第2章 おちこぼれコースの召喚士
第9話 転科先は基礎魔法コース
魔術師ギルドを逃げるようにして去った後、週末の二日間を使って、錬金ギルドや鍛冶師ギルド、冒険者ギルドなどを巡ってみたものの、特に得られる物は無かった。
それはそれで仕方が無いと諦め、寮の自室で入門用の魔導書を読み続け、翌朝に士官学校の戦闘科……ではなく、魔法科の教員室へ。
転科に伴って簡単な説明をするので、授業前に新たな担任教官を訪れるように言われていたのだ。
「失礼します。今日から魔法科へ転科となったヘンリー=フォーサイスですが、イザベル教官はどちらでしょうか」
「イザベル先生は、あそこに居る赤い髪の女性よ。あと、戦闘科は教官と呼ぶのでしょうが、魔法科では先生と呼ぶように」
「分かりました。ありがとうございます」
魔法科では教官の事を先生と呼ぶのか。意識しないと、暫くは間違えそうだと思いながら、イザベル先生の許へ。
「おはようございます。今日から魔法科へ転科となったヘンリー=フォー……ぉぉぉっ!?」
「あら、どうし……なぁんだ、貴方がヘンリー君だったのね。私はイザベル=トンプソン。ヘンリー君が所属する基礎魔法コースの担任よ。よろしくねっ!」
イザベル先生に挨拶をしに来たはずが、何故か目の前には魔術師ギルドで出会った痛い女性が立って居て……やめてっ! 至近距離でウインクはやめてっ!
「ヘンリー君も大変ねぇ。戦闘科の総合戦闘コースでトップの成績だったんでしょ? それが卒業まで残り半年ちょっとって時に、いきなり魔法科へ転科なんてねー。あ、でも心配しなくて良いからね。時々そういう生徒が居るから、私が担当している基礎魔法コースがあるの。このコースはその名の通り、三年生でも魔法の基礎からしっかりと、生徒の理解度に合わせて授業をしていくから。まぁ流石に召喚魔法は教えられないけど、アドバイスなんかは出来ると思うし、困った事があったら先生が全力でサポートするから安心してね。あと、これからの事なんだけど、直近で魔法……」
――はっ!
あまりにも衝撃が強くて、頭が真っ白になっていた。ウインク一つで何と言う破壊力なんだ。
「あ、あの……召喚魔法が教えて貰えないというのは、先生が精霊使いだからですか?」
「ん? 先生は精霊使いじゃないわよ? あ、魔術師ギルドで会った時の事ね? もー、ヘンリー君。思春期の男の子だから仕方が無いとはいえ、女の子の身体をじろじろと見つめちゃダメよー。まぁ見たい気持ちは分かるけどねー。確か、先生が学生の頃にも、好きな女の子を見たいからって理由で、遠見の魔法の研究に全てを注いでいる男の子が居たけど……先生としては、そんな事をするよりも、先ずはちゃんとお話をして、仲良くなった方が良いと思うのよねー。でも、良いなー。あー、先生ももう一度青春したいなー。そうだ、ヘンリー君って好きな女の子とか居るのかしら? それとも未だ……」
「先生っ! 何の話ですかっ!?」
「あら、ごめんなさい。先生ったら、ついうっかり。話を戻すと、先生は精霊使いでは無いんだけど、精霊魔法を教える事もあるから、時々魔術師ギルドで様々な魔法を勉強しているのよ。というのも、基礎コースに来る生徒は二つのケースがあって、一つは魔法の理解が遅れていて基礎をしっかりやらないといけない場合。それともう一つが、ヘンリー君みたいな召喚士クラスだとか、錬金術士クラスに薬師クラスみたいなレアなクラスになった場合。後者は不人気――こほん。レアな魔法だから、先生の中にも教えられる人が居ないのよ」
……要は、召喚魔法が不人気だから、召喚魔法を教える先生も居ないって事だよね。
この先生、痛い上に話が長いよ。
だけど、精霊魔法がイザベル先生の専門でなくて良かった。学校でもあの格好だったら……いや、やめておこう。思い出したくもない。
「先生。召喚魔法を教える先生が居ないのなら、俺――自分はどうすれば良いんですか?」
「大丈夫よ。基礎魔法コースの中には、他のコースには無い、自由研究時間というのがあるの。その時間は魔導書を基に自分で好きな勉強をして良いのよ。教室には先生だって居るし、他の生徒と一緒に勉強しても良いから、分からない事があったら何でも聞いてね。あ、でも女の子ばっかりのコースだから、不純な動機で一緒に勉強しちゃダメよ? そういう事は放課後にするとか、学校の外でするとか……先生は生徒の恋愛を応援してあげたいんだけど、目にしたら立場上注意しないといけないのよ。はぁ……でも、先生も学生時代にもっと青春しとけばなぁ……」
「ちょ、ちょっと待ってください。女の子ばっかりってどういう事ですか!?」
「その通りの意味よ? そもそも魔法科自体、女の子の方が圧倒的に多いんだもの。あ、でも、神聖魔法コースだけは例外かな。あそこは男女半々って感じだし。でも、神聖魔法だけ男子が多いのはどうしてなんでしょうね。神様が男の子の方が好きなのかしら? あ、変な意味じゃないのよ? その……か、神様の中には女性の神様も居るしね。そう、そういう事なのよ。あははは……」
……この先生、いろんな意味で痛いんだけど。
あと、神様に対して変な事を考えていると、罰が当たるよ?
しかし、召喚魔法は自習なのか。でも、女の子ばっかりだって言っていたし、同級生の女の子と一緒に勉強というのは悪い気がしない。むしろ、嬉しいかも。
「ところで先生。基礎魔法コースに、召喚士クラスの生徒は何人居るんですか?」
「え、えーっと、一人……かな」
「なるほど。じゃあ、その生徒と一緒に召喚魔法の勉強をしていけば良いんですね」
「あー、えっとねー。そういう意味じゃなくて……ヘンリー君一人だけなの。召喚士クラスって」
な……なんだってー!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます