キタキツネ 題名「想いという名の縄」(R15てき)
げぇむ。それはボクの得意なもの。
いかに相手の動きを読んで、どう自分が行動するか。
だから、この『遊び』もげぇむみたいなものかもしれない。
ボクたちのおんせんに、時折遊びに来てくれるヒトがいた。そのヒトはボクとよくげぇむで遊んでくれた。ほとんどボクが勝ってたけど、たまにそのヒトが勝つとすごく嬉しそうに喜んでた。最初に操作を教えるために手を触ったけど、ボクの手と違って太くてごつごつしてて驚いたりもした。
いつからか、そのヒトが勝ったらご褒美にボクの尻尾を触らせるっていうきまり....みたいなものができた。そのヒトは優しく、丁寧にボクの尻尾を撫でたり毛の中に手を入れたりした。
だんだん、そのヒトに触られるとドクドクが早くなったり胸の奥が苦しくなったりした。ギンギツネは病気なのかもって言ってたけど、普段はそんなこと全くないからすごく不思議だった。
こっそり博士たちに相談したら、それは恋なのです、と言われた。
ボクはどうすればいいの、と言った。
博士たちはボクに、いろんなことを教えてくれた。
相手の気の引きつけ方、ボクたちの毛皮の取り外し方。
それと今の身体での交尾の方法。
しかしやるのかどうかはお前次第なのです、と言われた。お前はギンギツネの存在を捨てて本当にそのヒトと一緒になりたいのですか、とも言われた。
ギンギツネには悪いけど、やっぱりボクはあのヒトと一緒になりたい。一人占めして、ずっとボクのことだけを見てほしい。
博士たちはギンギツネに頼みごとをするのをもっと増やす、といった。理由は言われなくてもわかっていた。
しばらく経ったある日、そのヒトはいつものようにおんせんに来てくれた。ボクもいつも通り、げぇむしよ、と言った。
ギンギツネは博士と一緒にお風呂ができるところの雪かきをしにいって、今日は帰るのが遅くなるって言ってた。
そのヒトと一緒にいつも通りげぇむで遊ぶ。
今がチャンスだ。
ボクは喉が渇いたからお水持ってくる、と言って席を立つ。おうちの中にある、おいしいお水が出る場所から「こっぷ」を使ってお水を入れる。
こっぷを持って、そのヒトのところにいく。ヒトにコップを渡す。ありがとう、と言って水を飲み干す様子をじっと見る。そのヒトの首からでてるでっぱりが動くのが少し不思議だった。
ボクも水を飲み、げぇむの続きをする。
何回かげぇむをしていると、そのヒトが眠いから寝ていいか、と聞いてきた。ボクはそこによく使う「べっど」があるよ、というとそのヒトはよろよろと向かって横になったかと思うとすぐ寝息を立て始めた。
【やっぱりだ。眠らせてくるきゃらとおんなじ文字が書いてあるびんの中身は、眠くなるこうかがあった。】
目が覚めた。ゲーム中に不意に眠気がきたから自分はよほど疲れているのか。そういえばキタキツネはどこだろう。自分は体を動かそうとする。
動かない。
いや、動けない。どうやら縄のようなもので四肢を固定されているようだ。
さっきまでしていたゲームの画面しか光を放つ物がなく、周りを見るには少し暗すぎる。キタキツネはどこにいってしまったのか。
「あ、やっと起きた」
キタキツネの声だ。ゲームが置いてある部屋の入り口から聞こえた。とたとたと駆け寄ってくる足音が聞こえる。首を動かして音のする方を見るが、かろうじてキタキツネの影と思わしきものが見えるだけだった。彼女の顔の様子などわかるわけがない。
「キミのその縄....ボクがやったんだ。いきなりこんなことしてごめんね?」
自分は縄がどうこうよりも、自分にこんなことをした理由が聞きたい、と言った。
「それは、その....」
彼女が少しの間無言になる。
自分は彼女に対する気持ちは好意的ではある。しかし、好きかと聞かれると返答には困る。要は好きとは言い切れない気持ちなのだ。第一彼女にはギンギツネという姉がいる。
ベッドがみし、と言ってほんの少し下がる。彼女がベッドにのってきたのだ。
そのまま彼女は自分に馬乗りの状態になる。
「....ボクはキミのことが、好き、なんだ」
ぽつり、と彼女が呟いたのを聞き逃さなかった。うれしさと同時に疑念がよぎる。
好きならばなぜ、自分の手足を縛りつけたのか。
彼女の顔が寄ってくる。近くで見た彼女の顔は美しく、頬を薄く紅色に染めていた。
「キミはボクだけのもの、ずっとここにいてほしい」
そう言って彼女は自分の身体に抱き着いてくる。
未だに自分は彼女の気持ちをよく受け止めきれていない。だったら抱きしめさせてくれないか、と言って自由になることを試みる。
「だめ、ぼくがしゅじんこうだから」
そう言って彼女は口を開け、喉にぴったりと歯を当てる。彼女の息が喉にあたり、全身にぞわりと不思議な感触が駆け巡る。
その時、喉に鋭い痛みが走る。
彼女が自分の首に犬歯を突き立ててきた。
自分は身動きが取れない。彼女に対する抵抗などできやしない。
彼女の牙が皮膚を抉り、にじみ出た血液を吸われる。
「....ぷは」
彼女は血液を吸い取ると口を喉から離した。
「ん、ボクのことしか考えられなくしてあげるね」
そういうと、彼女は腰を自分の腰の上にずらした。お互いの局部が布越しに触れ合う。尻尾が自分の足に絡みつく。
その日、温泉旅館はほんの少しだけ揺れた。
「ふぅ....ただいま、キタキツネ」
「おかえり、ギンギツネ」
「あなた一人じゃ寂しかったでしょう?ごめんね」
「んーん、今日もあのヒトが来てくれたからへいきだったよ。またあそぼっていった」
「またゲームで遊んでたの?まったくもぅ....」
「うん、とっても楽しい『げぇむ』だったよ」
あのヒトはまた来てくれる。必ず。
ボクだけのものってしるしもつけた。
今度は手だけ自由にさせてあげよう。その代わり、もっとしるしをつけよう。
彼はボクだけのもの。誰にも渡さない。いつか、二人だけで一緒に暮らすんだ。
邪魔者のいない、二人だけの空間に彼を閉じ込めたい。
そしていっぱい愛でて、ぼくに虜になってほしい。
これは、彼との関係を壊さずにごーるまでたどりつけるかの
【げぇむ】
だから
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