ニーナ1-2
「「いただきます」」
着替え終わると俺たちはリビングへと向かい朝食の準備をし始めた。と言っても出来たものを机に並べるだけだが。
今日の朝食はパン、ベーコン、スクランブルエッグだ。
この料理の頼んでもってきたのだろうか?
まぁ、シアちゃんには教えてもらえないし、この事はもう考えないようにしておこう。
ああ、それにしても久しぶりにまともな朝食かもしれない。
生きていた頃はエネルギーゼリーとかすぐに食べれるものが多かったしな。こういう温かい食べ物って何だか心まで温かくなるよな。
「えーじ、おいしい?」
「ああ、むちゃくちゃうまいよ!」
「そう。よかった。あっ......ねぇ、えーじ。ちょっとこっち、来て」
「どうしたの?シアちゃん」
「いいから、来て」
席を立ちシアちゃんの方へと向かうと
「隣に座って」
言われた通りシアちゃんの右隣に座り
「えっと、シアちゃん─『えーじ、じっとしてて』─は、はい」
するとシアちゃんは椅子から少し立ち上がり、両手を俺の肩にのせ、ゆっくりと俺の顔へ近づいてきた。
「ちょ、シ、シアちゃん。いったい......」
しかし、シアちゃんはどんどん俺の顔へと近づいてくる。そして...
ペロッ
えっ?
さらにペロ、ペロと、シアちゃんは俺の左唇を何故かなめている。
「ねぇ、シアちゃん。一体何をしているんだい?」
「えーじの口にケチャップが付いてたの。だから、シアがとってあげたの」
「なめて?」
「うん」
ちょっと、と言うかだいぶドキドキした。シアちゃんの顔があんなに近くに。改めて見ると綺麗な顔だ。それにしてもあんな事どこで覚えるんだ?ホントに。
「どうしたの、えーじ。ぼーっとして」
「あ、いや、何でもないよ。そ、それより冷める前に早く食べちゃおう」
「う、うん」
◼◼◼
「「ごちそうさまでした」」
食べた皿をシアちゃんと一緒に洗っていると。
「ねぇえーじ今日は何する?」
「えっと、実は行きたい所があるんだ」
「どこ?」
「昨日の丘に行きたいんだ」
シアちゃんに案内され、家から5分の丘へと向かった。
昨日あんなに動き回って探した所がこんなに近かったなんて。
丘の頂上へ着くと心地よい風が出迎えてくれた。
俺たちはお互いに背中を向けあって、座りこんだ。
「シアちゃん。教えて欲しいんだ。俺が来るまでの話を」
「..分かった。......前はね、シアの他に三人の子が家に居たの。毎日楽しく過ごしてたんだけど、一人の子が男の人を連れてきたの。最初は初めて見る男の人だったから戸惑ってたけど、徐々にその人に皆なついていった。シア以外は」
「それはどうして?」
「....怖かったの。その人が。上手く言えないんだけど、その人と仲良くなっちゃうと、変になりそうだったの。それから暫くして、皆は突然家から居なくなってたの」
「それって..」
「きっとシアは皆に捨てられたんだよ」
「どうして、そう思うの?」
「シアね、人と話すの苦手だし、いつも皆に迷惑かけてた。だから皆嫌になってどっかに行っちゃたんだよ」
「....ねぇ、シアちゃん。泣いてもいいんだよ」
「えっ?」
「きっとシアちゃんの事だ。皆がどこかに行った泣いてないでしょ。いいんだよ。泣いても。泣いて周りの人に助けてもらえばいいんだから」
「ぐすっ。じゃ、じゃあ、シアはえーじ、に泣きついてもいいの?」
「いいよ。シアちゃんの気が済むまで俺がついててあげる」
シアちゃんの瞳から大きな涙が流れだした。
「......っ....ぐすっ。うわぁ~ん。えーじ。シ、シアね。一人で寂しかったの」
「そうか。よく一人で頑張ったね。シアちゃんは本当に偉いよ」
「ぐすん......そ、それでね、えーじはどこかへ、行ったり、しないよね?」
「当たり前だよ。シアちゃん一人残して、どこかへ行くなんて事絶対にしないよ」
「...本当?」
「ああ、本当だよ」
「じゃあ、約束─『おーい。おにーさん!』─おにいさん?」
声が聞こえてくる方を向くと女の子がこちらに向かって来ている。
そしてあっという間に俺たちの前まで来た。
「あっ、君は昨日の」
「覚えててくれたんだ。それより、おにーさんにお願いがあるの」
「お願い?」
「うん。えっとね。...ニーナの、おにーちゃんになってほしいの!」
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お久しぶりです。受験が終わったのにも関わらず更新が遅れてしまい申し訳ありません。これから頑張って更新していきますのでよろしくお願いします!
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