第8 GAME・・・真の敵が!?正体は一体!?涼子の悲しき想いに一葉は!?

引き続きゲーム内に閉じ込められた状態の私たちは、変わらずレベルを上げてゲームクリアを目指していた。

宿で百合ちゃん、風華ちゃん、私の3人になった時、知らない女性が部屋を訪れて来た。

彼女の名は森園(もりぞの) 十霞(とおか)と名乗ったが、百合ちゃん、風華ちゃんに扉を閉められてしまい立往生・・・しばらくそんなやり取りをして部屋の中に入れる事にしたが、雪康君を命の恩人だと称え「雪康様」と呼び彼を訪ねて来た様だった。

だが、その直後、百合ちゃんと風華ちゃんの様子がおかしくなって来た。

一体どう言う事だろうと様子を見ていたら彼女への態度がエスカレートして行った為私も止めに入ろうとしたけれど、どうやら森園 十霞は神門 百合ちゃんの実の弟である事が分かった。

ただ、彼は記憶を断片的に無くしており、過去に風華ちゃんとのやり取りがあったにも関わらず記憶が無かった。

風華ちゃんは彼に接近し、色々と話をしながら記憶を戻そうと試みていた。

幸い、十霞君の記憶はしっかりと戻り、無事問題は解決した。

百合ちゃんの弟であると言う事もあり、私たちの仲間として一緒にゲームクリアを目指してもらう事になった。











雪康「新しい仲間も加わって更に力強くなったな!」


宗太「そうだな!レベルもかなり上がったし、もうそろそろクリアを想定した動きを取っても良さそうだけど・・・」

一葉「いえ・・・まだです!この先どの様に操作されているのか分からない為、念には念を・・・皆さんがレベルMAXになる迄はクリアは保留にさせておいた方が良いかもしれません!」


涼子「そうね・・・これ迄に起きて来た事や内部事情・・・私たちが置かれている立場を考えると迂闊に動くとかえって危険な感じがするわね・・・」


理央「そうですね、何かあってからでは遅いですから、ここは慎重に引き続き行動する様にしましょう!」


理奈「それにしても・・・随分とイチャイチャしてるわね・・・宗太と私よりお熱い気がするけれど・・・?」


風華「えっ!?・・・これは・・・ごめんなさい、今迄の分って所かもしれない・・・です・・・」


十霞「風華姉・・・俺、絶対に守るから!・・・っていてててて・・・姉ちゃん、何すんだよ!?」


百合「あんたね!場を弁(わきま)えなさい!皆見てるでしょうが!!」


風華「それはあんたも同じだったと思うけどな?・・・百合?」


百合「もう~!それとこれとは話が別よぅ~!!」


理央「あ・・・はは・・・まぁ、ここはいつも通りに行きましょう?ベッタリしたいのも分かるけれど、一応フィールド内だから何が起きるか分からないし・・・」


涼子「そう言っていたら敵がお出迎えみたいよ?どうする?」


雪康「そうだな、とりあえず、依然俺たちが一番レベルが低い様だし、先頭切るって事で!百合、風華も引き続き敵を倒す方で!行くぞっ!!」


百合「私は左から・・・」


風華「私は右から!」




♪ジャキーン!!

♪ビュッ!!!

♪ズシャッ!!




雪康「よし、ここも退治成功!」


涼子「敵も少し強くなって来ているわね!それに・・・」


理央「レベルも一定で上がらなくなりましたね!」


一葉「やはり操作されている様ですね・・・あのままの状態だともうそろそろ皆さん140付近迄到達されているはずなのですが・・・どこかで食い止められている様な感じです・・・」






「ふふふふふ・・・まだまだよ・・・こんなものでは終わらない・・・もっともっといたぶってあげるわ♪」






一葉「おかしいですね・・・この先に確か次の城下町が見えて来るはずなのですが・・・」


雪康「でも周りが何だか樹海みたいな所へ入って来てしまったみたいだけど?・・・」


涼子「まずいわね・・・引き返した方が・・・って無駄の様ね!」


理央「もう樹海の中に閉じ込められてしまったみたいですね・・・」


風華「何?・・・流石に薄気味悪くて・・・怖い・・・」


十霞「大丈夫!風華姉は俺が必ず守って見せる!!」


百合「風華?・・・演技は良いわよ?そうやって十霞に守ってもらいたいって思ってやっているのよね?」


風華「チッ・・・バレたか!」


宗太「女って色々と怖いな・・・」


雪康「仕方無い!戻っても元にいた場所へ戻れる気もしないし、このまま全身あるのみ!か・・・」


一葉「いえ、下手に動かない方が良さそうです・・・」


雪康「えっ!?・・・じゃあどうしろって言うんだ!?」


一葉「見て下さい!周りに何かいませんか?」


雪康「うっ!?・・・何だ!?・・・妙な生物たちが!!?いつの間に!?・・・」


一葉「どうやら私たちは嵌められたみたいですね・・・」


雪康「それはどう言う事なんだ!?」


涼子「結界みたいな感じかしら?」


一葉「流石涼子さん!・・・えぇ、それも少々厄介な感じの様です・・・」


「ふふふふふ♪ようこそ♪我が毒牙の樹海へ♪」


理央「誰!?・・・」


「私はこの樹海の支配者!あなたたちをおびき寄せる為にここに樹海を作ったの♪凄いでしょう?本来目的の場所へ行くはずだった場所にこの様な樹海が出来ているなんて?」


一葉「確かに凄いですね!・・・ですが少々趣味が悪いのではないでしょうか?」


「あらあら♪随分な言い方ね?人が折角拘り抜いて作ったものなのに・・・」






人?・・・今、人って言った?恐らくこれを仕込んだのって・・・黒幕!?

だったら黒幕と今接触している事になる?・・・いや、でも、この声の主が必ずしも黒幕の正体そのものだと確証が持てない・・・でも、遂に私たちの所へ直接接触して来たと言う事は、何らかの企みが強くなって来た証拠!?とりあえず涼子お姉さまに・・・






一葉(耳打ち)「涼子さん・・・少し良いでしょうか?」


涼子(耳打ち)「えぇ!どうかしたの?」


一葉(耳打ち)「恐らくですが、この声の主は今回の事件の発端である黒幕だろうと思います。」


涼子(耳打ち)「なるほど!確かに私たちの目的を阻害しようとしているみたいだし・・・」


一葉(耳打ち)「我々に接触して来たと言う事は、恐らくですが、何かしらの企みが強くなって来ているのではないかと・・・」


涼子(耳打ち)「確かにそうね・・・今迄は私たちをこの世界に閉じ込めて影からあらゆる悪さをしようとして来たみたいだったけれど、今回は直接的な接触と言う事ね!?でも、何が引き金なのかしら?・・・こう言う姑息な真似をする奴は考えている事が読み取れないのよね・・・相当な恨みとかひがみの様なものを持っている連中がする様な感じもするし・・・」


一葉(耳打ち)「一先ずどうやって攻めて来るか分かりにくいですので気を付けましょう!」


涼子(耳打ち)「そうね!一先ずこの状況を打破しないとどうする事も出来ないわね!ありがとう、一先ず構えましょう!」




涼子「それで?・・・あなたの狙いは何かしら?」


「狙い?・・・そうねぇ・・・そこにいる・・・スティーフィアって子が欲しいわ?」


理央「私?・・・どうして私なの?」


「あなた、相当このゲームに精通しているわよね?気に入っちゃったの♪だから私とタッグを組まない?私はこのゲームを操作するの・・・あなたはこのゲーム内で操作するの・・・」


理央「言っている事が分からないけれど・・・何の目的でその様な事をするの?」


「そうね・・・私があらゆる操作をしてあなたを優遇させるからあなたはこの世界を支配して欲しいの!」


理央「お断りだわ!どうして私があなたの様な何処の誰だか分からない相手とタッグを組まなくちゃいけないの?それに目的がはっきりと分からない・・・その様な曖昧な理由で私が動く訳無いわ!」


「ふふふ♪そうよねぇ~♪ただでとは誰も乗ってくれないわよね~・・・だったら、そこにいるハンサム君をあなたのモノにさせてあげるわよ?どう?それならあなたも乗ってくれるかしら?」


理央「ハンサム君って・・・まさか、雪康君を!?」


「面白いと思わない?自分の理に叶うって・・・「理」・・・ことわり・・・理由、理屈、理不尽、色々と悪い事にも使われるけれど・・・人間の望みが含まれている言葉♪・・・理想理由、深い意味や良い意味でも使われる、最も人間らしい言葉・・・理性・・・ほら、色々とあるでしょ?」


理央「それがどうかしたの!?・・・」


「まぁ、そんな事どうでも良いわ?どうするの?」


理央「断るわ!無理強いして人をどうこうするなんて考え方がおかしいわ!」


「そうよねぇ~♪あなたなら必ず断るって思ってたもの♪だってあなたって私だもの♪」


理央「えっ!?・・・今、何て?・・・」


「だからぁ~♪あなたは私で、私はあなたなの♪不思議でしょ?」


理央「どうして私があなたなの!?訳が分からない!いい加減にして!!」


涼子「その位に留めておいてもらおうか!?その手の精神的攻撃は無駄だ!」


「あらあら?お見通しなの?・・・仕方無いわね・・・じゃぁ、次の作戦で行こうかしら?」




次の作戦・・・策を見透かされ相手に不安を煽り何かして来ると見せ掛ける為に使う口実・・・

実際に作戦が成立している確率は・・・極めて低いけれど、念には念を・・・




涼子「理央ちゃん?ちょっと聞かせて欲しい事があるのだけれど・・・教えてくれないかしら?」


理央「何でしょうか?」


涼子「あなた、万が一身内が悪い事をした時ってどうする?」


理央「身内が?・・・そうですね・・・悪い事をしていたのであればきちんと罪を償ってもらう様にしますが・・・」


涼子「そう・・・やっぱりそうよね!悪い事をしているのであればそれは制裁されて当然の事!ただ・・・万が一よ?・・・万が一、そう言う事をしてしまった裏に、本人の意志とは無縁の何かが・・・例えば、精神的苦痛によって自我が崩壊してしまったり・・・そうね・・・ノイローゼみたいな感じかしら?そう言う理由があったとすれば、どう?」


理央「それは・・・」


涼子「本人は悪気が無かったり、正当防衛だったり、色々とあるわよね?・・・そう言う何かしら不可抗力が掛かってしまった場合なんか・・・そう言う場合はどうかしら?」


理央「事情にもよるかもしれませんが、悪気が無いのであれば、きちんとした制裁と言うのは少し難しくなって来るのでは無いでしょうか?」


涼子「そうよね・・・じゃぁ、さっきの質問の続きなんだけど、もし身内がその様な状態で何かをしてしまったとしたら、あなた自身はどうする?」


理央「・・・・・・」


涼子「ちょっと答えが難しい質問になっちゃうわね・・・じゃぁ、少し質問を変えてみるけれど、その行為が人を殺したりと言う重大な事件では無くて、ある程度の枠に抑えられる場合には許せる?それともやはり許せない?制裁は難しいけれど、あなた自身の気持ち、想いはどう?」


理央「あの・・・どうしてその様な質問を?」


涼子「ごめんなさい・・・今の質問に答えてくれたら伝えるわね!」


理央「私の気持ち・・・想いでしょうか?・・・そうですね・・・それは・・・」


「もう良いわ!何を企んでいるのか分からないけれど、あんた、色々と厄介で面倒だから!!今回は消えてやるけれど、次に会った時は!!覚えておきなさいね!」




♪スーーーーーーーーーーーーーーーー




雪康「消えた!?・・・どう言う風の吹き回しだ!?」


一葉「涼子さん・・・そう言う事なのですね・・・」


涼子「理央ちゃん、ごめんなさい・・・」


理央「いつも色々と先を読んで考えていると、今回もきっとそうなんだろうなって思っていましたが・・・最低ですね!」


雪康「理央?・・・」


理央「私この先の城下町の宿に先に行きます。」


雪康「理央?・・・大丈夫か?」


理央「ごめん、雪康君、今は一人にしておいて?・・・」


雪康「理央っ!?・・・おい、涼子姉?なんであんな訳の分からない事言ってたんだ!?家族が悪い事したとか言ったら気分悪くするに決まってるだろ!?本当に最低だ・・・」


宗太「おい!雪康!?・・・」




理央ちゃん・・・ごめんなさい・・・やはりまだ今は、早過ぎたかもしれないわね・・・




一葉「涼子さん・・・いつも私に言っていましたよね?1人で抱えるなって・・・あれは私だけに言えた事では無い気がするんです・・・でもきっと涼子さんは優しいから自分みたいにならない様にって私にあれだけきつく言ってくれたんだと今でも信じています。」


涼子「一葉・・・ちゃん・・・」


一葉「でも・・・理央さんも本当は、分かっちゃったんじゃないでしょうか?それでやるせない気持ちでいっぱいになって・・・だから当たる相手がいないから・・・」


涼子「私も少し焦り過ぎたのかもしれない・・・」


一葉「しっかりリーダーシップを発揮して頑張っていた理央さん・・・でも私、一番辛い立場でも耐え続けて影から支え続けていた涼子さんも凄く頑張っていたのを知っていますよ?だから、泣きたい時は泣いても良いんです・・・」


涼子「一葉ちゃん・・・・・一葉ちゃ~ん・・・えぐっ・・・うぐっ・・・うぅっ・・・ひっぐ・・・」


一葉「涼子さんはいつもあらゆるものから私たちを守ってくれていました。皆気付かない所で・・・人知れず盛大な程に守ろうとしてくれていた・・・だからたまにはゆっくりして下さい?たまには誰かに甘えても良いんですよ?」


涼子「一葉ちゃん・・・ごめん・・・今日は・・・今日だけは許して?・・・お願い・・・」


一葉「はい!私で良ければ!」






分かってしまった・・・そう・・・本当は私、あの時!?




(面白いと思わない?自分の理に叶うって・・・「理」・・・ことわり・・・理由、理屈、理不尽、色々と悪い事にも使われるけれど・・・人間の望みが含まれている言葉♪・・・理想理由、深い意味や良い意味でも使われる、最も人間らしい言葉・・・理性・・・ほら、色々とあるでしょ?)




あのセリフ・・・あの言葉・・・そう、私たちの名前・・・「理」が付く本当の理由・・・

私はあの場所にいたたまれなくなってしまった・・・

早く逃げ出したい・・・早くこの現実を無かった事にしたい・・・強くそう思っていた・・・

私って最低だ!!

恐らく涼子お姉さんも事実が分かったのだろう・・・

私に物凄く気を使ってくれていた事だろう・・・

だって凄く回りくどく言って来たし、一つ一つ確認を取る様に聞いて来た。

最後には悪意についても自分がした事じゃなくて何かの影響を受けてしまって・・・

やっぱり家族なんだな・・・雪康君も凄く優しいけれど、そのお姉さんだもん・・・

私、早く謝らないと・・・でも・・・






翌日・・・宿屋にて・・・




風華「涼子さん戻って無いって!」


百合「今いなくなっちゃったら大変じゃない!!やっぱり昨日の事が原因かな?」


宗太「まずい事になったな・・・雪康も理央ちゃんが走り去ったから涼子さんに対して怒ってたし・・・」


十霞「身内の事どうのって・・・やっぱり良い気がしないのは分からなくも無いですが・・・俺も姉ちゃんが悪い事したと言う仮定で話をされたりしたらやっぱ怒るだろうし・・・」


百合「全く・・・あんたって・・・可愛い所あるんだから!!」


十霞「姉ちゃん!?・・・」


一葉「昨夜私と一緒に別の部屋で泊まる事を伝えておきましたが、朝、目を覚ましたらいなくなってて・・・」


風華「でもさ、涼子さんの事だから今回もきっと何か考えがあっての行動だったと思うんdけど?・・・って理央?・・・理央?大丈夫?実は涼子さんがいなくなってて・・・」


理央「えぇ!私はもう・・・涼子さんが?・・・・・時期に帰って来るんじゃないですか?」


風華「でも、昨夜一葉さんと一緒の部屋で泊まってたけど、朝になったらいなくなってたって・・・特に書置きされた手紙も無かったみたいだったし・・・心配じゃないの?」


理央「えぇ・・・いつも何か考えがあって動く方の様ですから今回も何か考えがあってなんじゃないですか?・・・レベルも高いですし単独行動をしても問題無いだろうと・・・」




パァァァァン!!!




理央「いたっ!!!・・・何をするんですか!?」


風華「ねぇ、そんなに昨日涼子さんに言われた事が気に食わなかったの?」


理央「べっ!?・・・別に私はそんなつもりで言ったんじゃ・・・」


風華「あなたが一番分かってたんじゃなかったの?涼子さんの行動やセリフ・・・何かあっての事だって!あなたいつもそう考えて動いて来た訳じゃなかったの?私もそう言うあなたの行動を見て、分かった事が沢山あった・・・」


理央「勿論、そうです!!だから今回の事も・・・」


風華「だったら、どうしてそんなよそよそしい態度なのよ!?これ迄だって急にいなくなったら皆で探し回っていたでしょ?もし昨日の事に触れていたのだとすれば、昨日の話の中にも何か理由があったとか考えなかった?それとも家族が悪者かもしれないとか言われてそっちに気持ちが移っちゃった?」


理央「そうでは・・・ない・・・」


風華「だったら、既にあなたは分かっているって事よね?」


理央「うん・・・私・・・悪いのは私・・・涼子お姉さんは何も悪くない・・・むしろあの時も凄く気を使ってくれていたの・・・私を傷付けない様に・・・恐る恐る確認して来たの・・・でも私、あの時分かってしまったの・・・だから・・・だから・・・」


一葉「その辺りにしましょう!お互い何を考え、どう言う気持ち、想いなのか分かったじゃないですか!それで解決です!後は、雪康君にもその事実を伝えて、涼子さんを皆で一緒に探しましょう?」


理央「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」


一葉「理央さん・・・大丈夫です!あなたならきっと涼子さんの行動を把握されていたのだと分かっていましたから・・・ショックは大きいでしょうが、今は涼子さんを見つけ出す事が先決です!」


理央「えぐっ・・・えぐっ・・・は・・・はい・・・早く・・・見付けなくちゃ・・・涼子・・・お姉さんを・・・」






宗太「おい、雪康!涼子さんがいなくなったってさ!早く探しに行こうぜ!?」


雪康「どうせ又何か考えがあっての事なんだろう?放っておけばその内・・・」




グイッ!!!!!




宗太「おい、お前、そんなにひがみったらしい奴だったか!?確かに自分の気に掛かっている子にあの様な言い草は俺でも少しムッとするかもしれない・・・だが、お前は事の本心を見抜いていない・・・あの時な・・・敵は消えたんだぞ!?これ、どう言う意味か分かるか?」


雪康「うっ・・・放せ・・・ごちゃごちゃ涼子姉が話続けてたからしびれ切らせて消えたんだろ?」


宗太「そこがお前の悪い所だ!いいか?1つの事に集中して真向から立ち向かうお前の良い所でもある・・・だがな、お前はただ真っ直ぐなだけなんだよ!その周囲、裏に何が隠れているのかきちんと見抜けないでいる・・・これはあくまで推測だがな、涼子さん・・・あいつの・・・敵の正体に気付いているはずだ・・・」


雪康「何!?・・・涼子姉が敵の正体を!?・・・」


宗太「その反応からすると敵が何を言わんとしていたのか全く分かっていない様子だな・・・」


雪康「どう言う事だ!?あいつが・・・敵が一体何を企んでいたと言うんだ!?」


宗太「よくそれで、リーダーシップをとって来たよな?正直言って流石の俺もあきれて物が言えないぜ・・・」


雪康「俺は・・・ただ・・・」


宗太「あくまで推測であって確信出来る話じゃない・・・だが、お前があまりにも分かってないみたいだから言っておく・・・涼子さんが理央に色々と質問していたのは、かなり気を使っていたんだ・・・どうしてか?・・・敵が、もし理央の関係者だったとしたら?・・・お前はどうやって理央の気持ちを悲しませずに伝える?」


雪康「・・・・・・おい・・・・それってまさか・・・・・!?」


宗太「ここ迄言わせんなよ!理央ですら分かっていた事だろ・・・だがやるせなかった・・・それであんな物言いをしたんだと思う・・・」


雪康「分かっていなかったのは・・・俺だけだと言う事か?・・・」


宗太「あぁ・・・女子も全員把握していたよ・・・全く・・・」


雪康「俺・・・最低だ・・・涼子姉にあんな事言って、理央の事しか見えていなかった・・・でも一番見えていなかったのは自分自身だ・・・」


宗太「反省はもう終わりだ!早く涼子さんを探し出さないと、きっと今回は策があっていなくなった訳では無いはずだ・・・だとすれば精神的に擦り減った状態で単独行動をしていたらとんでも無い事になるだろ?分かったらさっさと行くぞ!女子の方も準備は出来たみたいだしな!」


雪康「宗太・・・本当にすまん!・・・」






一葉「皆さん、揃いましたね!?では涼子さんを探しに行きますが、今のゲーム内の時刻が朝の7時半です。私が目が覚めたのは6時過ぎで既に涼子さんはいませんでした。夕べは朝方迄涼子さんとお話をしていましたので寝たのが4時くらいだったと思います。そうなるとその直後に行方をくらました場合でも既に3時間半程が経過してしまっています。従来ワープの様な術等を用いなければ動けるエリアはここから1つ前後の城下町、ないしは街になると思います。その間にもフィールド上で敵が現れる可能性が高いですので戦いつつ歩いて行くには行動範囲は、割と限られて来ます。涼子さんは現在移動の魔法は確か無かったと思われます。ですので単独行動をしているとすればこちらか、前後の何処かにいる可能性が高いと思われます。このまま団体行動を取っても良いかもしれませんが、時間が掛かってしまいますので、手分けして分担させて探しましょう!夜になる頃に一度こちらへ戻る約束で、勿論途中で涼子さんが見付かり次第通信を取りつつこちらへ戻る事にします!良いでしょうか?」




一同「了解!!!」




一葉「では、3つのグループに分かれます。今いるメンバーが、私を含めて7名ですので、先ず、A班に雪康君と理央さんと私、そしてB班に宗太さんと理奈さん、C班は百合さんと風華さんと十霞君、宜しくお願いします。では、A班1つ手前の城下町へ戻りながら探します。B班のお2人はこちらの城下町とその周辺で結構ですのでお願いします。最後にC班は次の街へお願いします。では、出発します!」






涼子さん・・・どうか・・・どうかご無事で!!必ず私たちが見つけ出します!!

そう言えば、昔、この状況とは全く反対の事がありましたね・・・

その時は私、森に迷い込んでこのまま死んでしまおうって思ったっけ?・・・






5年前・・・




涼子先輩とは私が大学へ入った頃、大学内で迷ってしまった所へ道案内のついでに何故か学校も案内してくれたのが切っ掛けでその後も色々と分からない事は教えてくれて、いつの間にか仲良くなっていた・・・そして私は色々と人望が厚い先輩にいつしか憧れる様になっていた・・・でもその想いが更に強くなる日が訪れたのはそれから1週間程が過ぎた頃だった!大学にも慣れた1月半が経った頃・・・突然彼氏に振られ、傷心旅行へ1人で行く事にした・・・

でも、私の顔色が悪い事を心配した涼子先輩が付き合ってくれた・・・

私は涼子先輩が色々と慰めてくれるだろうと思っていたのだけれど、先輩は何も言わずにただ私の行動を見つめているだけだった・・・

今思うと、きっと下手に慰めるのではなく、私の行動を尊重してくれていたのだろうと思う・・・

だって普段あんなに自分から気さくに声を掛けてくれる人がずっと黙って私の隣にいてくれた・・・本当は「大丈夫?あまり追い詰めないでね?」とか言おうと思っていたのかもしれない・・・だが、その時の私はただ振られた事がショックで悲しくて、生きている事がつまらなくなってしまっていた・・・そして私が旅行先へ選んだのは・・・

「樹海」・・・そう、自殺の名所として名高い樹海のある、とある山のふもとだった・・・

それでも先輩は何も言わずに私について来てくれた。

旅行に出発してからほとんど何も会話を交わす事も無く、ただ旅館に辿り着いた私たちは、荷物を置いて、ボー然として座っていた・・・

1時間程が経過しただろうか・・・時間すら気に留めていなかった私がどうして先輩は黙ってついて来てくれたのだろう?とふと頭を過ったので聞いてみる事にした・・・




一葉「先輩?・・・どうして何も言わずについて来てくれたんですか?普通何か言って来ると思うのですが?」




すると先輩は笑顔でこう答えた・・・




涼子「苦しんでいる時に何を言っても無駄でしょ?」




と・・・やっぱり先輩って変わってる・・・黙って何時間も電車に揺られて、こんな山奥の方の旅館に来たのに、先輩は先輩の生活もあるだろうし、学校も行かなければならない・・・

どうしてここ迄して私に?・・・




涼子「ねぇ?あなたは何がしたいの?どうなりたいの?」


一葉「分かりません・・・ここに来たのも勢いだけで・・・」


涼子「そうか・・・なら、まだこの後どうなる、どうしようかって考えていないって事ね?」


一葉「はい・・・」




こうして又、長い沈黙が続いた・・・

ご飯を食べて、お風呂にも入り、寝ようと思っても涙が止まらなくなって来て・・・

その夜は先輩に沢山慰めてもらいました。

色々なお話をして、先輩はただ優しい笑みを浮かべながら私の一方的な話をひたすら聴いてくれた。

深夜になり、私もようやく落ち着いて来た振りをした・・・そうする事で先輩は安心して眠ろうとしてくれるだろうと思ったから・・・

案の定先輩は眠っていた・・・

先輩?色々とありがとう御座いました。短い間でしたが私、とても楽しかったです!

最後は私の勝手なワガママに付き合ってくれて本当にありがとう御座いました。

先輩の事は・・・忘れません・・・

私は簡単な手紙を残し、外へ出た・・・

少し離れると樹海が辺り一帯を占めていた。

少し怖かったけれど、私は死ぬつもりだったからそのまま樹海へと入って行った・・・

しばらく歩いていると確かに周りが同じ様な樹木に囲まれていて方向感覚が麻痺してしまった・・・

どうしよう?・・・死ぬつもりだったけれど、どうやって死ねば良いのだろう?

そのまま歩き続ける事約1時間・・・まだ真っ暗・・・どうすれば良いのかな?・・・

このまま歩き続けて飢え死にする迄ただひたすら歩き続けると死ねるのかな?・・・

段々と深い所迄来た気がした・・・時計も持っていないし、携帯も持っていない・・・

心細くなって来た・・・お腹空いたな・・・夜もあまり食べていなかったし、お昼も食べていなかったっけ?・・・もう直ぐだ・・・もう直ぐ・・・怖い・・・どうしてだろう?

何故か私は涙が出て来た・・・

振られた事を思い出したから?ううん!もうその事は先輩に聴いてもらった話で落ち着いたはず・・・なのにどうしてだろう?・・・悲しい・・・そうだ・・・悲しいんだ!?・・・

お腹が空いたから悲しいのかな?・・・ううん!子供じゃないからお腹が空いたからと言って悲しくなるはずがない・・・怖いよ・・・私どうなっちゃうの?・・・

そうか・・・私・・・怖かったんだ・・・こんな来た事が無い、樹海の中、夜中に1人ただひたすら歩いているから・・・死にたいとか思ってたけれど、結局怖いんだ・・・さっき迄死のうと思って何も怖く無かったのに・・・段々と恐怖心が強くなって来た・・・

どうしようかな?・・・引き返そう!?そうだ、私、まだ生きてるから戻れる!?

そう思って来た道を引き返そうとあやふやなイメージで引き返そうとして歩き出した・・・

随分長い間歩いて来たからかなりの距離だろうと思い、帰りは軽く走って帰ろうとしていた・・・でもいくら走っても光すら見えない・・・どうして?・・・確かこっちの方から来たはず?・・・そうだ・・・ここって樹海だったんだ!?・・・じゃぁ、私もう・・・戻れない?・・・どうしよう?・・・怖い!?怖いよ・・・先輩?・・・先輩・・・助けて!?・・・




「助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!」




私は無我夢中で泣き叫んだ・・・すると、光がこちらを差して声が聴こえた!?




「大丈夫?・・・」




誰だろう?光が眩しくて・・・嬉しくて・・・私は目が涙で溢れていて相手が誰なのか一瞬見えなかった・・・でも・・・この声色、話す雰囲気・・・そうだ!これはきっと・・・




一葉「涼子・・・先輩?・・・ですか?」


涼子「えぇ!そうよ!?・・・目が覚めたらいなくなってたから慌てて探しに来たのよ!?」


一葉「先輩・・・せんぱぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!うぐぅ・・・えっぐ・・・えっぐ・・・」


涼子「あら?・・・そんなに怖かったの?・・・樹海だもんね?・・・さぁ、戻りましょう?」




先輩は怒らずにただ私を慰めてくれる様に優しい言葉を掛けてくれて、一緒に旅館へ戻りました。

先輩は来た所に目印を落としてくれていたおかげで何事も無く、旅館へ戻る事が出来た・・・

旅館の人にもきちんと説明をしてくれていたらしく、戻ると旅館の方たちが出迎えてくれました。私は更に大泣きしてしまい色々と皆さんに迷惑を掛けてしまった・・・

涼子先輩、目が覚めたらって言ってたけれど、きっと私が出た直後に追って来てくれていたのだろうな・・・本当に優しい女性・・・






一葉「涼子さん、やはりこちらにいらっしゃったのですね・・・当時の私と同じです・・・」


涼子「やっぱり・・・あなたにはお見通しだった様ね・・・」


理央「涼子お姉さん・・・・・本当に・・・本当にごめんなさい・・・私、本当はあの時・・・分かっちゃったんです・・・でも・・・いたたまれなくて・・・あの場から逃げたくなってしまって・・・酷い事迄言ってしまいました・・・私は最低の女です!あんなに優しくて、いつも色々な事を気に掛けてくれていたのに、私は・・・」


涼子「いいえ・・・私は愚かな女・・・精神的な勉強をしていると言う立場なのにそれすらきちんと出来ていない・・・一番大事な、一番重要な人の心・・・そこが分かっていなかった・・・」


雪康「涼子姉は悪くない!・・・悪いのは何も見えていなかったのに偉そうな事を言った俺なんだ・・・涼子姉がどんな気持ちで、どう言う思いを抱いて行動しているのか分かっていなきゃいけないはずの俺が一番分かり切れていなかったんだ・・・俺・・・本当にバカだ・・・ごめん・・・ごめんなさい・・・」


一葉「モスキューの樹海・・・私が樹海へ傷心旅行に出掛けた時、私を救ってくれたのは涼子先輩でした。」


雪康「えっ!?・・・」


一葉「私は自殺しようとあそこへ行った・・・でも、涼子先輩が気に掛けてついて来てくれたんです・・・」


理央「白石さん?・・・」


一葉「深夜迄私の愚痴や悲しみを全部涼子先輩は、優しく受け入れてくれました。」


涼子「・・・・・・・」


一葉「涼子先輩が眠った頃私は1人で樹海へ入って行きました。最初は死ぬつもりだったのでただひたすら歩き続けていました。でも途中から急に悲しくなって来て、涙が溢れて来たから何故?と考えていると、段々と恐怖心に胸が絞殺されてしまいそうになって、走って来た道を戻って行ったつもりでしたが、戻れなくて、泣き叫んだ時、涼子先輩が懐中電灯をこちらへ向けて助けてくれたんです!!来た道にも目印をつけていて、旅館の人にも事前に状況を伝えてくれていたんです・・・私が旅館を出ると同時に構えてくれていた・・・眠った振りをして、私の行動を察知してくれていた・・・だから私は今、こうして皆さんと一緒に生きているんです!」


涼子「バレてたのね・・・」


一葉「言いませんでしたか?私、演技の勉強もしていたって!・・・涼子先輩は、ほぼ完璧超人ですが演技力だけは私の方が上だと思いますよ?」


涼子「そうかもしれないわね・・・」


理央「それで、「樹海」が付くここを探していた訳ですね!?」


一葉「涼子先輩ならきっと・・・ただ私の勘でしたが、正解で良かったです!」






その後、通信で各班には元の場所へ戻る様指示が出された・・・






宗太「良かった・・・・本当に・・・一時はどうなるかと思いましたよ!」


涼子「皆に、本当に迷惑を掛けてしまったわ・・・ごめんなさい・・・本当に・・・ごめんんなさい・・・」


百合「いいえ!涼子お姉さまは何も悪くありません!!いつも影から私たちを助けてくれている事も皆知っていますからっ!!!」


風華「そうですよ!こう見えて皆ちゃんと見えていますからね!見ている人は見ているって言いますし!!」


十霞「はい!・・・風華姉から1日掛けて涼子お姉さんはとてつも無く凄い方だって聴きました!」


涼子「とてつも無く?・・・ふふっ!!超人みたいな表現ね?・・・私そんなに凄く無いわよ?」


宗太「まぁ、今回に限っては仕方無い部分はあったとは言え・・・」


雪康「はい・・・俺が悪いです・・・」


理央「私が事の発端です・・・ごめんなさい・・・」


理奈「でも無事に皆揃って良かったね!それから・・・涼子お姉さん?いつも私たちを助けてくれてありがとう御座います。これからも迷惑を掛けちゃうかもしれませんが、助けてくれますか?」


涼子「私でお役に立てるなら喜んで協力させてもらいます♪」




♪パチパチパチパチパチ♪




一葉「と言う事で、一件落着~♪」


理央「あの・・・」


一葉「どうされましたか?理央さん?」


理央「今回の敵の件なんだけれど・・・あの敵は、私の・・・」


宗太「あっと!!ちょっとストップね!」


理央「えっ!?・・どうして?・・」


宗太「それって確信話?」


理央「・・・現時点では推測になるかもしれないけれど・・・」


宗太「じゃあさ?確信に変わったら話してよ?」


理央「でも・・・少しでも可能性が高ければ・・・」


一葉「そうですね!私も宗太君の意見に賛成です!」


百合「確かに、推測の話は結構色々と出て来るから結果が覆る事だってザラだもんね!?」


宗太「と言う事で、明日からも頑張ろうぜ!?もうこんな無敵なチームだったらチョチョイのチョイだろうし♪」


一葉「そうですね♪チョチョイのチョイ・・・ですね!」


理奈「まぁ、ブレなければそれで良いのだろうと♪」


理央「皆・・・・・うん♪じゃぁ、明日から又、頑張りましょ♪」






こうして、今回の一件は無事に丸く解決してくれた・・・

でも、敵の正体は・・・皆気付いているのを気遣ってくれたのだろうと思う・・・

きっと、このゲーム内に皆が閉じ込められてしまった時、私は凄く自分を責めた。

その事も知っているからだと思う・・・

もし本当にこのゲーム内に皆を閉じ込めた張本人がお母さんだとしたら、私は・・・

















第8 GAME END

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