シア1-6

 俺はすぐさまシアちゃんの後を追いかけた。

 脱衣場に向かうと、もうシアちゃんの姿はなかった。

 急いで水着を脱ぎ、先ほど着ていた服に着替え、一階へと降りると、リビングには脱ぎ捨てられたシアちゃんの水着があった。


「シ、シアちゃん!」


 返事がない。俺は全ての部屋をくまなく探し回った。


 ......いない。まさか!

 靴がない。

 俺はドアを開け、外へと飛び出した。


 時刻は既に6時半を回っていて、少し辺りは薄暗い。こんな森の中で夜を過ごすのは危ない。なんとしても日が暮れるまでに見つけないと。


「シアちゃん!どこに居るんだい!出てきてくれ~。シアちゃ──ん!」


 あまり遠くには行っていないはずだ。

 俺は辺りを必死で探し回った。

 だが、結局見つからず、時間だけがただ一刻と過ぎていき、気づけば、辺りは暗くなっていた。暗すぎて、一メートル先の景色すら見えやしない。


 くそ。どうすれば......



「ねぇ、おにいさん。こんなところでなにしてるの?」


 振り返ると、そこには茶髪で髪型はミディアムのそして、薄紫色の綺麗な瞳をした女の子が立っていた。


「......えっと、実は女の子を探しているんだ。銀髪で身長は君より少し大きい子なんだけど」


「それなら、この先の丘に居たよ!」

「ほ、ホントかい!」


「うん!なんだか、一人でさびしそうだったよ」

「そうか。教えてくれてありがとう!」


 俺は少女の言う丘を目指して走り出した。



。おにいさん」




 ◼◼◼


 少女に言われた通り丘へ向かうと、そこには確かにシアちゃんが居た。


 俺はシアちゃんの方へと近づき、声をかけた。


「シア......ちゃん」

「......ねぇ、えーじ。シアね、ずっと1人だったの。えーじと会うまで」

「えっ?」



「まわりにはだれもいない。ずっと本だけよんでた。だからね、えーじと逢えて嬉しかった」

「俺も嬉しかったよ」

「でもね。シア、人との関わり方知らない。その所為でえーじを困らせた」


 いつもは感情の少ないシアちゃんがとても感情的になり、自分の思いを語っている。


 でもそれは悪い事じゃない。大人になればそれは次第に出来なくなる。何故それが出来なくなるのか。それは受け止めてくれる人がいないからだ。だから俺はシアちゃんを受け止める。


「そんな事ないよ」

「嘘だよ。だってシアは普通じゃないし、えーじの喜ぶ事何も出来ない」



「......それでも、いいんじゃないかなって思うよ。俺は」

「どうして?」

「それはね、俺はシアちゃんと一緒に居れるだけで幸せだからだよ」


「本当に?」

「ああ、だからこれからもずっ─────と俺と一緒に居てくれ!」



 気づくと、シアちゃんは涙目になっていて、今にも泣き崩れそうだ。


「......うん。シア、もずっといっしよに...ぐすん、えーじのそばにいる」


 するとシアちゃんは我慢していた涙が瞳から零れだした。


 そして、たっぷり5分間泣き疲れた所為か眠ってしまった。


 俺はシアちゃんをゆっくりとおぶりシアちゃんの家へ向かって行くのだった。



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