カリンちゃんとデート

「お待たせしました!英二さん」


 玄関で待っているとカリンちゃんが走ってきた。


「どう、ですか?」


 いつもの服とは違い、今回は薄いピンクのワンピースと桜の髪飾りを着けている。

 まさにデートコーデっぽい。


「す、凄く似合ってるよ。うん。可愛いよ!」

「本当ですか!」

「ああ。本当だよ」

「それなら頑張った甲斐がありました!」


 俺の為にそんなに頑張ってくれたのか。


「それじゃあ、英二さん。行きましょうか」

「そうだね」


 そう。今から俺たちはデートに行くのだ。


 デートに行くと言ったら必ず2人が『ズルい!』と言ってくるのだが、今回はゲームで約束した事なので、何も言ってこなかった。


「それで、町とかに行かなくてもいいの?」

「はい。私はこの森で英二さんとデートがしたいので。それに町だと他の人に見られて、英二さんに変な事出来ませんし」


 えっ?俺今から変な事させられるの?


「英二さん、こっちですよ」


 そう言ってカリンちゃんは俺の腕に抱きつき、森の中へと進んでいった。


「ど、どこに行くの」

「いいから、ついて来てください」


 言われるがまま、俺はカリンちゃんにつれられていった。


 暫く森の中を歩き続けて、見えてきたのは小さな広場だった。


「こんな所、あったんだ」

「どうです?ここならゆっくりお話出来ますよね」

「そう、だね」


 俺たちは近くのベンチに座った。


「英二さん..」

「なんだい、カリンちゃん..」


「私とキスしてください!」

「......」

「私を彼女にしてください!!」

「......」

「彼女飛ばして、結婚してください!!!」

「......」

「くっ。斯くなる上は..」

「ちょ、ちょっとカリンちゃん。一旦落ち着こうか」

「落ち着いてられません!それに、どうして何も反応してくれないんですか?英二さん!」


「どうしてって言われても..」

「英二さんは、そんなに私の気持ちが受け入れられないのですか?」

「そんな事はないよ!あれから日数も経ってカリンちゃんの事も色々知れた。と俺は思ってる。それに、気を抜いたら受け入れそうなぐらいさ」

「そ、それじゃあ!」


 何か思い付いたのか、カリンちゃんは立ち上がり、そして俺の膝の上に乗ってきた。それも向かい合って。


「ちょ、何してる!カリンちゃん」


 カリンちゃんは俺の耳元に口を近づけ、小さな声でささやいた。


「英二さん。大好きです」

「ちょ、カ、カリンちゃん」


 抵抗するが、それでもカリンちゃんはささやくのをやめず。


「英二さん。このまま2人で遠いどこかへ行きませんか?そして私と..」

「......いいよ」

「えっ?」

「だから、いいよ」

「えっ?えっー?」

「どこに行くの?カリンちゃんの家?それとも」

「ま、待ってください。私、心の準備が。それに..」


「....ぷっ。あはぁぁ。冗談だよ。カリンちゃん。ちょっとからかっただけだよ」

「......」

「あれ。カリン、ちゃん?」


 途端に静かになったカリンちゃん。


 今のはちょっとヤバかったかな。


「..英二さん。覚悟してください!」


 そう言ってカリンちゃんは俺にキスをした。


 1・2・3・4・5

 5秒経つとようやくカリンちゃんは唇を離してくれた。


「どうです?」

「..ど、どうって言われても、ドキドキしたとしか」

「ドキドキしたんですか!」

「う、うん」


 その言葉を聞いた瞬間、気が抜けてカリンちゃんは俺に抱きついてきた。


「その、最近英二さんは私の事どう思ってるのかなって、気になってしまうんです。私を異性として見てくれてないかなって」

「そんな事思ってたんだ..」

「だから、英二さんの今の気持ちを知りたくて」


 それで、あんな事を。


「カリンちゃん。にはカリンちゃんを異性として見ることは出来ない。勿論、シアちゃんやニーナちゃんも一緒だ。けど、3人とも大好きだ!って気持ちはある。だから、今までのカリンちゃんでいてほしい。そして、俺の気持ちが固まったら、その時返事を聞かせてほしい。どう、かな?これが俺なりの考えてなんだけど」


「..私、待ってます!英二さんがその日を迎えれるまで」

「ありがとう、カリンちゃん」

「いえ。それじゃあ、帰りましょうか」

「うん。でもその前に降りてくれない?」

「だーめーです。その日まで待つんですからせめて今日はわがまま聞いてください」

「..わ、分かったよ」

「あっ。お姫様だっこでお願いします」

「......」


 俺はカリンちゃんを抱き上げた。

 そして、もと来た場所へと歩いていった。


「英二さん。キスの事内緒にしてくださいね」

「どうして?」

「だって、2人に言ったら..」

「分かった。じゃあ2人だけの秘密だね」

「はい!秘密ですね」


 その後、家に帰ると2人が『お姫様だっこ、ズルい!』と言って、2人にしたのは言うまでもない。

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