《 行動監視 》 4

               4


 八月十四日 午後九時二十分


 二人の男性が乗る宇都宮ナンバーの車が、北関東道にある、パーキングエリアの出流原にはいった。

 続けて尾行していた、酒田巡査部長の覆面パトカーもはいった。


 二人は、トイレに行って、缶コーヒーを買って、テーブル席に座って、談笑していた


 そこに、警察手帳を提示して、酒田巡査部長と永井巡査が声をかけた

「おくつろぎのところ、すみません。」

「なんですか?」

 と、すこし怪訝な顔をして答えた。


「座っていいですか?」

 と、酒田巡査部長は、言った。

「あぁ。」

 と、短く返事をした。


 そして、二人の刑事は席に着いた。



 酒田巡査部長は、こう話をはじめた

「今日。一日『エアー・シューティング赤城』で、サバイバルゲームを楽しんでいましたよね。」

「そうだけど。それが。」


「その時の様子を教えて欲しいと思って、声をかけました。」

「なにを。」


「ゲームが終わって、温泉に立ち寄った6人って、昔からのご友人ですか?」

「いや、今日知り合ったよな。」

「そうだね。チームが一緒で、なんとなく意気投合して、温泉に行った。」

 と、もう一人の男性が、答えた。


 酒田巡査部長は、つづけて

「全員のお名前ご存知ですか?」

「そういえば、知らないな。LINEの交換もしなかったね。」


「温泉にも行ったのに?」

「あ、そうだね。そういえば、いつもなら一人くらいは交換するけど、今回は誰一人としなかったよ。」

「僕もしなかったよ。」


「そういう雰囲気じゃなかった。」

「いや、温泉にも一緒に行った人がリーダーシップをとってくれて、ものすごく楽しくて、2ゲームやったけど。心身ともにいい疲れが心地よくて、皆で笑って、敵を撃って、あっという間の一日だったよ。だから、名前なんか知らなくても、話しが盛り上がってね。」

「そういえば、そうだった。いままでにないくらい、充実していた。」


「ちなみに、そのリーダーシップをとっていた人って、この人ですか?」

 と、酒田巡査部長は、坂口浩介の写真を二人に見せた。


「そうそう、この人。」

「あー、この人だよ。」

 と、二人は口を揃えて、答えた。


「そんなに、盛り上がっていた。」

「そうそう、ガンの話から、フィールド内の動き方から、サバイバルゲームの極意なんかも教えてくれて。」

「そうなんだけど、あの人、このフィールドはじめてって、言っていたよ。」

「そうだっけ。」

「そうだよ。なのに、これだけのレクチャーをするなんて、すごいなと思ったよ。」


「ゲームには勝てた。」

「そう、2ゲームともに勝ったね。1ゲームの開始頃には、チームを掌握していたんじゃないかな。」

「そういえば、そうだったかも。」


「それは、どういう感じで。」

「動きの指示が的確で、無駄がなかったね。彼自身も、率先して撃ちまくっていたよ。だから、僕もチームとして撃ちまくった。」

 と、言って、笑った。

「無駄がないと言えば、ゲーム中の話し方も、言葉数も無駄がなかったかも。やっていたときには感じなかったけど、いま思えば、そう感じた。」


「もうすこし詳しく教えてもらっていい?」

「手で合図をして、動きを決めていたんだけど。片手の5本の指だけで、5個の合図だけ決めて、でもそれで十分だったんだよ。」

「そうだった。5個の合図で、でも、個々のメンバーに5本の指で的確に指示をして、それに合わせて動いて、相手を倒した。」


「でも、皆楽しめた?」

「そうなんだよ。休み時間は、やっぱり知識が豊富だから、質問したり、誰かの銃を見て、特徴の話をしたり。」

「そう、だから皆、彼の虜になったというか。彼のいうことなら、間違いない。そんな感じ。」


「それで、勝てた。」

「1ゲームで結果出たからね。」

「そうそう、魔法にかけられていたかな。」

 と、二人は、笑った。


 酒田巡査部長は、本題にはいった

「銃の改造とかという話はあった?」

「モデルガンの改造?」


「そうなんだけど。」

「そんな話はでなかったよ。」

「なかった。なんでそんな話になるんだ。」


「いま、改造モデルガンが出回っていて、こういうフィールドで、売買されている可能性があるという話が出てきたんで、聞いてみたよ。」

「そんな話は、ないよ。」

「そんな話をする暇さえなかったくらいに、彼の話も面白くて、なにより相手を倒すという意気込みで、皆でワイワイしていたよ。だから、今日は充実してたよ。」


 酒田巡査部長は

  二人に名前と住所・連絡先を聞いた

  梶谷輝也 栃木県宇都宮市

  多田善治 栃木県宇都宮市


 酒田巡査部長は最後に

「君たちを疑っている訳ではないんだけど。モデルガンの改造は、殺人事件にまで発展する可能性がある、だから犯人に気づかれて捨てられて、他の人が拾って使われてしまったらと最悪な事も考えられるので、この話は口外しないでほしい。早いタイミングで、犯人を特定して捕まえるから、協力してほしい。」

 と、お願いをした。

「まだ、特定していないんだ。」

「そう、だからいろいろな話を聞いてみた。お願いできるかな。」

「わかったよ。」

「そうするよ。」

 と、二人は、答えた。


 酒田巡査部長は、二人に気をつけて帰るように伝えて、お礼を言って覆面パトカーに戻った。




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