マシーンシティ

青白い魚

第1話 旅立ち

 西暦2685年……新和782年……今日は7月……12日……をラジオデブリーがお送りしまっす!


 ノイズまみれの電子ラジオから、カントリーミュージックともに日にちが変わったのを伝えられた、サンサンと太陽が降り注ぐ中、外装が剥がれ、砂が砂岩のようにへばりついたボディを洗っていた。


 磨けば磨くほど、塗装の落ちたボディは、輝くが、年季を感じさせる、砂埃によって付けられた傷はなくならず、そこへ砂が入り銀色のボディは白茶銀のような輝きを見せる。



 中のエンジンを開くと、中からは、どさっと数年間たまっていたであろう、砂が零れ落ちる。エンジンの劣化が激しく部品の代用は効かないみたいだ。


 コウイチは、重い腰をあげ都市にある、工房から顔をだす

 雲一つない灰色の空に、薄茶色の砂埃がまい、それが空の色を、染めていた

 建物には、掃除用機械がへばりつき掃除をしている。だが掃除をしたところから砂埃が付き一体なんのために掃除してるのだろうと聞きたくなる


「今から、取りに行くのか…」

 照り付ける太陽が辺りを照らし蒸しかえるような暑さが渦を巻いていた

 灰色の都市は反射光を容赦なくコウイチに浴びせていた


 コウイチは心を決めるようにため息を吐き、大きな回収用のリョックサックをせよった。 小さいながらも広げれば大きくなる。小さなリョックサック


 エンジンルームが大きく開け広がっている、そんな無防備なバイクを見て言った

「なんでかな。このバイクの持ち主は、なんで、イミテーターの部品なんかバイクに、使ったのだろうか」


 リュックサックを背負い、灰色とアスファルトの黒色、そして壁にへばりついた砂岩に青空、それに多用多種の服装や色をした、イミテーターが我が物顔で歩くマシーンシティへとくりだした


「俺を育ててくれた、人間は言ってた。この都市は人間がいなくなってから、住みやすくなったって」

 コウイチは道を歩くイミテーターに喋った。返事一つしなければ、顔一つ変えない声をかけたが、まるで俺が見えてないみたいに過ぎ去っていった


「やっぱり、人間のほうがいいよ」

 コウイチは唾を吐きかけるように、歩いているイミテーターを、邪魔するようにある場所へと足を進めた


「やっと、ついた……まったく嫌になるよ」

 コウイチが付いた先は大きな工場の廃棄処理所。そこには、ボロボロのイミテーターが動かなくなり横たわっている

「ここにくると、こいつは、人間とは違うって何度も思うよ」

 真っ二つに分かれた側面から、まるで削り取られたように取れた部分、それもどれも得体のしれない機械が見えていた


 コウイチはその場所でバイクの部品になりそうな部品をイミテーターの体から剥がしていた

「こいつらが、人間の代わりだ。なんて、これを作った人間はどうかしてるよ」


 あらかたバイクの部品になりそうな物を集めきり帰ろうとした時だった

 イミテーターの体の体の間から金色の何かが見えていた、廃棄処理所の穴の開いた屋根から一筋の光が、それをより一層目だたさせていた


 コウイチは気になりそのイミテーターをどかしていくとその中にひときわ綺麗なイミテーターがいた。


 それは、錆びれ廃れ、ボロボロな体ばかりの廃棄されたイミテーターの中にまるで砂場に宝石を落としたように目立っている。


 廃棄されたイミテーターのはずなのに傷一つなく汚れもない

 その証拠にイミテーターの白い肌はコウイチの汚れた手で汚れ、慌ててコウイチは汚れた手袋をその場に捨てた


 バイクの部品でいっぱいになったバックを抱え、その新品のイミテーターを背中に背負う


「こんな新品なんだ、きっといい部品が取れるはずだ」

 コウイチはずっと前に一度、ボロボロだが、欠損のないイミテーターを持って帰ったことがあった

 それから取れる部品は面白いほど、全部バイクの一部にだったのかと思うほどぴたりとはまった。


 背負ってみると意外に軽く中身はないのではとコウイチは思った

 工房へと戻るとその新品みたいなイミテーターを横に置きバイクの修理を始める


 取ってきた部品は想像通りに抜け落ちたパズルのピースのようにはまっていく。

「こいつ、使うまででもなかったな」新品同様のイミテーターをちらりとみる。

「服着せた方がいいかな……」

 持ってくるときはどうも思わなかった、その体が、部品にならないと思うと無償なまでに恥ずかしくなった

「とりあえず、服でも着せた方がいいよな……一応、女みたいだし」

 コウイチはソファに転がっている新品イミテーターに綺麗な布をかぶせるとコウイチは二回の居住スペースへと上がる


 そこにはコウイチが寝てるベット以外は埃の被った、コウイチを育ててくれた人が住んでいた所、そこの埃の被ったタンスへと手を伸ばし埃をまき散らす。

 タンスの中にはがさつに入った男性用ばかりだったが、一番上の段には女子用の服が綺麗に落ちたたまれていた。


 そこから、あのイミテーターに似合いそうな服を取り出し、服を新品イミテーターの上へと置いた


コウイチは綺麗になった、バイクをまじまじと眺めフンと鼻を鳴らす

「よし、できた。これでやっと……旅ができる。」

 

 ふと気になり、新品同然のイミテーターをまじまじと見る。

 金糸みたいなキラキラとした金髪に白い肌、新品イミテーターが、気になり手を伸ばすと目が開いた


 音を立てそのイミテーターは、動き始めた。


 コウイチはそれの電源を落とそうと触るが電源ボタンはなく

 そのイミテーターはしゃべり始めた


「アナ……タ、ハ……だれ?」


 綺麗な金髪に吸い込まれそうな綺麗な青い瞳、綺麗な肌に美しいその顔はどこか人に見えコウイチは口を開いた


 コウイチは少し咳き込み喋り始める。

「僕は、コウイチ。」

「こういち?」

 そのイミテーターはまるでコウイチを記憶に刻むみたいにじっと見つめた


「名前を聞いてくる。こいつ故障してるのか?」

 コウイチはイミテーターの制御区域を探す。


 首元の髪を掻き分けるとそこには見知らぬ赤いボタンと挿入口があった


「こういち、くすぐったい」

「感覚もあるのか、どうりで廃棄処理所にあるわけだ」


 コウイチがその首回りを調べながら服を着させていると、後方で大きな音がした。何かが落ちるような音


 他のイミテーターは見向きもしないがその新品同然のイミテーターは驚き戸惑った


「こういち、あれ……なに?」

「驚きもするのか……あれは、もう寿命だったんじゃないか?明日になれば、どこかから、湧き出て、また掃除し始めるよ」


 調べていくと首元に赤いボタンには初期化ボタン。挿入口には電子メモリー挿入口と0001と型番が押されていた


「見たことのない、型番だな、0001か、だいぶ古いな。」

「どうして、あそこにいたんだ?もしかして捨てられたか?」

「すてられた?」

「まぁ……いいや。おかしいよな、あいつらは、人間の真似をしてるのにこんなにも人間らしいのを廃棄するなんて」

「?」人間らしいイミテーターは首を傾げた

「お前は、俺と一緒か」人間みたいなイミテーターの頭を撫でると猫みたいに気持ちよさそうに目を細めた

「まぁ……とりあえず服、着ような」と零れ落ちた被せていた布と落ちた服装の埃を払い、新品イミテーターに受け渡した



 朝になるとその落ちていた機械はなくなり、また別の機械が掃除をしている。


 コウイチは手作りのヘルメットを着用しながら深緑色のコートを羽織りエンジンをかける。

 ブロロロという軽快なエンジン音がうるさく響く

「いまから人間を探しに行くのだけど」とエンジン音に声をかき消されながらコウイチはバイクの後部座席をバンバンと叩いた


 綺麗なイミテーターは無言で頷きコウイチはバイクの後部座席へと乗せあることを思った。


「名がないと不便だ」とコウイチは言った

 少女イミテーターは「なまえ?」と終始わからない様子で首を傾ける


 コウイチはため息をついて「じゃあ、メープルなんてどう?」と

 コウイチが一番好きな携帯食料の味の名前を提案すると、

 新品イミテーター改めメープルは、笑顔で頷いた。


 これも普通のイミテーターはしないことだ

 コウイチは「ずいぶんな人間らしいバグモデルだな」と心でつぶやいた

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