《 第三回合同捜査会議 》 5

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 八月十二日 午後二時三十分


 新城巡査部長からの連絡を受けた、捜査第一課10係係長の田辺警部は、坂口浩介の行動監視をしている、永井巡査に連絡をとった

「新城から連絡がはいって、坂口浩介にはもう一台所有する車がある。その車の所在を確認してくれ。詳細はデータで送る。」





 しばらくして、永井巡査から田辺警部に連絡がはいった

「データで送ってもらった坂口浩介所有のケーラですが。アパート周辺を探しましたが、見つかりませんでした。」


「坂口浩介は、いまアパートにいるのですか?」

「はい。昨日から外出していません。ですので、部屋にいます。」


「部屋いるかどうか、あらためて確認をしてください。」

 と、伝えて電話を切った。


 田辺警部は、出版社で話を聞いて戻ってきた、10係の安田警部補と大和北署の佐賀巡査部長に、奥多摩に行くように指示をした

「坂口浩介の実家に行って、ケーラの所在を確認してほしい。」



 同日 午後三時三十分



 坂口浩介が、アパートから出てきた。

坂口は、チェスターに乗って出かけようとしていた。


 覆面パトカーで待機をしている、

大和北署の工藤巡査部長に、永井巡査は無線で連絡をした

「坂口浩介が、車に乗って出かける。」

「了解しました。すぐにそちらに向かいます。」


 永井巡査は、10係の水月巡査と大和北署の藤田巡査にアパートで待機するように指示をして、工藤巡査部長が運転する覆面パトカーに乗って、坂口浩介の追跡を開始した。

 無線を聞いた田辺警部は捜査本部で待機をしている、10係の酒田巡査部長に合流するように指示をした。


 坂口の実家に向かっている10係の安田警部補と大和北署の佐賀巡査部長に、連絡をいれた

「坂口浩介が、動きはじめた。すぐに酒田巡査部長に合流してほしい。」



その後逐一、無線で状況を知らせてきた

「現在、坂口の車は、国道246号線に出て、厚木方面に向かっています。」

「了解した。酒田巡査部長と安田警部補にも覆面パトカーで尾行するように指示をしている。もう少し詳細を教えてほしい。」

「了解しました。現在、国道246号線を厚木方面に走っています。金田陸橋を側道に入りました。国道129号線を相模原方面に向かいそうです。」


 酒田巡査部長から

「永井巡査が乗っている覆面パトカーの後ろにつきました。」

 という、無線連絡が、はいった。


「二台で尾行をしてください。くれぐれも、気づかれないようにお願いするよ。」

 と、田辺警部は、無線で指示をした。


「現在、国道129号線から県道511号線に移り、相模川沿いを走っています。」

 と、無線で報告が、はいった。


 田辺警部は、永井巡査に電話連絡をいれた

「坂口浩介がアパートを出たときの状況を教えてほしい。」

「はい、木箱を持ってアパートから出てきました。」


「それだけですか?」

「はいそうです。」


「どの位の大きさの木箱ですか?」

「両手で持って余る程の大きさです。」


「どこで、何をするか判らない細心の注意をはらって、動向を監視してください。」

 と、田辺警部は、指示をした。



 田辺警部は、電話を切ったあと、木箱のことを考えていた。銃弾なのだろうか。もし、そうだとすると、これから行く場所で弾を装填するのだろうか。


 無線がはいった

「坂口の車は、相模川に架かる高田橋の袂にある広い敷地に入りました。」

 と、永井巡査は、告げてきた。

 それを聞いた、安田警部補は

「現在、圏央道の相模原愛川ICを出たところです。高田橋に向かいます。」



 同日 午後四時三十分



 八月十二日。お盆休みが、はじまったこの日、高田橋の袂には、バーベキューや川で遊ぶ家族連れや大学生のサークルだろうか、若者のグループが多く楽しんでいた。ただ、この時間になると、日も陰りはじめ、帰り支度をするグループが多くみられた。坂口浩介が、この敷地に入ってきたことを気にする人は、一人もいなかった。そして車は、ひと気のいない方向へ走って行った。


 追跡をしていた三台の覆面パトカーは一度止まり、体制を整えることにした。


 安田警部補は、無線を使って指示をした

「このまま3台が並ぶのは、目立つことになる。一旦その場で止まってください。」

「了解しました。」

「いま、酒田巡査部長の乗っている車に、佐賀巡査部長に行かせます。二人でカップルを装って、坂口浩介の車が見られる場所まで行って監視してください。」

「了解しました。」


 佐賀巡査部長は、酒田巡査部長が乗っている車まで歩いて行った。そのまま坂口の車を追いかけていった。

 安田警部補は、工藤巡査部長と永井巡査に車で待機をするように指示をして、安田自身は、釣り人を装い坂口の車がいる場所まで歩いていった。


 坂口浩介が運転するチェスターは、釣りができる大きな池の前に運転席が見られないように止まっていた。

 運転席に本人が乗っているかどうかは、カップルを装って監視している、酒田と佐賀でも判らなかった。

 そんな中、安田警部補が釣竿片手に現れた。その恰好は、いかにも釣り師というなりに、二人は吹いてしまった。


「坂口は、運転席にいるよ。」

 と、無線で連絡をしてきた。

 そして、安田警部補は、二人に指示をした

「カップルを装って、歩きながら池の対岸まで歩いていき、監視して。」

「わかりました。」


 対岸に辿りついたのを確認した安田警部補は、その場を離れた。



 酒田巡査部長から無線連絡がはいった

「坂口が、車から降りてきました。」

 つづけて

「いま、運転席側のドアミラーのカバー外しています。そして、木箱から何かを出して外したドアミラーのカバーに取り付けています。」


「映像は、撮っていますか?」

 と、安田警部補が、聞いてきた。

「はい、佐賀巡査部長が、撮っています。」

 と、酒田巡査部長は、答えた。


「運転席側のドアミラーのカバーを、元に戻しました。」

「つづいて、助手席側のドアミラーのカバーを外しました。同じく木箱からものを出して、取り付けをしました。」


 その報告に、田辺警部は

「取り付けたのは、一回だけですか?」

「はい。何かを一回だけ取り付けました。」

 と、酒田巡査部長は、答えた。


 一連の取り付け作業が終わった坂口浩介は、運転席に戻った。


「いま、坂口が運転席に戻りました。」

 という報告を受けて、安田警部補は走って覆面パトカーに戻った。


 安田警部補は、次の通り指示をした

「酒田巡査部長と佐賀巡査部長は、撮影した映像を捜査本部までお願いします。あとは、二台で尾行してください。」

「了解しました。」


 カップルを装った二人は、ゆっくり歩きながら、その場を離れ覆面パトカーに戻った。




 銃弾を装填したということだとしたら、この時間から、いつでも誰かを殺すことができるということになる。毎週起きている一週間まで、あと五日。でも、気になった交通違反を見つけたら、犯行を犯すことになるのだろうか




 坂口浩介の車が、動きはじめた

「尾行します。」

 と、無線連絡が、はいった。


「坂口の車は、さっききた道とは逆の方向に出ていきました。相模原市街方面です。」

「国道129号線を、厚木方面に右折しました。」

「金田陸橋を、国道246号線渋谷方面に左折しました。」

「午後七時五十分アパートに戻りました。」

 という、無線連絡だった。


 無線を聞いていた田辺警部は、ちょっと拍子抜けな感じを覚えたが、何もなかったことに、安堵した。

アパートで監視をしている水月巡査と藤田巡査には、そのまま続けるように指示をして、他の捜査員は、捜査本部に戻るように指示をした。




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