第2話 食料区域 前編
灰色と茶色の建物の森の中を一本のアスファルトの道が伸びていた。その道を都市では聞きなれないバイクのエンジン音とラジオから流れるジャズミュージックが木をかき分ける風のように都市に響いていた。
「こういち、あれなに?」コウイチの裾を軽く引っ張りメープルは聞いてきた
コウイチは少しだけ顔をそのメープルの目線の方へと向けるとバイクで過ぎていく景色の中にイミテーターが普段の生活をしていた。
「あれは、イミテーター。人間の真似をして役割を全うしてる機械だよ」どこか活気のある生命の鼓動が止まった都市を見上げ言った。
「こういちにそっくり」メープルはコウイチの背中を触りながら言った。
「似てる?あいつらと、俺が?冗談じゃないよ。イミテーターはイミテーター。人間は人間。決して似ないよ」コウイチは視線を戻し淡々と言った。
「すこい、きになった。なんでにんげんのまね?やくわり?してるの」
照り付ける太陽が綺麗に整備されたアスファルトに反射をしてコウイチの頬に汗を滲ませる。目の前の陽炎と交わるように
頬に当たる風も少しばかりしか心地よくはない、それほど都市は熱気を帯び居ていた。
「知らないよ。俺が生まれる、ずっと前に人間が何かしたんだ。だから機械はイミテーターを作ったって、俺を育ててくれた人は言ってたよ」
コウイチはポケットに入っていた携帯食糧を取り出す。
「メープル?食べるか」二つ入ってる携帯食糧の片っぽをメープルに渡すと「うん」と一つ返事で受け取る
「食べれるのか?」コウイチは聞いた、それをメープルはモグモグという咀嚼音で?マークを浮かべていた
「まぁ……いいや、最初に行くところを決めないと」
コウイチは片方の携帯食糧を口に放り込み口の水分とともに飲み込んだ、道の端にバイクを止め一枚の地図を取り出した。後ろのほうでもゴクリと飲み込む音がする。
「ほとんどまっしろ」
「いいの、今から描いていくからいいの」コウイチは後ろから覗くメープルから隠すように言った
3日かけて通ってきた大きな黄色いと南方向のオレンジ色以外はすべて日に焼けて真っ白になっていた
「まずは、食べ物がないと旅は出来ないからね」
コウイチはバイクについている方位磁石を見るとバイクのアクセルをひねり走り出した
しばらく走っていると太陽が一番高いところでギラギラと輝き、大きなガラス張りのドーム状の建物が陽炎でゆらゆらと揺らめいていた。
そして建物からはたくさんのイミテーターや機械が出入りしていた
「あった。食糧区域の中心。食糧加工施設」
「いいにおい」
ここからまだ遥かに遠いのだがここまで匂いが漂ってくる。
周りの建物と連結し中央にはガラス張りの大きな状のドーム建物、そしてどこからかプシューといった音が鳴り、その建物へと近づけていくと匂いは強く香り鼻孔をくすぐる。
コウイチたちは匂いにつられるように建物に入ると中には照明は見当たらずガラス張りの天井から入る自然光が照らし
はっとするような長い、どこまでも続くと感じさせる電球が付いた少し寂し気な雰囲気漂う通路にそれぞれ小さな看板が付いていた
農業施設、畜産施設、加工施設、搬入施設に処理施設。その中の加工施設からいい匂いが漂ってきた
その中央のカウンターに一人のイミテーターがいた。
「ようこそ、ここは、食糧加工施設です。食料配給なら、右のボタンを、観光が目的なら左のボタンを、押してください」
表情一つ変えない瞬きもしない、イミテーターは言った
「食料をもらいたくて、ざっと3ヵ月分くらい。これ以上は持てないからね」
「わたし、めーぷる」メープルはぺこりと頭をさげた
「わかりました。少々お待ちください」とイミテーターはどこかを向きしばらく動きを止める
メープルはそのイミテーターに近づき一緒に同じ方向を見つめるメープルにコウイチは言った
「別に自己紹介しなくてもいいんだよ。」
「でもコウイチとはした」メープルはコウイチの傍へとよって顔を見つめコウイチの「そうだけど……しても意味ないと思うよ」というとメープルはどうしてという顔を浮かべる
そんな会話をしてるとどこかを見つめていたイミテーターはこちらへと振り向き
「お待ちくださり、ありがとうございます。ただいま確認したところ、2時間近くかかるのですがよろしいですか?」
「いいよ別に、いろいろ見て回るつもりだったし」
「ありがとうございます。ではついでと言ったらなんですが、観光案内役の機械をお呼びします。しばらくお待ちください。」
そういってしばらくすると
「いらっしゃいませ、わたくしは案内役を務めさせていただく、food.00-12です。気軽にフードか12(イチニ)とお呼びください」
四角い白い体にロープのような手足が付いた簡単な人の形を真似たイミテーターとは違うしっかりとした機械の体、それが身振り手振りをして、少しだけ面白い冗談を交えて自己紹介をした
「わたし、めーぷる」メープルはさいどペコリとお辞儀をする
「めーぷるさんですか。よろしくお願いします。そちらのかたは?」
「俺は、コウイチ」という問いにフードはコウイチさんとめーぷるさんですね。覚えましたと軽くお辞儀をした
「会話、できるんだな」とコウイチが問いかけるとフードは振り返り
「はい、私は人間を案内するように作られた機械ですので、都市の維持をするイミテーターとは違います。」フードは自信満々に答える
「さて行きますよ、まずは農業施設です。」と一番端っこの1番目の農業施設の看板をくぐっていく
農業施設の長いどこまでも続きそうな通路に等間隔に置かれた電球が所々切れ暗くなっていた。
「コウイチさんとめーぷるさんはどこから来たのですか?」
「中央区域から、これから人を探す旅をするんだ」
「いいですね。人を見つけたら、是非とも食料区域によってくださいとお伝えになってください」
歩きしばらくたつと大きなガラスから光が入りひときわ明るい場所があった
そこへゆっくりコウイチたちは近づき窓の外を眺めた
窓から金色の絨毯が見えてきた
それは水平線まで続く金色の海。たくさんの金色の植物が大きく実らせ風に揺れ心地よく揺れている。
「知らない間に結構高いところに来てたんだな」
「違いますよ。コウイチさん。地面を掘ったんです。汚染されてない所まで」フードは「たしか12mくらいだったかな?」と付け足した
「ここは、コムギバタケです。人工太陽に人工の風、そのほかの色んな機械によって外と同じように育てられ、安心安全です」
「きれいだね」メープルはキラキラと輝くコムギバタケに目を輝かせていた
「外では作らないのか?」
「ええ、外だと水もそうですが何せ今の太陽がこの植物には適しません。なので部屋の中で育てています。」
コムギバタケは風でゆれ、カサカサと心地よいメロディを奏でている
「これでなに、つくれるの?」めーぷるがべったりと張り付いていた顔を剥がしフードに聞いた
「そうですね。現在残っているは携帯食糧とハンバーガーですから、コムギバタケはこれ、二つに使われます。」
「はんばーがー?」めーぷるはなに?とコウイチの方に顔を向けた
「俺もしらないよ。でも本では読んだことがあるかもしれない。たしか肉をパンで挟んだ奴」
「そうなんだ、おいしい?」とメープルすこしだけ口元によだれを浮かべ聞いてくる
「だから、本で読んだだけだからわからない、でも肉があるなら気になるな、牛ってやつがいるんだろ?」とフードに聞くと
フードはどこかばつの悪そうにそっぽを向いていた
「どうしたの?」メープルがフードの見てる前へと移動する
「いや……それがですね。肉はあるのですが、生き物自体がいないのです。」
「生き物がいなかったら、どうやって肉を取るんだ?」
「それはですね、肉を一から作るのです。簡単に説明しますと」フードはどこからか一枚の紙をだして説明を始めた
「コムギバタケにはタンパク質が微妙ながら存在します。それを細かくなるまで分解して再構築をするんです。」紙で簡単なコムギバタケの絵を描き
それを細かくして肉にしている絵を描いた。コウイチたちはその絵を無言で見てるとフードは声を慌ただしく出した
「で、でも!!味覚機械で肉の味、触感。で肉一致度89%を出せているので味には自身ありますよ。わたくしには、味覚はありませんのでわかりませんが」
「それって肉って呼んでもいいのか?」
「たべてみたい!」メープルは口いっぱいによだれを溜めた
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