シア1-4

「えーじ、これで、いいの?」


 振り向くと、そこにはシアちゃんが立っている。


「ああ、むちゃくちゃ可愛いよ」


 そう。シアちゃんは今水着なのだ。

 フリルスカートの薄く青い色の水着を着ている。少し大人っぽい水着だが、シアちゃんのクールな表情とマッチしていて、違和感なく、着こなしている。


「えーじも、にあってるよ」


「あ、ありがとう」


 俺はシンプルな無印の黒水着だ。まぁ、そんなことより、風呂に入るのにこんなにも大変だなんて、思ってもみなかった。



 ─10分前─


「水着で風呂に行こう」


「みずぎで?」


「ああ。その方が俺が困らないし」


 水着だったら裸を見なくて済むし、何より健全だ。


「.....?......よくわかんないけど、みずきなら、えーじといっしょにはいっていいの?」


「そうだよ」


 シアちゃんはうーんと考えだした。


「わかった。じゃあ、いまからみずき、たのんでくる」


 そう言って、シアちゃんは二階の方へ上がって行った。


 頼んでくる?水着を?誰に?

 そんな疑問が出てきたが、シアちゃんが居ないので確認はできないが。


 それから一分も経たないうちにシアちゃんは二階から降りてきて、水着を持ってきた。


「これ、えーじの」


 渡された水着は黒色の普通の水着だ。サイズも俺が使っていた大きさだ。


「シアちゃん。この水着どうしたの?」


「────ひみつ」


 秘密、か。まぁ、ここで問い詰めても、シアちゃんがかわいそうだし。またいつか聞かせてもらうことにしよう。


 さぁ、水着を持って着替えてこようと思っていたら、シアちゃんはワンピースを脱いで、既にシャツとパンツだけになっていた。

 俺は瞬時に目をそらし、シアちゃんに質問した。


「シ、シアちゃん!何をしてるんだい」


「なにって、きがえ、だけど」


「それは分かってるんだけど────そ、そうだ。俺、別の部屋で着替えて─『まって』─シアちゃん?」


「おねがい。ここにいて」


「......分かったよ」


「ありがと。えーじ」


 それからお互いに背中を向けて着替えることなった。


 そして、今に至る訳だ。


「それじゃー、えーじ、おふろいこー!」


 シアちゃんに連れられて二階に上がると3つの扉があった。

 左から順にキッチン、風呂、トイレだそうだ。

 真ん中の扉を開けると、温泉なみの脱衣場と入浴場が見えた。


「これって、もう家の風呂ってレベルじゃないだろ......」


「えーじ、びっくりしてる?」

「ああ、びっくりしてる」


 こんなデカイ家に温泉なみの風呂とか、どこぞの金持ちだよ!


 そんな事を考えて、入り口で、ぼーっとしていると『はいらないの?』とシアが聞いてきた。


「あ、ああ、入るよ」

 そう言って、俺は入浴場へ足を踏み入れた。


 鏡のように光っている水面は俺とシアちゃんの姿をくっきりと写していた。


 見渡す限り、風呂は全部で4つ。そのうちの一つは露天風呂だ。


「えーじ、こっち」


 シアちゃんに誘われて、俺は一番大きな浴槽へ入った。



 しっかり肩まで浸かり、そして、シアちゃんは俺の前に座りだした。


 温かい湯が心まで染み渡り、今までの疲れを癒してくれる。久しぶりの風呂だ。いつもシャワーで済ましていたが、湯船に浸かるというのはこんないにも、疲れが癒えるものなのか。


「えーじ、どう?」


「あー、最高に気持ちいいよ」


「よかった。じゃあ、えーじ。いまからもっといいことしよ?」

「えっ? いい事?」

「そう、いいこと」


 なんだか怖いんだけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る