俺が勝利した時の話なんだろうけど……あの時の約束は、いつでもパンツを見る事が出来るっていう話だったからな。これでチャラにはならないぞ?


『ヘンリーさん。勇気を出して、自らパンツを見せてくれたんです。今ので許してあげたらどうですか?』

(いや、無理だ。俺はいつ、いかなる時でも女の子のパンツが見たい!)

『変態ですね』

(だが俺は今日、生尻も良い事に気付いた! 次はソフィアに生尻を賭けて勝負するか)

『絶対に誰もそんな勝負に乗りませんよっ!』


 俺はリリヤさんのおかげで新たな気付きと目標を得たのだが、何故かアオイに猛反対されてしまった。

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