(・ω・\)運命値!(/・ω・)/ピンチ!


 結局ボーリングの後に鷹ちゃんさんがやりたがっていたバッティングをやった。ヘトヘトになった俺たちはアイス自販機で買った各々の好みのアイスで火照った体を冷やしてから帰路についた。



―バス内―


 「ふうー、今日は遊んだわねぇ。いやー楽しかったわ。」


 「相当お金使っちゃったけどね…」


 「そうね、でも楽しかったでしょ?ゆうちゃんも、あなたも。」


 「俺は楽しかったと思うぞ。」


 「ま、そうだね。あそこまでのお金を出した甲斐はあったかも。ボーリングで夢にまで見たストライク出しちゃったし。ウヘヘ。」


 「そうよ。お金は渋るときは渋って、使うときは使う。そうじゃなきゃ日本経済も回らないし精神衛生上も良くないわ。ま、あたしに限っての話だけどね。」


 

 

 俺たちは街からバスで家(居候先)から最寄りのバス停で降りた。


 「この道って、毎度思うんだけど気味悪いわよね。」


 「街灯が少ないっていうのもあるかもしれないけど、そこの公園の茂みがね…余計に気味悪いよね。なんかあったら鷹ちゃん守ってね?」


 別に彼女が俺に対して助けを求めていないことに嫉妬などない。嫉妬はない。嫉妬はない。


 「そんなゆうちゃんを怖がらすお話を一つしてあげましょう。グヘヘ」


 「やめて」


 ゆうちゃんが本気で嫌がるなか、鷹ちゃんさんは話を続けた。鷹ちゃんさん、ゆうちゃんの顔を見て!殺気って文字が見える!


 「シャーマン殺人鬼って都市伝説があってね。成仏できない死人の恨みや思いを『依頼』という形で受け止めて、現実世界でそれに当てはまる人たちを実際に殺していくの。その人物は黒いマントを着ててー」


 「な、なんだ。あ、あんまり怖くなかった。そんな中二偽善殺人鬼全然怖くないし。」


 ガサガサ


 「ヒェッ!何!?」


 俺たちの目の前を黒い動物が横切っていった。


 「なんだ只の猫じゃないか。ゆうちゃん、鷹ちゃんさんの話聞いて怖がってるんじゃないのか?グヘヘ」


 「違いますってば!」


 『ソコノ人タチ待ッテ。特ニ女ト男。』


 突如背後からピッチが高めの男性の声が聞こえ、それに驚いて少し体がビクついた。

 

 俺たち三人は恐る恐る後ろを振り向いた。


 「え、あたし?」


 鷹ちゃんさんの言葉に対して返事はなかった。


 目の前に立っている黒いマントで身を包んだ男の顔は見えない。


 『男ト女。アナタラア運命値ガ駄目。日頃ノ行いガ駄目ダカラ。』


 「え、何この人…二人とも行こ?」


 見るからに怪しい人物を前にして俺たちは少しどころじゃなくたじろいだ。


 「すまんが俺たち急いでるんだ。変なことするなら警察呼ぶぞ?ゆうちゃんか鷹ちゃんさん、用意しておいて。」


 「わ、わかった、あたしがやるわ。」


 『オトコンナハソノママ。値ガ低イ二人ハモウ駄目。ココデ消エルガ一番。』


 「おとこんなって何よ!?」


 『モウッ!女!ア”ア”ア”駄目!痛イ!ナンデ!ヤメロ!運命値ガ0ハヤハリ惡!死!死!』


 目の前にいる謎の男性は急に奇声を上げ始めた。


 『…』


 と思ったら、ロボットのスイッチが切れたように、急に彼の体全体の力が無くなったように見えた。


 次の瞬間、俺たち三人は固まった。彼が小刀を脇から取り出して走り出してきたからだ。人間は予想だにしていないことが起こるとここまで動くことができないのかと思い知らされた。


 「ま、待って待って!!」


 鷹ちゃんさんは叫び、ゆうちゃんは目を閉じて丸くなり、俺は立ち竦む。


 転生してすぐ死ぬなんて俺は相当運が悪いのかもしれん。


 ウーーーーー


 突然どこからかサイレンが鳴りだした。


 『邪魔ナノハコノ後困ル。マタ今度!』


そう言い残してマントの男は公園の茂みの方へ走り去っていった。


 ブーンキキッ


 先程から住宅街に鳴り響いていたサイレンの音は消え、パトカーから女の人が出てきた。


 「あなた方大丈夫ですかぁ?怪我はないですぅ?」


 彼女はニタニタしている。


 「俺たちは大丈夫。あなたは?」


 「なんか偉そうな青年だねぇ。私は地域課の佐伯ですぅ。よろしくお願いしますぅ。」


 「け、警察の人。さ、さっきのは一体何なんですか?あたしもう怖くって…。」


 「最近ここらで事件を頻発させまくっている犯人なんだぁ。マント被っててわかりやすいでしょぉ?」


 「じゃあ犯罪者ってことか?」


 「小刀持ってるの見てなかったんですかぁ?その時点で察しはつきませんかねぇ?」


そりゃそうだ。なに頓珍漢な質問してんだ俺は。それにしてもこの佐伯とかいう警察ムカつく話し方しやがる。


 「それよりそこの少女、震えてるけど大丈夫かなぁ?」


 「え、はい。大丈夫です…」


 「あんなの目の前にしたらそりゃ怖いわよね。可哀そうに…ついでにあたしも。」


 いや、撃退できるだろ。その筋肉なら。


 「俺たちこの近くに住んでるんだ。あんなのが頻繁に出てきて来られちゃ安心して日々を暮らせない。もう少し詳細を教えてくれ。」


 「うーん、教えちゃったらもっと安心できなくなっちゃうだろうから教えませんよぉ。家まで送ってあげますからちゃっちゃと車乗ってくださいぃ。」


 「ええ!教えてくれないんですか?怖いじゃない!?」


 「教えてあげられませんねぇ。教えたら私が偉い人たちに怒られちゃいますからぁ。」


 それより先は、その佐伯さんからは何も教えてもらえず、俺たちは車に乗るように諭されて乗らざるを得なかった。ゆうちゃんが怖さからか震えが止まらない様子だったしやむを得ない。あそこでごねったっていいことはなかったはず、と今は思っておきたい。

 

 佐伯さんに、俺たちが住む家まで送ってもらった。


彼女は最初から最後まで常時ニタニタしたままで、できれば今後は関わりたくないと思ってしまう程不気味な人だった。

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