4-2 竜種の中でも最弱!
「いや、ちょっと待ってください! いきなりドラゴン退治は、ないでしょう!」
「あはは。びっくりした? けど、大丈夫よ。単独じゃなくて、合同のドラゴン退治だから。実はね――」
カテリーナさんが、事情を話し出した。
ヴェネタの街から馬車で2日行った所に、ルピアと言う街がある。
ルピアの街にはダンジョンがあり、ルピアのダンジョンと呼ばれている。
そのルピアのダンジョンで問題が起きたのだ。
40階層のボス部屋で、通常と違う魔物が出た。
俺は嫌な感じを受けながら、カテリーナさんに質問する。
「それでドラゴンが出たのですか?」
「そう。レッドドラゴンが出たの。それで複数パーティーによる合同討伐依頼が、ルピアの街と冒険者ギルド共同で出ているの。出発は三日後。どう? やる?」
「パーティーメンバーと相談させて下さい」
とりあえず返事を保留して、パーティーメンバーの顔を見る。
みんななんとも嫌そうな顔をしている。
そりゃそうだ。
通常と違うボス魔物が出て来ると言えば、教団地獄の火による陰謀を思い出す。
「ナオトよ。カテリーナ殿に例の件を話した方が良いのじゃ」
例の件……、教団地獄の火が魔力をダンジョンに注いでいた件だね。
「アリー、わかった。カテリーナさん。これはピョートルブルグのダンジョンで起こった事件なのですが、実は――」
俺はピョートルブルグのダンジョンで、教団地獄の火がやっていた事を話した。
カテリーナさんは頬に手をあてて、考えながら話を聞いていた。
「――と言う事がありました。恐らくレッドドラゴンが現れたのも教団地獄の火の仕業じゃないかと思います」
「あの……話してくれた事はわかったけれど……。教団地獄の火? こっちでは聞かないはね……えっと宗教団体?」
どうもカテリーナさんのリアクションがイマイチだな。
信じてないっぽい。
「秘密結社らしいです。魔王復活を望んでいます。生き証人もいますよ」
「生き証人? ああ……彼女が捕まっていたエルフなのね」
手を振るセシーリアさんを見て、カテリーナさんはやっと納得してくれたようだ。
「わかったわ。上にはナオト君の話しを伝えるわ。けど、レッドドラゴン討伐自体は、やると思うから考えておいてね」
「わかりました」
冒険者ギルドを出て、広場に面した店に入る。
店の名前は、『カフェ・フローリアン』。
広場に沢山のテーブルと椅子を出して営業している。
ランチを頼んだら、ミートラザニアが出て来た。
たっぷりのひき肉、コクのあるチーズ、大きめのパスタを濃厚なソースでからめてある。
「旨いな! コレ!」
「ニャ! これは良いニャ!」
「ちょっと量が足らねえけど。美味いよな!」
例によって例のごとく、アリーの執事とメイドが、かいがいしく世話をしている。
もう、この光景には慣れたな。
「さて、腹も膨れたし。レッドドラゴン討伐の件、どう思う?」
俺はパーティーメンバーに意見を募った。
ドラゴンと言うと最強の魔物と言うイメージがある。
あくまで現代日本人の俺が持つゲームやマンガなんかのイメージだから、間違っているかもしれないが……。
少なくとも弱いって事は、ないだろう。
まず、レイアが発言した。
「やろうぜ! ドラゴン上等! 強ええ魔物サイコーだぜ!」
ありがとうございました。
予想通りで、お腹一杯です。
「合同と言う事じゃからのう。他のパーティーと力を合わせるのなら、良いのではないかのう?」
アリーからも前向きな意見が出た。
ただ、もうちょっと冷静な戦力分析みたいなのが聞きたい。
「セシーリアさんは、どう思いますか? この中ではセシーリアさんが、唯一の中級職だし、冒険者としての経験も一番ありますよね? ウチの戦力的にドラゴン討伐ってどうなんでしょう?」
セシーリアさんは、顎に指をあてて――無駄に色っぽい仕草をして答えた。
「そうね……。色付きドラゴンは、竜種の中でも最弱……。それでもパーティーメンバーの平均レベル70以上が、冒険者ギルドでの推奨なのよね……」
おっ!
こう言う意見が聞きたかった!
参考になる!
「平均レベル70ですか。俺たちじゃ力不足ですね。その色付きドラゴンと言うのは?」
「竜種にも色々いるのよ。その中でも一番小型で弱いのが、色付きドラゴンなの。レッド、ブルー、グリーン、イエローと色々いるわね」
竜種の中でも最弱。
それでもレベル70からでしょ?
やっぱ強いじゃん!
ドラゴン!
「うーん、じゃあ、断りますか……」
「あらあ~。そんなもったいないわ! ドラゴン討伐の機会なんて、なかなかないわよう。今回は複数パーティーによる合同討伐でしょ? だったら私たちでも参加は、アリだと思うわ」
「えっ!?」
「ドラゴン討伐は良い経験になると思うわよ。いきなり単独でドラゴンと戦うよりも、強いパーティーと組んで経験を積んでおいた方が良いでしょ?」
「なるほど……一理ありますね」
確かにな。
今後、俺たちが単独でドラゴンと戦う機会が巡って来るかもしれない。
その時に、わちゃわちゃするよりも、今のうちに一回戦っておけって事だよな。
「もちろん、きちんと装備を揃えるのが大前提よ。死んだら意味ないから」
最後にセシーリアさんが真剣な顔で付け加えた。
装備か……。
俺たちは初心者用の装備だ。
レベル40になったのだから、中級者向けの装備に切り替えても良いだろう。
そもそもお金には苦労していない。
「よし! じゃあ、ドラゴン討伐に参加しよう!」
「「「「「おおー!」」」」」
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