5-7 時空城での夕食

 目が覚めると、俺は立派な天蓋付きのベッドに寝かされていた。

 俺は一体何を……。


 そうだ!

 武神グラディオス様と戦って、負けた。

 それで気を失ったんだ。


 ゆっくりと体を起こし、体に異常がないか確認をする。

 手、足、目……うん、問題なし。


(凄く立派な部屋だな……)


 恐らく時空城の一室なのだろう。

 立派な調度品の揃った部屋だ。

 大きなガラス窓からは外の様子が見える。

 森が広がり小鳥の声が聞こえる。


 しばらくボンヤリと部屋の中を見ているとノックがして、メイドさんが入って来た。


「失礼しまーす。お目覚めですか?」


「あ、はい。あの……、俺は、どれ位寝ていましたか?」


「一時間くらいですよ。あなたは武神グラディオス様に気に入られましたね」


「そうなのですか?」


「これまで時空城にいらした方は、武神グラディオス様に膝をつき、頭を垂れ、教えを乞うていました。けれど、あなたは戦いを挑まれたでしょう?」


「ああ……まあ、あれは……早く帰りたかったので……」


「理由が何にしろ武神グラディオス様は、『歯ごたえのある者がやって来た!』と、お喜びです。さあ、夕食が出来ましたので、食堂へご案内いたします」


 足の長いふかふかの絨毯に足を取られそうになりながら、メイドさんの後をついて行く。

 案内された食堂は、無駄に広い。

 中央に大きなテーブルがデンと鎮座していて、武神グラディオス様が椅子に腰かけ待っていた。


「うむ。目が覚めたか、ナオト・サナダよ。こちらに来て座ると良い。食事にしよう」


「はい」


 俺も腹が減っていたし、ここまで来たらジタバタしても仕方がない。

 素直に武神グラディオス様の言葉に従う事にした。


 メイドたちが料理を運んで来る。

 運ばれた料理は、何とお寿司だ!

 桶に入った本格的な握り寿司が出て来たぞ!


「武神グラディオス様! こ! これは!」


「うむ。お主が気を失っている間に、記憶を見せてもらった。お主の好きな料理を、城の料理人に再現させたぞ」


 なんと!

 優秀な料理人だな!


 お箸に小皿に入った醤油も運ばれて来た。

 お箸を持つ。

 さあ、何から食べてみようか。

 最初はマグロの赤身から……。


「ああ! 美味い!」


 ちゃんとした寿司だよ!

 まさか、寿司を食べられる日が来るとは思わなかった!


「うむ。寿司と言う料理は、なかなか美味いな」


 武神グラディオス様も箸を使って寿司を食べている。

 兜をかぶったまま食べるとは……、目茶苦茶器用な人だな。


「食事は、戦う為の体を作る。訓練の一つと思い遠慮なく食すが良い」


「はい! ありがとうございます!」


 腹いっぱい寿司を食べた所で、お茶が出て来た。

 湯呑にお寿司屋さんで出て来る粉茶が注がれている。

 食事に満足して、まったりお茶を飲んでいると、武神グラディオス様から今後のお話しだ。


「お主は異界から来たのだな? 異界から来た者を鍛えるのは初めてだが、やる事は変わらぬ」


「はあ。やっぱり走ったり、体を鍛えたりするのでしょうか?」


「うむ。お主の場合、戦い方は面白いが、スキル頼りな所がある。まずは基礎体力を向上させるのが良かろう」


 予想はしていたが、厳しい訓練になりそうだな。

 スキル頼りと言う指摘は、その通りだな。

 魔王と戦うなら基礎能力全般の底上げは必要って事か。


「よろしくお願いします」


「うむ。任せておけ! 魔王を瞬殺できるように鍛え上げてやろう。明日からの訓練に備えて、今日はゆっくり休みが良い」


 魔王を瞬殺って、どれだけ強くなれば良いの?

 俺は明日からの厳しい訓練を想像してちょっとゲンナリしたが、開き直って眠る事にした。


 さあ、強くなろう!

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