そうだ、学校へ行こう
俺たちは刑事部の隣にある個室に入り、綺麗に並べてある椅子に座った。
「さて、どこから話そうかな。じゃあ先ずは君たちを呼ぶに至った経緯かな?ま、そう硬くならずに聞いておいてくれ。」
「は、はぁ。分かりました。」
「君たちの友達に相田さんっているだろ?話の中心はあの子だ。」
「なんであの子の話が?」
「まぁまぁそのまま聞いておいてくれ。君たちの内、どちらのほうが彼女と過ごした時間が長い?」
「あたしですけど…。」
「そうか。えっと…鷹田さんでいいのかな?君は彼女が小さい頃から友達かい?」
「いえ、大学からですけど。」
「彼女の周りに、君たち以外の、友達の存在を見ていたかい?」
「そんなに社交的な人柄でもないですし、友達はいなかったかもしれないです。」
「じゃあ彼女は何をしている?じゃあ今度は君に聞こうか、青年。」
「うーん、俺は彼女と数日前に出会ったばかりだから彼女のことに関して詳しくはないけど…。大学生だから大学に行って授業を受けている?くらいしかわからないですね。」
「そうか。じゃあこの通知を見てくれ。彼女の大学からだ。」
「ん?これですか?えっと…出席数不十分。進級できない?」
「え、杉田さん、これってどういうことなんです?」
「見ての通りだ。大学から公式に出てるもので、彼女の講義出席数が少なすぎて単位が取れていない。このままだと進級できないっていう通告だな。」
「え?じゃあ今まであの子は何をしていたんです?」
「うーん。それは俺たちでも追い切れていない。正直追い切れていたら君たちをここに呼んではいない。すまん。じゃあ話を戻そうか。彼女の小学生時代を、君たち両方とも知らないと言ったな。ちょっとショッキングなことかもしれないが、聞いてくれる覚悟はあるかい?」
「覚悟って…。心の準備をしておかなければいけないほど酷い内容なんですか?」
「聞く人が聞けばそうかもしれないね。」
「俺は覚悟ってよりかは、俺なんかが聞いていいのかってところに疑問を感じます。」
「それに関しては心配しなくていい。俺がお願いしてるんだ。」
「じゃあ俺は聞きますよ。助けてもらっている身ですし。もし彼女に助けが必要で、自分にできることがあるならやります。」
「そうか。鷹田さんの方はどうだい?」
「そうですね…。隣と一緒の意見です。」
「分かった。じゃあ話そうか。…彼女の母親がもう亡くなっていていることはもう知っているのかな?」
「はい、この間…。」
「そうか…。彼女はね、過去に傷害を犯している。人の腕を切り落としたんだ。」
「…」
「彼女、児童養護施設の女性指導員の右腕を切り落した。彼女は当時10歳だった。彼女が世話になってた児童養護施設にはお昼寝の時間が設けられていたんだ。いつもは彼女も他の子どもたちと同じように昼寝をして、その傍に一人の指導員がいたらしいんだ。でもある日、子供たちの傍で寝かしつけていた先生も一緒に眠ってしまったときがあったらしい。静まり返っていた部屋だったが一人だけ起きていたようだ。その少女は何を思ったか、事前に掃除用具入れに隠していた果物ナイフと金槌を用意して犯行に及んだようだよ。全て本人の口から出た情報だ。」
「え、それって…」
「うん。その不運な女性指導員は、相田さんに肘の骨を折られ、ナイフでえぐるように腕を落とされた。もちろん女性も抵抗したようだが、腕に座られた状態で、尚且つ子供にはあるまじき力で腕を抑えつけられていたらしい。…恐らく精神的なストレスが大きかったんだろう。急に母親を、唯一の肉親を失ったんだ。警察官として同情はするべきではないかもしれんが、なぁ…悔やまれんよな…。」
「そんなことが…。」
「ああ。友人のこんな過去を聞くのはキツイかもしれん。だがもう少し辛抱して聞いてくれ。」
「…」
「続けよう。彼女がそれを起こしてから、彼女は色々な養護施設を転々としていた。彼女は唯一の味方ではないといけない養護施設からも厄介者扱いされていたんだ。当然小学校も短い期間での転校を余儀なくされた。それから数年後、突然、彼女の母親を殺害したと思われる犯人が何者かによって殺害されたんだ。彼女の母親が殺害されて何も仕事をしない警察じゃない。ちゃんと捜査は進めていた。そしてやっと犯人の目星がついたんだ。しかし確固たる証拠が見つからないんだ。目撃者は相田さん本人と、近くを通りかかった近所の女性。それだけしか頼りがなかったんだ。」
「それで、その殺害した犯人は捕まったんですか?」
「いや、まだ捕まっていない。しかし目星はついている。」
「誰なんですか!?」
「相田さんだよ。」
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