4-16 共闘 ルーレッツとゴルゾ傭兵団
俺がスキル【パワーショット】をのせた矢が、音速でハンスに襲い掛かる。
しかし、ハンスと矢の間に『ハンスと仲間たちの』剣使いが立ちはだかった。
「シュア! シャ、シュア!」
複雑な掛け声と共に剣使いは、細身の剣を両手に持ち高速で円を描くように回転させた。
ギン!
怒りに任せて放った俺の矢は、あっさり叩き落されてしまった。
ゴルゾ傭兵団リーダーのヴェルナさんから、すかさず注意が飛ぶ。
「落ち着け! 冷静になれ! 教えただろ? 真っ正面から戦うな!」
「はい!」
そうだ。
今は、ハンスに怒っている場合じゃない。
視界の端にカレンの姿が見えた。
冒険者ギルド職員のビアッジョさんを背負って、こちらに退避している。
まず、ビアッジョさんの退避が現在の優先事項だ。
「エマ! アリー! 目標は、黒ローブだ!」
「ポイズン!」
「ファイヤーボール!」
エマは、『教団地獄の火』の黒ローブの剣士に、闇魔法『ポイズン』を放った。
黒ローブの剣士が、剣を手放し、喉をかきむしる。
そこへ、後ろにいた黒ローブが魔法を放った。
銀色の杖を取り出し、苦しがる剣士に向け解毒の聖魔法を放つ。
「キュア! ああっ!」
黒ローブの神官が聖魔法『キュア』を放った隙を、『ゴルゾ傭兵団』は見逃さなかった。
黒ローブの神官に投げナイフが深々と刺さり、血を吐き倒れた。
ヴェルナさんがニヤリと笑う。
「まず、回復役から潰さねえとな。さあ、ドンドン行こうか!」
アリーの放ったファイヤーボールは、もう一人の黒ローブの剣士を襲った。
だが、黒ローブの剣士は、ファイヤーボールを剣で打ち消してしまう。
「ぬっ! あの剣は……魔法が効かぬか?」
恐らくはアンチマジック処理済みの剣だろう。
それにしても、高速で飛来する火の玉を剣で打ち消すとは、レベルが相当高い証拠だ。
今回の黒ローブも相当手強そうだ。
初撃で回復役を一人倒せたのは大きい。
横目で『ハンスと仲間たち』の方を見ると、『アドリアン・アドニス』と『謝肉祭の乙女』の2パーティーが相手取っていた。
形勢はこちらが有利で、『謝肉祭の乙女』の怒涛の魔法攻撃を受け『ハンスと仲間たち』は、防戦に追い込まれている。
敵を分断できているのは、好条件か?
俺たち『ルーレッツ』と『ゴルゾ傭兵団』は、こちらの黒ローブに集中しよう。
カレンが冒険者ギルド職員のビアッジョさんを連れて戻って来た。
「連れて来たニャ!」
「カレンさん。ありがとうございます。助かります」
「後ろへ下がって! ビアッジョさんの護衛はセシーリア姉さんとカレンがつけ!」
「「了解!」」
ビアッジョさんを収容した所で、ヴェルナさんから指示が来た。
「ナオト! 上からだ!」
「了解! 【速射】! 【連射】! 【曲射】!」
俺はスキルを発動させて、素早く二射した。
黒ローブの頭上へ向けて山なりの軌道で矢を二本放ったのだ。
黒ローブの一人が懐から短弓を取り出した。
あいつ弓士か!
黒ローブの弓士は、短弓に矢をつがえながらスキルを発動する。
「速射! 連射!」
黒ローブの弓士は素早く二射し、俺の曲射を矢で弾き落した。
だが、黒ローブの弓士の顔は上へ向いた。
ヴェルナさんが、この隙を見逃すわけがない。
「今!」
「速射!」
「ファイヤーボール!」
俺が正面から矢を撃ち込み、アリーが火魔法ファイヤーボールを撃ち込む。
「ふん!」
黒ローブの剣士二人が、同時に剣を振るう。
アリーのファイヤーボールは霧散し、俺の矢は軌道を逸らされ天井に飛んで行った。
ちぃ! 失敗か!
「ぎゃあ!」
俺が攻撃失敗と思ったのも束の間、黒ローブの弓士に投げナイフが突き刺さっていた。
投げナイフは胸に深々と刺さり、黒ローブの弓士は血を吐き床に倒れ、それっきり動かなくなった。
今の攻撃は、俺の曲射を囮にして、正面からの矢とアリーのファイヤーボールが本命の攻撃だった。
だが、誰かが俺たちの矢と魔法攻撃を更なる囮にして、ナイフを投げ込んだのだ。
(どこだ……いた!)
前列の盾持ちの間に小柄な男が隠れていた。
気配が小さく、その存在は注意していないと気が付ないだろう。
ニヤリと笑いながら、両手で沢山のナイフを音もなく操っている。
(恐らく盗賊系の中級職だろうな。暗殺スキルが得意なジョブかな……)
だが、これで残りは黒ローブの剣士二人とゴッドフリード枢機卿だけだ。
早期決着がつくか?
ヴェルナさんが、力強く指示を出した。
「よーし! 後衛は潰した! 残りは前衛だけだ! 突撃しろ!」
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