ニーナ1-6

 雨がやみ、シアちゃんたちは外へ走り出していった。

 2人で遊びに行ったのだ。

 せっかく友達になれたんだ。

 そんな思いから俺は後を追いかけなかった。


「良かったね。ニーナちゃん」


 ほっとした所為か、それとも体を暖める為に着けた暖房の所為なのか、うとうととし始めてきた。


「少し、寝るか」


 リビングのソファーに横になり、目を閉じた。



 ◼◼◼

 ペチペチ。


 ん?シアちゃんたちが帰ってきたのか?起きないと...。


 目を開けると、女の子がいた。

 髪は胸ぐらいまでの長さで、とても綺麗に手入れされている。

 少し大人びた顔立ちと、膨らみかけの胸。12歳ぐらいかな?

 そして、どことなくあの人に似ているような......


 目があった。


「あっ、起きたんですね」

「君が、起こした、よね?」


 起き上がろうとすると、女の子に止められた。


「起こしちゃった事は謝ります。でも、起き上がっちゃダメですよ。せっかく私が膝枕をしてるんですから」


 そう言われてみると、確かに俺は女の子に膝枕されている。

 てか、何で?

 まぁ、いいか。


「それで、君はここで何してるの?」

「うーん。それは言えないんですよね。でも1つだけ言えるのは、......私は貴方の事が好きだ!って事ですかね?」

「そ、そうか」


 知らない子に『好き』って言われたのは初めてだ。なんと言うか、不思議な感じた。

 けど、この子がいっている好きは異性が好きの『好き』じゃない。


 あくまでlikeの方だ。勘違いするな、俺。


「むー。もしかして、伝わってない?私がさっき言った好きはlikeじゃなくて、loveの方だよ!」

「えっ?...なんだって!」


 俺の事が好き?異性して。あ、あり得ないだろ。こんな会って間もないが俺を。第一俺のどこがいいんだ。


 俺は慌てて起き上がった。


「あっ、ちょっと」

「一体、何が目的なんだ」

「何度聞いても一緒だよ。秘密なんだ。けど、私の好きって気持ちは貴方に絶対伝える」


 そう言って、彼女はソファーに立ち上がり、ゆっくりとその綺麗な顔を近づけ、磁石がくっつくようにキスをしてきた。


 柔らかい唇の感触が数十秒。

 彼女から唇を離し。


「こ、これで...分かりましたか。私の気持ち」

「......あ、ああ」


 お、女の子にキス、された。しかもこんな小さい子に。


「ふふっ、私のファーストキス、喜んでもらえて良かったです。それじゃあ、そろそろあの子たちが帰ってきそうなので失礼しますね」


 そう言って、彼女は窓から出ていった。


 い、一体何だったんだ。


 ふと力が抜け、ソファーに座り込んだ俺。


 すると、シアちゃんたちが帰ってきた。


「えーじ、ただいま」

「お兄ちゃん、かえってきたよー!」


「お、おかえり」


「どうしたの?えーじ、疲れてる?」

「そ、そんな事ないよ」


 さっきの事は秘密にしておこう。

 なんだか、怒られそうだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る