4-7 一日目:レッドドラゴン討伐

 ――レッドドラゴン合同討伐。ダンジョン探索一日目。


「バインド!」


「速射! 連射! パワーショット!」


「ウォーターボール!」


「オラオラ! 大車輪!」


「さあ! 回復はお任せヨッ!」


「ニャ♪ ニャ♪ ニャ♪」


 ルピアのダンジョン40階層の探索は非常に順調だ。

 3パーティー合同探索なので、先頭を3パーティーで交代しながら通路を進む。

 今は、俺たち『ルーレッツ』が先頭を務めている。


 ここのダンジョンは、『階層数=適正レベル』らしい。

 40階層は、平均レベル40の俺たちに適性な階層なのだが……。


「ルーレッツは、なかなか強いな!」

「レベル40でこれは……規格外だな!」

「バランスも良いよな。前衛2、弓1、魔法使い2、偵察1、回復役もいる」


 後ろを歩く『アドリアン・アドニス』のみなさんは、俺たちに好意的な評価をしてくれている。

 実際問題、俺たちは1戦闘の処理速度が早い。


 今もファイヤーリザード五匹の集団を、秒殺した所だ。


「ほー! ナオト君の所は、なかなか凄いな!」


「ありがとうございます」


 俺は今日何回目かわからないレベルアップ痛を堪えながら、アドニスさんに笑顔を返した。


 神のルーレット調査は一旦停止している。


 1番:金貨

 2番:銀貨

 3番:経験値倍増


 ここまで調べた所で、レッドドラゴン討伐に出発したのだ。

 今日は経験値倍増に三枚賭けして来た。


 経験値は戦闘に参加したパーティーに入るようになっている。

 俺がちょこっと矢を一本撃ったり、セシーリア姉さんが戦闘中に回復魔法を一回使っただけで、ルーレッツにも経験値が入る。


 それも経験値46656倍と言う、ぶっ壊れ倍率で一戦闘ごとに莫大な経験値が入っていると思われ……。

 今日一日で、もの凄い量の経験値を獲得していると思う。


 あまりにも頻繁にレベルアップするので、どれくらいレベルアップをしたのか、チェックしていない。

 大分、慣れたけれど、レベルアップ痛を堪えるので精一杯だ。


「ニャ! 隠し部屋があるニャ! 安全地帯かニャ!」


 カレンが少し先の通路を曲がった所で、隠し部屋を見つけた。

 アドニスさんとハンスが、地図を見て確認する。


「ハンス、どうだ? 地図で言うとここだよな?」


「そうですね。ここで間違いないです」


 アドニスさんは、ルピアのダンジョンを踏破しているそうだ。

 ただ、大分昔の事なので記憶があいまいらしい。


 意外な事に――と言っては失礼だが――ハンスはこのルピアのダンジョンを踏破していた。

 それも最近。


 そんな事情もあって、地図を見るのはアドニスさんとハンスの仕事になっている。


「よしっ! そこの隠し部屋で休もう! 今日は大分進んだからな。一日目は、ここまでだ」


 ルピアのダンジョンは全50階層。

 下の階層に行くほど、1フロアが広くなる構造で、40階層はボス部屋にたどり着くまで三日はかかるらしい。


 まだ、先は長い。

 アドニスさんの一声で、安全地帯の隠し部屋で野営する事になった。


 食事は基本的に各パーティー事で行う。

 ハンスが『紅の戦斧』にこき使われているのを横目でみなあら、俺たちは持参した弁当を食べた。


 ここルピアのダンジョンは石造りの遺跡風ダンジョンだ。

 お嬢様方の為に俺はレジャーシート代わりの布を広げ、アツアツのスープを配る。


 今日はオーク肉のミートソースパスタに、クルミパン。

 パスタは平べったいきし麺タイプ。

 俺は、かなり気に入っている。


 スープは鳥型魔物チキチキチキンのチーズコンソメ。

 デザートは、昨日市場で買った皮ごと食べられるブドウだ。


「ニャニャ! ごはんニャ! ごはんニャ!」


「おー! メシだな! 旨そうだぜ!」


 今日は一日ガッツリ歩いて、戦闘したのでみんなよく食べる。

 レイアから肉のリクエスが来たので、レッドバッファローって魔物のリブステーキを追加で出した。


「このパスタと言うのは、不思議な食べ物じゃのう」


「エルフの国では、見ませんでしたよね」


 姫様アリーとセシーリア姉さんのエルフコンビは、食事の度に珍しがっている。


「おやすみなんだよ……」


 ちびっ子魔法使いエマは、真っ先に食事を片付け毛布にくるまった。

 レベルアップ痛もあったし、今日は疲れたよな。

 俺も早めに休もう。


 ……と思ったら、ハンスが来た。


「ナオト! アドニスさんからチョロっと聞いたんだが、教団地獄の火ってヤツを教えてくれないか?」


「えっ? まあ、良いですけど……。何でまた?」


「いやな。俺はこのダンジョンの踏破者だからな。言うなれば、ここは俺のホーム! 俺のダンジョンって訳だ!」


「はあ」


「だからよ! その教団地獄の火ってのが、何かやっているならけしからんと思ってな!」


 嘘くさいなあ。

 そんな正義感の強いタイプじゃないだろう。


 けど、まあ、断ってこじれるのもかえって面倒だ。

 さっさと話して、お帰り頂こう。


「はあ……まあ、そう言う事でしたら……。えーと、俺たちがピョートルブルグって街のダンジョンに潜っていた時の話しなんですが――」


 俺は、ざっと教団地獄の火とやりあった経緯や彼らがダンジョンに魔力を流し込んでいた事を話した。

 冷たいのはウチのパーティーメンバーだ。

 みんなさっさと毛布にくるまって、話に参加しないように、ハンスと関わらないようにしている。


 俺がコイツの専属かよ……。


 一通り話し終わると、ハンスは何か考え込んでいた。


「そうか……。うーん、そうか……貴族がね……。うーん……」


「いや、でも、貴族が絡んでいたのは、ピョートルブルグのダンジョンの話しで、ここはどうだが、わかりませんよ」


「ん? んー、そうか。そうだな……。いや、わかった! じゃあな!」


 何だろう?

 ハンスは何か良からぬ事を考えていた気がするが……。


「あれは、何か良からぬ事を企んでおるのじゃ」


「間違いねえな。悪そうなツラしてたぜ!」


「ニャ! 臭ったニャ!」


「ずるそうな顔をしてたんだよ!」


「悪だくみだわあ。間違いなくぅ!」


 君たち起きていたのかよ……。


 確かに、ハンスは何か考えていたよな。

 あいつは、ロクな事をしそうもない。


 俺は嫌な予感を抱えながらも、出来る事は無く。

 仕方なく毛布にくるまった。

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