第6話 居住区域 前編
「ごーぐる……すごい」
「そうだろ?つけといて良かっただろ?」
旅の最中、コウイチたちは砂嵐の中を走っていた
目の前が真っ白な薄茶色、地面の黒色と少し先の建物灰色、それに奇妙な色をした空が今にも降り注ぎそうなほど近く感じた
「いまから、どこいくの?」
がたんとバイクが窪みで跳ね、揺らす、後部座席からいたい、と声がした
「えっと……何処だっけ?特に決めてなかった」
「ひとさがすんじゃ?」とメープルはコウイチの肩を叩いた
ふと砂嵐が開けた、目の前には大量な風力発電の風車がまるで剣山のように一本のアスファルトの道が淡々と続いていた
ところどころ、アスファルトは欠けており、それを見たメープルは顔をしかめていた
「ここ、とおるの?」メープルはなんとも嫌そうな声を出した
「なるべく踏まないようにするよ」コウイチは苦笑をしながらアクセルを開けた
「こういち、あれなに?」
風車の中にひとつだけ大きな影が見えた
それに近づいていく、その道中、窪みを一つ踏み、メープルは少し機嫌が悪くなっていた
だが、その機械を見上げるとメープルはいつものように目を光らせて言った
「おっきい!」
その機械は背中にいっぱいの綺麗な風力発電を名一杯乗せて、ズシリと重い一歩を踏み出しすり抜けるように進む
そして、穴の空いた窪みに風力発電を差し込んでいた
「あれは、きっと、あれだね。風車建てるやつだと思う。」
「みたら、わかる」
メープルは知らないの?という疑問の眼差しを向け、その先の道を見た
凸凹の道の先に建物の森が見えていた。
そして、その近くにこれと同じような機械が見えていた
それには遠目にはこれと同じような風車を乗せているが、どれも遠目でわかるくらい錆びて壊れた風車を乗せていた。
さらにバイクを走らせる。壊れた風車を乗せた機械を通り過ぎると小さな機械が風力発電に黄緑色の電線を何処かへと引っ張って行っていた。
「たくさんいるね。」
一匹だけではない、たくさんいる、わらわらと風力発電機の風車に一匹必ず電線を何処かへと引っ張っていった
そして建物へと近づくとあの大きな機械がたくさん寝ていた、それにさっきの機械が黄緑色の電線を繋げられていた
「こういち、あれなに?」
「たぶん、あれ、は…………」
言葉を詰まらせるコウイチにメープルはコウイチでも知らないことはあるんだという無言の眼差しを向けた
バイクを走らせると、少し先に沢山のシートが折りたたまれて置かれていた
建物の森へとたどり着くと、建物の区域を示す看板には居住区域と書かれていた
「さて、まずは、どこに行こうか?聞いてから回るか?回ってから聞くか?」後部座席にメープルに問いかけるように言った
都市の居住区域には沢山のイミテーターの他に機械も多く、それに応じていろんな機械やイミテーターがいた、居住区は清々しいまで晴れた空に心地よい風が流れ7月だということを忘れそうなくらい過ごしやすい気温
様々なイミテーターと機械が歩き回り、仕事をして
とても活気に満ちた区域だった
だが売っているものは全て模造品。しいて本物はイミテーターの活動用のバッテリーに油がたっぷり入った油指しだけ、それをイミテーターは機械から買っていた。どれも表情一つ声一つ発しなく、賑わっているのに静かで活気があるのに廃れた雰囲気を感じた
「こういち……あれ、たべたい」
「たぶん無理だと思うよ。ほとんどが模造……ひん?」
模造品の屋台の中の一つ、遠くの方だが、煙が一つ上がっていた、それにその方向へと匂いを探ってみると、確かに仄かだが模造品とは違う美味しそうな匂いがした
「よし、行ってみるか。」
コウイチたちはバイクを何一つも止まっていない、ある意味不自然な駐車場にバイクを止め歩き出した
多くのイミテーターがごった返し進む隙間もない
その中をコウイチとメープルは手を確りと掴み逸れないように進んでいた。
やがてイミテーターの海を抜けると匂いが強く感じる空間に出た、そこだけイミテーターの海からぽっかり空いたような空間その屋台には……
「いらっしゃい……おや、人間か?」
甘い懐かしい香りがコウイチの鼻孔をくすぐった
屋台越しに、人間の姿があった。腰は大きく曲がり、髪は白髪。白いエプロンにはベビーカステラと書かれていた。その人間はにっこりと笑うとコウイチたちに言った
「人が、俺以外にもいたのか!お前さんたち!こっちへ来い!」
そのベビーカステラの店主は手を大きく振り、僕らを呼んでいる
「おお来た来た。お前さんたちは、どこから来たんだ?おおよそ研究区域のほうか?適正に選ばれなかったんだろ?俺もなんだ。とはいっても、もう400年近く前になるがな!」
とベビーカステラの店主は大きく口をあけて笑った。
その美味しそうな匂いに釣られるようにメープルは光に群がる蝶のように近づいていきヘビーカステラの店主に聞いた
「これ……なに?」不思議そうに見つめるメープル
「これは、ベビーカステラ。俺っちの一番得意な料理よ!」対して鍛えてもないダルンダルンの二の腕を見てヘビーカステラの店主はドヤ顔をした
その行為を見てかメープルはやや警戒心を露わにしてコウイチの後ろへと隠れると小声でコウイチに食べたいと告げた
「おっといけね。警戒させちまったかな?」
「あなたは誰ですか?」
「そうだな、まず自己紹介だよな。久しぶりに人と会ったから、忘れてた!俺っちの名前は、鳴海修三っていうんだ。鳴海さんでもしゅうぞうでもいいぞ」
「それにしても、この世界で男女二人で旅なんて、400年前に比べれば安全な世界になったものだ」と冗談みたいに言った後に、可愛らしい紙の袋にたっぷりのベビーカステラを詰めるとコウイチに手渡した。
コウイチは2、3個取り口に放り込むとメープルにすぐさま渡した
「鳴海さんは、本当に人なの?」とコウイチは渡すときに見えた機械技師の機械の手に対して不安そうな声を出した
「あ、ああ。一応人だぜ?」機械の手を様々な機械に変え意外と便利なんだぜとそう言った。
美味しそうにベビーカステラを食べるメープルにチラ見した後にコウイチは言った
「人間はどこに行ったの?」
「知らないのか?まだ20年も生きてないって顔してるもんな……人は空にいった」とベビーカステラの鉄板をひっくり返す
「空?」コウイチは空を見上げた。空にはギラギラと輝く太陽が見えていた。
「何年って言ったけな?たしか2000年もしないうちに、この星は火の星に飲み込まれる。とはいっても2000年なんて、寿命300年になっても遠い。安心しろ、2000年は7世代あとだ。そのころにはマザーボードも空を飛ぶイミテーターを創り出しているころだろうよ」
コウイチは鳴海さんの言ってることがよくわからなかったが、何となく理解はできていた。2000年後、この星がそれに浮かぶ火の星に飲み込まれること、不思議と怖くなかった。自分が年々生きるのかわからない。だが2000年は生きてはいないだろう、それはメープルだって同じだ。人間に置いて行かれるようなことはもうない
「あとなんでイミテーターが人間の代わりをしてるのかを知りたい」コウイチは急かすように言った
「人間がこの星から逃げることを決めた日に、全員は乗せることはできなかった。だから、その人に代わる人を作るように、人間は、メトロポリスを制限、管理する。マザーボードに命令をした。そして人は見えなくなった。ただ、それだけだ。戦争や流行病に貧困……それに、捨てられたというショックで人間はあっとゆうまに見えなくなった。そして自分たちが築き上げた都市や文化すら、イミテーター。代わり者になった」
「なんで、全員分作らなかったんだ?」
コウイチはトゲのある口調で言うと鳴海さんはゆっくりと言った
「それをする、時間も人もいなかったんだ」と「遅かったのだ」と悲しそうに言った
しばらくの沈黙が流れた後に鳴海さんがハッとした表情を見せた後、奥の方から二枚の紙切れを手渡してきた。
「そうだ。ずっと前にもらったものがあった。チケットなんだが、ちょうど二枚あるから行ってくるといい」と優しい顔で二枚の紙を渡してきた
それと同時に食べ終えたのかメープルが後ろからチョコチョコと戻ってきてそのチケットを受け取った
ゆっくり眺めた後に読んでと言わんばかりにコウイチへと手渡した。
「スイゾクカン?……まだあるのか?」
「ああ……まだ在ったぞ。行ってくるといい、思い出作りだ、損のないような」と鳴海さんは言うと鉄板から慣れた手つきでベビーカステラを取り出し、また袋に詰めて渡してきた、
「次は、メープル味だ」と渡してくると返事を待たずに後ろへと引っ込んでしまった
「よんだ?」
首を傾げるメープルの頭を撫でた後にベビーカステラを一つ口に放り込みメープルに渡した
とても甘く。優しい味だった
居住区域をバイクで走る。太陽は少しだけ傾き少しだけ過ごしやすい気温にはなったがその分風がなくなり逆に暑く感じた
あの露店道を抜けてしまうと、ほとんどイミテーターも機械も居なくなり静かな居住区域となってしまった
窓には何一つ影すら見えない、普通なら掃除をしている機械すらいない、それほどまるで抜け殻のような空間だなとコウイチは思った
そして少し進むと区域の外で見たあの大きな機械が区域の道路のど真ん中で寝ていた、背中には大きなカバーが掛けられ、解体中の垂れ幕が付いていた
横目にコウイチたちはスイゾクカンを目指した
やがて区域の端っこ、少しだけ外装から離れた場所にある、石造りの未来的で不思議な建物へとやってきた
看板には大きくスイゾクカンと書かれていた
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