第4話 思い出の女性
「思い出の場所?」
わからなかった。
ここは、出来て間もない。
「まだ、わかりませんか?幸喜さん」
「アリス・・・さん?」
アリスが、声をかけてきた。
「そうですね。『与えた恩は忘れなさい』
私も、そう教え込まれました」
「僕は、本当に・・・」
アリスさんは、ため息をついた。
「じゃあ、これを見せたら思い出してくれますか?」
そういうとアリスさんは、鞄からぬいぐるみを出した。
古ぼけたぬいぐるみ・・・
それを、見た瞬間、僕ははっきりと思い出した。
「あっ、あの時の迷子の女の子」
「そうです。思い出してくれましたか?」
アリスさんは、満面の笑みになった。
今から、10年ほど前に、ここはまだ空き地だった。
そこに、ひとりの女の子が泣いていた。
どうやら、迷子のようだった。
≪えーん。えーん≫
≪お嬢ちゃん、どうしたの?迷子≫
その子は、泣きながら頷いた。
≪パパや、ママは、どうしたの?≫
≪いないの・・・まなが小さい時に、天国に・・・≫
≪そっか、ごめんね・・・≫
少しの間、その子とお話をした。
たいしたことはしていない。
でも、だんだんと泣きやんでくれた。
そこへ、1人の女性がやってきた。
まなちゃんと、何か話をしている。
しばらくすると、こちらへ来た。
≪この度は、まなちゃんが、お世話になり、ありがとうございます≫
≪いえ、たいしたことは・・・≫
話を聞くと、その女性は孤児院の院長さんで、まなちゃんを預かってるとのこと。
孤児院のみんなで海に来たが、眼をはなしてすきに、はぐれたとのことだ。
≪それでは、僕はこれで。まなちゃん、迷子になっちゃだめだよ≫
すると、まなちゃんは、僕の袖を引っ張る。
離れたくないようだ。
困った・・・そうだ・・・
≪じゃあ、お兄ちゃんが、お友達あげるからね≫
そういって僕は、自分のオリジナルのキャラのぬいぐるみをあげた。
まなちゃんは、抱きしめて喜んでいた・・・
「あの時の、まなちゃん・・・いや、アリスさんですか・・・
大きくなったね」
「あの時は、本当にありがとうございました。私は、忘れた事はありません」
「でも、よく僕の名前がわかったね」
「だって・・・」
「だって?」
アリスさんは、ぬいぐるみを見せる、
「タグと台紙に、名前が書いてあります」
うかつだった・・・
「私のアリスは、不思議の国のアリスから、取りました。
福山は、出身地です。」
「ああ、僕は・・・」
アリスさんは、唇に手をやる。
「今度は、私が御恩返しをする番です」
「何をするの?」
「女の子から、言わせないで下さい。独身ですよね?」
数か月後、僕に守るべき人が、出来た。
アリス 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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