第2話愛してるって言ったのはどっち?

たいちと付き合って、楽しいことはいっぱいあって、あたしはそれなりに充実した毎日を過ごしていた。

たいちからのLINEは毎日来て、内容もくだらないものばかりで、それでもあたしは、嬉しかった。

普通の人のように恋をして、普通の高校生をしている。

あたしは・・・病気があった。

誰にも言えない秘密の病気。

精神病だ。

パーソナリティ障害だ。

人格や正確に問題がある人を指す。

加えて解離性同一性障害。

自分の意識とは関係なく、違う場所にいたり、記憶が飛んだり、突然意識が飛んだりする。

何故こうなったのかは、まだ・・・誰にも言えないし言いたくなかった。

薬は今も飲んでいる。

安定剤、数種類、睡眠薬2種類、きちんと管理するために、仕切りのついた小さなパッケージに入れている。

たいちと一緒にいる時は隠れて飲んでいた。

もしバレてもサプリと偽るつもりでいた。

だけど、嘘はそうそう続くものじゃない。

それにたいちは優しかった。

あたしが泣いたり、怒ったりしても、いつも

ハイハイって困ったように笑っていた。

そしていつも言ってた。

「ごめんな・・・愛してるよ」

愛してる。

あたしが1番求めていた言葉だった。

誰にも認めてくれはしなかった孤独なあたしが望んで欲しがった言葉。

だから、あたしは決意したんだ。

この人なら・・・この人なら・・・きっとだいじょうぶだって。

学校帰り、あたしはいつものようにたいちの家へお邪魔する。

両親共出掛けているらしく、あたしとたいちだけだった。

きちんと掃除された部屋。

カーテンもパリッとしていて清潔感に溢れていた。

モノトーンで統一された部屋には、所々に観葉植物が置いてあった。

お母さんの趣味なのか花も生けてある。

あたしの家庭には無いものばかりで、あたしが欲しいものばかりだった。

「凪・・・俺の部屋行こ・・・リビングじゃ暑いだろ・・・」

いや、逆に冷え冷えしていていいのだけれど・・・。

まぁたいちの家だし。

「ん・・・綺麗なお家だね・・・何か羨ましい」

たいちはスンッと鼻を鳴らした。

照れている時のたいちの癖だ。

たいちの部屋はいかにも男子高校生って感じのする部屋だった。

机とベッドはかろうじて綺麗に保たれていた。

クスッと笑ってしまいそうになるのをあたしは堪えた。

2人で買ってきたジュースを片手にあたし達は話し込んだ。

「てかさ、俺ら入学して初めての体育祭じゃね?俺めっちゃ楽しみ〜」

何も知らないたいちは無邪気に笑う。

「・・・そうだね・・・あたしも楽しみだよ」

いつ言おうか。

タイミングが掴めない。

イライラする。

その時たいちがスっとあたしの手を掴んで引き寄せた。

たいちとあたしの唇が見事に重なった。

たいちが飲んだのはファンタのオレンジ。

あたしが飲んだのはグレープジュース。

たいちの唇はひんやりとしていて、甘い味がした。

抵抗する気もなく、あたしはされるがまま。

そのまま押し倒され、プチップチッと制服のブラウスのボタンが外される音がした。

たいちはその長い指であたしの乳房をブラからずらして、舐めたり、舌で絡めたり、指で弾いたり、。

「凪・・・力入りすぎ・・・誰も居ねぇから声出して・・・力抜いて」

たいちの言うとうりに力を少しづつ抜いていく。

たいちの指がスカートから入り、するりとパンツの中に入ってきた。

「・・・・・・っ・・・あっ・・・ぁっ・・・」

自分の意志と関係なく声が出てしまう。

たいちは、そのあとも優しくあたしを愛撫した。

たいちも息が荒かった。

「ごめんな・・・俺我慢できないや・・・」

「・・・いいよ・・・来て・・・」

あたしが呟くように言うとたいちはあたしの濡れた膣の中に入った。

最初はゆっくり・・・でも慣れてくると段々と激しくなった。

息をするのも苦しい。

頭の中がたいちしか考えられなくて、あたしの目から涙が出た。

このままずっと繋がって行けたらどんなにいいだろうか?

夢なら冷めないで欲しかった。

たいちはあたしを抱き締めて果てた。

そしていつものように"愛してる"と口にした。

ねぇ・・・たいち、愛してるならあたしのこと受け入れてくれるよね?


目が覚めたら、あたしの横にはあたしを愛おしげに見つめるたいちがいた。

「ね・・・たいち・・・あたしの秘密聞いて?」

「浮気してる、とかなら聞かねぇ」

たいちはブスッと答える。

なんだか可愛くてクスッと笑ってしまった。

「違うよ・・・あたしの病気だよ」

びょうき、と単語を出した瞬間たいちの目は変わった。

少なくとも変わったように見えたの。

「・・・・・・何の病気なの?」

たいちは恐る恐る聞いてきた。

「精神病、二度と治らない心の病だよ」

せいしんびょう、かすれたたいちの声。

あたしを見つめる目は、さっきの愛おしげな目は無かった。

代わりに異物を見る目をした、知らない人がいた。

ねぇ・・・たいち、愛してるって言ったのどっちだっけ?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この嘘つき。

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