HAPPY END

「英二さんは誰を選ぶんですか?」


 カリンちゃんのその言葉を俺は返す事が出来なかった。


 誰かを選ぶ。それは正解なのか?

 誰か1人を選んでどうなる。

 3人は仲良しだ。それを俺が壊していい理由なんてない。


 ならいっそ。


 誰も選ばなければいい。

 1ヶ月間皆と楽しく過ごせる。だが、その分、思い出ができお別れが悲しくなる。


 でもそれでいいのかもしれない。

 俺には選ぶ覚悟がないんだ。

 ならこれが最善。


「俺は誰も選びません」

「本当にいいんですか?」

「はい」

「では1ヶ月後またここに来ます」

「分かりました」


 ロリ神様は静かに森の中に消えていった。


「本当に良かったんですか?」

「ああ。俺が決めた事だし。それに最後は皆と一緒がいいしね。でもその所為で皆最後には俺の記憶を..」


「その事でちょっといいですか?」

「どうしたの? カリンちゃん」

「英二さん。残り1ヶ月、私たちと関わらない様にしてください」

「カリン、どうしてそんな事言うの」

「このまま一緒にいると最後が悲しいからです」

「でもそんな風言わなくても」

「だったらどうしろって言うんですか!」

「それは..」


「えっと、悪いけどそれは出来ないよ。カリンちゃん」

「どうしてですか!」

「だって俺は皆が好きだからさ。だから残りの時間も皆と過ごしたい」

「英二さん」

「えーじがそう言うなら、そうしよう」

「シアちゃんはいいんですか!」

「..いいわけない。でもえーじが皆で過ごしたい! って言ってるんだよ! それならそうしてあげるべき! えーじが好きならそうするのが1番」

「..ニーナちゃんはどう思うんですか?」

「どっちも正しいと思う。でもやっぱりお兄ちゃんが最後は決めるべきだと思う」

「ニーナちゃん..」

「カリンはえーじと一緒にいたくないの?」

「居たいに、決まってます」

「なら」

「..分かりました。英二さんの好きにしてください」


「ありがとう、皆」


 こうして長く短い1ヶ月が始まった。


◼◼◼

1日前


その日は早く目を覚ました。外はまだ薄暗い。

皆を起こさないように俺は外へ出た。


「今日で終わり、か」


ロリ神様が帰ってからの1ヶ月は早かった。

毎日が楽しく、変わらない日々を皆と過ごしていた。

けど、それも今日で最後。


◼◼◼

家に戻ると皆起きていた。


「おはよう、皆」

「おはよう、えーじ」

「おはよう、お兄ちゃん」

「おはようございます。英二さん」


いつもと変わらない。


「ねぇ、皆、ちょっといいかな?」

「どうしたの? えーじ」


俺は皆にそっと抱きついた。


「えーじ!」

「お兄ちゃん!」

「英二さん!」


「俺は、皆のおかげで幸せだよ。本当に、ありがとう」

「えーじ。シアも幸せだよ」

「ニーナもだよ。お兄ちゃん」

「勿論、私です。英二さん」


「ありがとう、皆。本当にありがとう」


人は変わらなければならない。

例えそれが死んだ後だったとしても。


「じゃあ、遊ぼうか。皆」

「「「はい!」」」


 ◼◼◼

 1ヶ月後


「それでは英二さん、準備はよろしいですか?」

「はい」


「皆、ありがとう。この1ヶ月間楽しかったよ。これでお別れって言うのは何だか寂しいけど」


 皆、下を向いて黙っている。


「では行きましょう」

「はい、お願いします」


「..えーじ、これ」


 出発間際にシアちゃんから渡されたのは手紙だった。


「シアたちからの、気持ち。持っていって」

「ありがとう、皆」


「皆、大好きだよ」


 この言葉を最後に俺はこの世界を後にした。



 ◼◼◼

 目を開けるとそこは初めてロリ神様と会った場所だった。


「では少しお待ちください」


 そう言ってロリ神様は奥へ戻っていった。


「そうだ、手紙」


 開けると1枚の絵が入っていた。


 そこには..


 皆と一緒にいる絵が書かれていた。

 そして下には

 大好き。

 と書かれていた。


 そこからは涙が止まらなかった。


「英二さん、準備が整いました」

「ロリ、神様」


 もう、皆には会えない。

 そしてもう覚えてはいない。


 俺は流れる涙を止め。


「ロリ神様、来世までお願いします」

「分かりました。では」


 俺はロリ神様に連れられ、奥へ部屋へきた。


「ここにあるカプセルに入って頂きます。そして次に目を覚ます時は来世です」

「分かりました。それでそのこれって」

「絵ですか。普段なら禁止なのですが、今回は特別に許可します。ただし、その絵を英二さんが持っているわけではありません。来世のどこかのタイミングで英二さんの手元に来ます。それだけは理解してください」

「ありがとうございます。じゃあお願い、します」


 俺はカプセルの中に入った。

 そしてロリ神様が蓋を閉め。


 俺は静かに眠った。大切な絵を抱きしめながら。


◼◼◼

俺は倉田悠。小学校で教師をしている。


「あっ、悠せんせー」

「どうしたの?」

「これ、3人で書いたんだ! せんせーにあげる!」


渡されたのは1枚の絵だった。


「じょーずに出来てるでしょ!」

「うん。上手だよ」


本当に上手だ。


絵には俺と3人の女の子が描かれていた。


       HAPPY END

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ご愛読ありがとうございました。この空白の1ヶ月は「にちじょう」の中に入っています。

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ロリだらけの世界で甘やかされてます。 穂志上ケイ @hoshigamikei

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