《 行動監視 》 1

               1


 八月十三日 午前七時



「坂口浩介が

    アパートの部屋から出てきました。」


 無線で、水月巡査が、出てきたことを一斉に知らせた。



 水月巡査が、追加で伝えてきた

「現在、部屋から自家用車に荷物を運びだしています。」

「何を運びだしているんだ。」

 と、田辺警部は、聞いた。


「ハードタイプのライフルケースが一つに、アタッシュケースが一つ。服などがはいりそうなボストンバックが一つです。それから、ブーツが一足です。」

「服装は、どんな感じですか?」

「はい、いたって普通な感じです。Tシャツに、デニムです。靴はスニーカーです。」

「水月巡査と藤田巡査は、張り込みを続けてください。その他の捜査員は、坂口浩介を尾行してください。」

 と、田辺警部は、指示をした。


 坂口のアパートを張っていた

  安田大輔警部補・工藤博一巡査部長

  新城泰治巡査部長・佐賀洋子巡査部長

 の二台と、


 捜査本部で待機をしていた

  酒田新平巡査部長・永井淳也巡査

  計三台の、覆面パトカーで尾行を開始した。




 尾行している工藤巡査部長が、無線で伝えてきた

「坂口浩介の車は、県道45号線を藤沢市の用田方面に向かっています。」


「新用田辻の交差点を右折しました。つづけて用田橋際交差点を右折して、県道43号線にはりました。」


「このまま、まっすぐ行けば、圏央道の海老名インターチェンジの入口です。」


「圏央道にはいりました。中央道方面外回りに乗りました。」


 無線を聞いていた永井巡査は

「県央厚木インターチェンジから圏央道に乗って合流します。」

 と、伝えてきた。



 永井巡査から

「現在、最後尾につきました。」

 と、追加の連絡が、はいった。


 工藤巡査部長が、無線で伝えてきた

「圏央道の日の出インターチェンジを出ます。」


「日の出インターチェンジを出て、右折しました。」


「国道411号線と交差する瀬戸岡交差点を左折しました。青梅方面です。」


 田辺警部は、無線で

「坂口の実家までは、一本道だから。気づかれないように、細心の注意をはらって尾行をつづけてください。」

 と、伝えてきた。これを最後に、無線の電波が入らなくなった。



 同日 午前九時三十分



 坂口の車は実家に到着した。お盆休みとはいえ朝の早い時間。比較的、道は空いていた



 坂口の実家は、国道411号線からはいった都道を、清流沿いに遡って周辺は森に囲まれている場所にあった。

 一度実家に訪れていた、捜査第一課11係係長の下条警部から、こんな報告があがっていた。一本道のため、部外者が通るような場所ではない。ただ、登山者であれば通る可能性はある。実家の先約2kmに、登山口があって、それまでの間にいくつかの駐車スペースがあるという報告を受けていた。


 安田警部補は、永井巡査に覆面パトカーから降りるように指示をして、自らも覆面パトカーを降り、工藤巡査部長に運転を任せて、駐車スペースで待機するように指示をした。



 二人は、坂口の動向の監視をはじめた。


 実家には、坂口が所有しているもう一台の自家用車、ケーラが家の裏側に置かれていた。



 同日 午後一時



 坂口浩介が、実家から出てきた。

 坂口は、チェスターで持ってきたライフルケース類をケーラに移しはじめた。

それをみた安田警部補は、無線でこう指示をした

「坂口が動き出す。新城君は、先に動き出して、国道411号線手前にある駐車場で待機してください。」

 と、告げた。


 新城巡査部長が運転する覆面パトカーが、実家の前を通過して行った。



 同日 午後一時四十分



 坂口浩介は、ケーラを運転して実家を出発した。



 安田警部補は、無線で

「坂口が、実家を出た。迎えに来てほしい。それから、新城君、見失わないでね。」

 と、伝えた。

「了解しました。」

 と、助手席に座っている佐賀巡査部長が、無線で答えた。


 工藤巡査部長と酒田巡査部長が運転する覆面パトカーが迎えにきた



 佐賀巡査部長が、逐一無線で状況を知らせていた。

「まだ、坂口が乗っているケーラは通過していません。」


 安田警部補は、捜査本部にいる田辺警部に電話で坂口浩介が、実家を出発したことを連絡した。


 佐賀巡査部長は

「坂口浩介のケーラが通り過ぎました。尾行を開始します。国道411号線を左折しました。さっき来た方向を戻っています。」

 と、伝えてきた。


「行きに左折して国道411号線にはいった古里駅前交差点はまっすぐ、瑞穂・青梅方面に走行しています。」


「まだ、追いついていないから、逐一報告を頼みます。」

 安田警部補は、無線で、伝えた。

「了解しました。」

 と、佐賀巡査部長は、答えた。


「現在、川井交差点を通過しました。まっすぐ青梅方面に向かっています。」

 と、佐賀巡査部長が、追加情報を送ってきた。




 新城巡査部長が運転する覆面パトカーが、御嶽駅前交差点に差しかかろうした時、無線がはいった。

「うしろについた。新城君は広い所で止まって、酒田君の覆面パトカーを先に行かせるから。」

 と、指示をした。


 軍畑駅の手前にあった広いスペースに新城巡査部長の運転する覆面パトカーが滑り込んだ。それをみた二台の覆面パトカーが通り過ぎて行った。

そして酒田巡査部長が運転する覆面パトカーが、坂口浩介が運転するケーラを尾行した。



 しばらくして、坂口の運転するケーラは、圏央道の青梅インターチェンジから関越道方面外回りに乗った。


 

 時間は、午後三時を過ぎていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る