第12話 怪物 対 怪物 1
宮平真奈美の運転する乗用車がコスモエナジー救世会本部に到着すると、門前には昨日同様に物々しい装備の警備員が居た。
「ああ、科捜研の方ですね。どうぞお通りください」
これも昨日同様に、簡単に門を開けて中に入れてくれた。
昨日と違ったのは、駐車場に車を停めたふたりを黒いスーツ姿の男が3人出迎えたことだ。
そのうちのひとり、切れ長の目を持つ男が声を掛けてきた。
「教主はただいま一般会員への個別指導中です。しばらく喫茶室でお待ちください。さあ、こちらにどうぞ」
そう言うと切れ長の目の男は先に立って歩き、真奈美と御影がそれに続くと、あとの2人は背後からついてくる。
・・・宮原君、聞こえるか?
突然、御影の言葉が真奈美の心に響いた。これは
・・・御影さん、やはり私の意識のファイアーウォールを乗り越えてるじゃないですか。。
・・・君がこの男たちの意識を読むために一瞬、ファイアーウォールを外したからだ。そんなことよりわかってるね?
真奈美にはもちろんわかる。
周りを取り巻いている男たちが、自分たちに強烈な害意を持っていることが。
・・・合図したら左の方角に全力で走って。それ、今だ!
真奈美が全力で駆け出すと、不意を突かれた背後の男たちが追いかけようとする。
しかしいち早く御影がひとりの男の脚に引っかけるように自分の脚を伸ばしたので、ふたりの男は重なり合って玉砂利の敷かれた庭に転がった。
前を歩いていた切れ長の目の男が振り返ると同時に、なかなかにスピードのあるストレートパンチを御影の顔面に飛ばしてきた。
御影はその拳を左方にウィービングしてかわすと同時に、右足の革靴のつま先を男の腹に突き刺すように蹴りを入れた。
切れ長の目の男はたまらず悶絶して地面に膝をつく。
先に転ばしたふたりの男が立ち上がり、御影と向き合った。ところが・・・
「うっ・・が。。」「うぐっ・・」
男たちはふたりとも喉を押さえて苦しそうに跪いた。
「馬鹿者どもが!やめなさい」
声のする方を見ると、神殿の方から作務衣姿の東心悟が、息子の学の手を引きながら歩いてくる。
「あ、お姉さん、今日も来てくれたの?」
学が無邪気な声を上げた。
東心悟はこちらに近づくと深々と頭を下げた。
「ウチの会員たちが乱暴を働き、まことに申し訳ない。宮下さん、お怪我はありませんか?」
外見的には謝罪しているが、例によって東心悟の本心はまったく読めない。
「ああ、そちらの方も・・あなたは御影純一さんですな。一度お会いしたかった」
御影は半眼になって東心悟の顔を見つめている。
御影の能力なら、東心悟の心を読めるのだろうか?真奈美は思った。
「私の事をご存知とは恐縮ですね」
御影がそう言うと、東心悟はかすかに微笑んだ。
「私は宇宙の意思と繋がっていますからな。あなたのことも、今回の捜査に加わったことも当然知っております。しかし・・・」
東心悟が目を向けると、倒れていたさ3人の男たちがようやく立ち上がってきた。
もちろん完全に戦意を失っている。
「ウチの会員の中には彼らのように、警察の我々への疑念を面白く思わない者も居るのです。悪気ではないのですが罪は罪です。どうぞ彼らを逮捕してください」
「いや、彼らには十分に痛い思いをしてもらいましたから、それには及びませんよ。それに僕は警察ではない」
・・・何を勝手に決めてるのよ?
一瞬、真奈美は思った。捜査をしているのはS.S.R.Iであり、本来なら警察を呼ぶべき状況なのだ。
しかし考えてみればここは御影に任せてみる方が良いかもしれない。
怪物 対 怪物!!
今ここにふたりの超人的サイキックが対面しているのだ。
「こんなことがあった後ですが、立ち話もなんですから、コーヒーでも飲みながらお話しませんか?」
「いいですね。ここのコーヒーは美味いと聞いてますから楽しみにしていたんです」
御影は人懐っこい笑みを浮かべた。
「あれ?おじさんはこないだのおじさんじゃないね?誰?」
東心悟と手をつないで立っていた学が御影に尋ねた。
御影は学の目線まで屈んで答えた。
「はじめまして。おじさんは御影純一っていうんだ。学君だね、よろしく」
御影はさらに相好を崩した。
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