4-8 二日目:レッドドラゴン討伐

 ――レッドドラゴン合同討伐。ダンジョン探索二日目。


「ビアッジョさん。良かったら一緒にお食事しませんか? 俺たちの食事を分けますよ」


「よろしいのですか?」


 二日目の探索も順調に終わった。

 おそらく明日はボス部屋にアタックだ。

 昨日と同じく、安全地帯の隠し部屋で野営を行う。


 俺たちはギルド職員ビアッジョさんの護衛も兼ねているのだが、ビアッジョさんは俺たちから離れて一人で食事をして、一人で寝ている。


 離れた所で寝るのは、女の子ばかりなので気兼ねしたのだろう。

 離れた所で一人食事をするのは……。

 ビアッジョさんの食事メニューが、パンと水だけだからだ。


 俺は気の毒に思って、ビアッジョさんを食事に誘った。


「大丈夫です。料理はかなり多めに用意していますから、ビアッジョさんにお分け出来ますよ」


「いや、それはありがたい! ご馳走になります!」


 事情を聞いたらギルドから支給される食事が、パンと水だけらしい。

 ビアッジョさんは、奥さん子供がいるので節約しないといけない。

 それで、パンと水だけで耐えていたそうだ。


 偉いな、お父さん。


「しかし、ナオトさんの所は食事にお金をかけていますね!」


「ウチは育ちざかりが多いので、食事は手を抜けないんですよ」


 俺たちの食事メニューを見て、ビアッジョさんは驚いている。


 今日のメニュー。

 マカロニとジャガイモのチーズグラタン。

 魔物ホロホロ鳥の塩串焼き。

 パンは、ドライトマトとオリーブのフォカッチャ。

 濃い目のしっかりした味付けのオニオンスープ。

 デザートは、いちごとベリーソースたっぷりのパンナコッタ。


 串焼きは日本の焼き鳥よりも大きくて、シシカバブみたいな感じ。

 串もデカイし、肉もデカイ。


「串焼きうめえな!」


「ニャ! 鳥さん美味しいニャ!」


 レイアとカレンは、ほっとくと三人前は軽く食うからな。

 かならずパンを出して、食事のカサを増すのだ。


「このマカローニと言うのが、摩訶不思議なのじゃ」


「私はこのパン。フォカッチャが気に入りましわあ。オリーブが良くって!」


「デザートが美味しいんだよ!」


 ヴェネタに来て料理のバリエーションが一気に増えたなあ。

 料理はお店に作って貰って、時間経過しないマジックバッグに保存しているので、アツアツで味も良い。


 メンバーたちの食事満足度は、これまでになく高まった。

 俺もかなり食事を楽しんでいる。


 ビアッジョさんと世間話をしながら、食事を続ける。


「他の冒険者の食事事情って、どんな感じなんですか?」


「新人なら乾燥肉とパン。中堅どころになるとマジックバックを買うので、食事事情は一気に良くなりますね。それでも、パンと肉、良くてスープが付くくらいですね」


 なるほどね。

 横目で他の所の食事を見ると、アドリアン・アドニスさんは、パン、肉、スープ。

 紅の戦斧さんは、ヒゲもじゃドワーフさんがマジックバッグから携帯用の竈を取り出して、バーベキューをやっていた。

 隠し部屋の扉を開けているけど、ちょっと煙い。


 やっぱマジックバッグは偉大だな。


 食後のデザートになった所で、俺は昨晩のハンスの事をビアッジョさんに話した。


「――と言う事がありまして、ハンスさんの様子がちょっと怪しい感じです」


「うーん。確かにお話を聞いた限りだと、何か企んでいそうな感じはしますね。しかし、ギルドとしては……動けないですね」


「難しいですか……」


「ええ。怪しいからと言って、何もしていない冒険者を罰するとか、注意するとかは出来ませんねえ……。まあ、ハンスさんは何度も問題を起こしていますが、暴力沙汰や犯罪行為はないのです」


「ああ。ネチネチ文句を言って来るだけですもんね」


「そうなんですよ。ケンカになったりすれば、ギルドとしても色々言えるのですが、あくまでも話し合いの範疇と言う判断ですね」


 それだと冒険者ギルドも何も出来ないよな。


「せっかく情報提供して頂いたのに、何も出来なくて申し訳ないですが……。ヴェネタの冒険者ギルドは、公正、中立を旨としておりますので」


「いえいえ! 気にしないで下さい。俺たちも注意して見るようにしますよ」


 結局、ハンス対策は特に何もできず様子見になった。

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