魔法少女は元大魔神

振り返ると、そこには佐伯さんがいた。


 「なんだ、佐伯さんかぁびっくりさせないでよー。」


 「まだ会ってから二回目だっていうのに随分馴れ馴れしいですよねぇ。ちょっと嫌ですそれぇ。ところでお二人とも階間違えてませんかぁ?ここ15階ですよぉ?14階って言われませんでしたぁ?」


 「そういえば言われたような…。」


 「ま、あまり関係ないんですけどねぇ。私も後から14階に行って同席しなきゃいけなかったですしぃ。」


 「同席?あぁそういえば佐伯さんがあたしたちを見つけたら声かけるようにしたんですよね?」


 「そうそう。多田さんからだっけぇ?一応お願いはしていたんだけど、いやはや、ホントに連れてきちゃうなんて思ってなかったよぉ。」


 「そういえば、なんで佐伯さん自らが来なかったんだ?わざわざ人に頼むなんてまどろっこしいことしなくてもよかっただろうに。」

 「まぁこれから話すよ。ちょっとバレるとまずいことがあったんだ。」


急にいつもの口調が変わった。やっぱりこの人気味悪いなぁ。本当に警察の人なんだろうかと疑いたくなる。


 

 佐伯さんが荷物を取りに行くと言って、数分その場で待機。その後、彼女と一緒に僕と鷹ちゃんさんは14階に移った。


 「じゃあ二人ともこっちに来てくれるかなぁ?会わせたい人がいるんだぁ。」


 俺は警察に会いたくないがな。


 「あたしは会いたくないんだけどね」ボソッ


 ガチャ


 「失礼しますぅ。えっと、杉田さんって今いらっしゃいますかぁ?」


 「あぁ佐伯ちゃん。杉田飯出ちゃったよ。随分前に出たからそろそろ戻ってくるんじゃないかな?」


 「あ、そうなんですねぇ」


 「ん?あれ?あの人どっかで見たことあるような…?あっ!」


 「どしたの鷹ちゃんさん。」


 「あ、あの、佐伯さん?御用の方はいらっしゃらないんでしょう?あたしたちはここでお暇しても構わないかしら?」


 「えぇ?でももう少しで杉田さん帰ってくると思いますよぉ?もうちょっとお時間駄目ですかぁ?」


 「え、っと…やばぁ、熱出てきたかもしれないわ、ちょっとフラフラしてきたから帰るわねーーヴッ」


 何か理由をつけてこの場を離れようとする鷹ちゃんさんが部屋から出ようと振り返ると、本来あるはずがない壁がそこにあった。いや、肉の壁だった。


 「なんだこんな時間に。陣内、この方たちは?」


 俺や鷹ちゃんさんだって身長が低い方じゃない。街を歩いてれば分かる。けれどそこに立っている男性はそれよりも更に10センチは身長が高いように見える。その強面の男性は何か選別するかのように俺たちはぎょろぎょろ見てきた。


 「おー丁度いいところに帰ってきたね。この人たちは佐伯さんが連れてきたんだよ。」


 「こんばんは。杉田さん。前話した相田さんのご友人たちです。」


 強面の杉田さんの表情が増してきつくなった。


 「相田さんのねぇ。随分展開が早いな。ついこの間その話をしてもらったばかりじゃないか。本人には感づかれてないだろうな?」


 「もちろんですよぉ」


 「お前はホントに分からん奴だ。まぁいいか。」


 「えっと…佐伯さん?あたしたち話についていけてないんだけど…どういうことかしら?」


 「同じく分からん。」


 「ん、それに関しては俺から話そう。奥の部屋でお茶を出す。先に行って待っててくれないか。」


 「は、はぁ。分かりました…。」


 そのまま杉田さんは給湯室の方へ消えていった。


 「あ、そういえばぁ、鷹ちゃんさん?でいいのかなぁ?あなたさっきおかしな感じになってましたけど大丈夫ですかぁ?」


 「もう掘り返さなくていいってばっ!」


 「あっれー?」


 鷹ちゃんさんが静かに驚いた。


 「君、もしかして鷹田くん?」


 「え、え、なんのことでしょうかぁ。分からんですねー。あははは」


 「どしたのさ鷹ちゃんさん。」


 「やっぱ鷹田くんなんじゃないか。ふーん、あの鷹田くんがねぇ…。変わるもんだ。ま、元気にしてて何よりだ。また会えてよかったよ。」


 「はー…。あなたには見られたくなかったんですけどねぇ…。もう遅いんですけど。」


 「えっとぉお二人はどういう関係なんですぅ?」


 「もうここまで来たら言うしかないわね…。黙っててもいずれバレそうだし…。はぁ…。あたしね、昔はゴリゴリのヤンキーだったのよ。」


 「スケバンってやつですかぁ?」


 「違うわよっ!その頃は本当のあたしに気付いてなかっただけ。」


 「で、今はおかまさんをやっているわけか。」


 「もちろん、別にこうなっているのを悪いとは思ってないわよ。でも過去のあたしと比較されるのは小っ恥ずかしいのよ。」


 「ゆうちゃんはこの事知ってるのか?」


 「知るわけないじゃない。あの子とは大学からの付き合いだし。」


 「ほー。そうなのか。」


 「弱み握ったとか思ったら大間違いよ。あなたなんかいつでもけちょんけちょんにでるんですからね!」


 「やべっ顔に出てたか(^^♪」


 杉田さんが給湯室からお盆を持ってきた。


 「おい、佐伯。部署は違えど先輩が茶を汲んでやってんだ。その先輩が言ったことくらいやってくれよ。くっちゃべってないで早く部屋に行くぞ。」


 「はいぃ、すみませんでしたぁ。ほら君たち、早く部屋に移動したっ!」


 「佐伯さんだって楽しそうに話してだろうが。」


 「うるさいね」

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