第10話 サイキックチーム出動

御影純一と宮下真奈美による本格的な捜査は翌朝から開始した。

探偵でもある御影の捜査手順は、意外にもいたって真っ当なものであった。


※作者注:捜査とは通常は警察による調査を指すので、私立探偵である御影の場合は調査と呼ぶのが正しい。しかし本件は警察の内部組織である科捜研の関わる事件のため、捜査という用語を使用した。


まずは容疑者である東心悟のプロファイルを読み込んだ。

現在45歳の東心悟はもともと証券会社に勤める平凡な会社員だった。

35歳のとき同僚であった植山千里うえやまちさとと結婚し、2年後に息子である学が生まれた。

40歳を過ぎてから投資家としての非凡な才能を発揮し始めた東心悟は、瞬く間に巨額の資産を築き上げ43歳で会社を退職した。


「おそらくこの頃、サイキックとしての能力に目覚めたんだろうね。しかしこんなに遅咲きなのは珍しい。普通は子供のうちに能力に目覚めるものなんだけどね」


会社を退職した東心悟は間もなく『自分が投資で成功したのは宇宙の声が聞こえるからである』と公言しはじめ、宗教法人コスモエナジー救世会の教主となる。

それとほぼ同時期に、妻であった千里と離婚。学の親権は悟が取得した。


「例のオウル事件以降、宗教法人格を取得するのは難しくなったんだけど、闇では高額で売買されているのさ。コスモエナジー救世会も東心悟が有り余る資産に物を言わせて買い取ったものだ」


御影はS.S.R.I本部のデスク=ちゃぶ台に東心悟のプロファイルが綴じられたファイルケースを置いた。


「敵を知り己を知れば百戦危うからずだからね、まずはとりあえずえず宮下君、離婚した東心悟の元妻・植山千里にでも話を聞きに行こうかな」


「わかりました。すぐに植山千里の所在を調べます」


真奈美はそう答えると、ノートパソコンを広げた。


「それから田村君に確認だ」


「なんだい?御影君」


「二人の被害者の死亡時の東心悟のアリバイは不確かなんだよね?」


「本部にある瞑想室で瞑想していたらしい。一応、本部の職員の証言はあるが、東心悟の側近みたいな連中だからね、信用できない」


「二人目の被害者の家山は公園でジョギング中に死亡したそうだが、最初の被害者の牧野が死亡したのは、たしか**デパートで家族と買い物をしていたところだったよね?防犯カメラに決定的瞬間が残ってるんじゃないかな」


「なるほど、牧野のときは事件性が無いと判断されていたから、そこまで調べてなかったかもな。警察に掛け合うけど、それが参考になるのか?」


田村が尋ねると、御影は少し思案顔のまま考えを述べた。


「もしもだけど、僕が誰かの心臓の血管を捻じ曲げるとしたら、少なくとも標的ターゲットが肉眼で見える場所に居る必要がある。つまり上手くすれば防犯カメラに東心悟が映っているかもしれない」


「映っていたら東心悟が犯人にほぼ間違いないってことだな」


「そういうことだ。しかしもし映ってなかったらややこしいよ」


「というと?」


「映ってなければ考えられる可能性は3つ。東心悟はカメラの死角に居た、東心悟は犯人ではなかった・・・そしてもうひとつ」


御影は深呼吸をするように大きく息を吐きだしてから話を続けた。


「東心悟は遠隔から他人の心臓の血管を捻じ曲げることができる・・・僕を凌ぐ力を持つサイキックだということだ」


パソコンを操作していた真奈美は一瞬、息を呑んだ。



それから数十分後、宮下真奈美と御影純一の新生捜査チームは真奈美の運転する乗用車で、植山千里がパート勤務しているスーパーマーケットに向かっていた。

運転している真奈美が、助手席の御影に話しかける。


「あの、御影さん。個人的な事なんですが、質問していいですか?捜査チームのパートナーとして御影さんの事をもう少し知っておきたいんです」


「ん?ああどうぞ。話せる範囲でいいなら答えるよ」


「今回の事件って、御影さんには直接関係ないですよね?どうしてこんなに積極的に協力してくれるのですか?」


「うーん・・それは説明するのが難しいんだけど、僕の過去に対する清算というか、けじめというか・・・とにかくこの種の事件は看過できないんだ」


「あまり詳しくは話したくなさそうですね。では別の質問にします。所長は御影さんが稀代のサイキックだと言ってましたが、どんな能力をお持ちなんですか?」


「いちばん強いのは念動力サイコキネシスだね。他には精神感応テレパシー、透視と千里眼クレヤボヤンス、あまり強くはないが軽い予知ができることもある・・そんなところかな」


「そんなに・・?驚いた。。」


「驚くことはないさ。むしろサイキックの能力がひとつだけということはまず無いんだ。宮下君だって気づいてないだけで、念動力サイコキネシスが使える可能性は高い。今度訓練してみよう」


「はい、お願いします」


「あとね、君の『サトリ』の能力は精神感応テレパシーの受信能力が強すぎて暴走している状態なんだ。訓練すれば発信もできるようになるから、僕たち携帯電話も無線も不要になるよ」


「私、自分の能力がそんなに実用的なものだなんて、考えたこともありませんでした。あと瞬間移動テレポーテーションはどうですか?出来たら便利そうですけど」


瞬間移動テレポーテーションは出来ないなあ。出来るって人を見たこともない。あれはたぶん、架空の能力なんじゃないかと思うよ」


「そうですか・・ちょっと残念。あ、目的地に着きました。このスーパーです」


ふたりを乗せた乗用車は、スーパーマーケットの駐車場に滑り込んだ。

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